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【この映画、劇薬につきご注意を】映画『HOW TO BLOW UP』感想

面白い!

環境活動家によるテロ行為を題材にした話だけど社会色とエンタメのバランスが絶妙。

本作を配給したNEONは『パラサイト 半地下の家族』、『落下の解剖学』など社会派な題材をエンタメと融合させる映画を手掛けてきたが、本作もそうした作品に通ずるものを感じた。

硬質的な雰囲気かと思いきや撮り方はスタイリッシュ
ひとつひとつの構図がキマってるし暗闇から浮かぶパトカーとか思わず目を引くカットが多い。

こうした画もとても良い。

映画はテキサスの石油精製工場に環境活動家たちが集結する場面から始まる。

彼らの目的はパイプラインの爆破計画。
計画が着々と進んでいく中で各メンバーの回想が挟まれ「なぜ彼らがこんな行動を取るのか?」について描かれる。

この脚本も実に巧み。
各メンバーの回想への引きが上手いし、彼らの過去が分かると共に全ての全貌が明らかになっていくラストは痛快。

集まったメンバーはさまざまだ。
地球を守らなければいけないというショーンのような使命感を持っている者もいれば、ローガンたちのようにスリルを楽しんでいる者たちもいる。
そしてドウェインやテオのように環境破壊によって直接的に人生を狂わされた者たちもいる。

彼らがいわゆるハリウッドのスター俳優じゃないのも良かった。もしスター俳優だと一気にエンタメ感が増してしまうから…

正直、エコテロリストという存在は好きじゃない。

最近だと美術館で有名絵画を汚すなどのニュースを見かけるが、その度に辟易とした気持ちと怒りを覚えていた。
この世に不満があれど正式な手続きを踏むべきだと思う。

だけど劇中の彼らを観て思う。
もし自分がドウェインやテオだったら?
明確な被害を受けているのに相手が巨大な権力ならあきらめるしかないのか?この映画は自分の中のモラルを揺さぶってくる。

きっとドウェインやテオにとっては、地球を救うという気持ち以上に自身の憤りのない感情を晴らすためにもこの爆破計画が必要だったんじゃないだろうか。

本作をFBIが警告したというのも納得。
彼らの事情に共感してしまうし、テロ行為をヒロイックに描いているので感化されてしまうような危うさがある。
警告したというのは、それだけ影響力があるということの裏返しでもある。

大変面白かった。
ダニエル・ゴールドハーバー監督、全く知らなかったけどこれから要注目の監督だと思う。『HOW TO BLOW UP』、気になった方は是非。


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