テレコーラス(オンライン合唱)に取り組むマインドセットのすすめ

コロナ禍で勢いを増した合唱のオンライン活動と、感染予防を講じたオフライン活動。合唱活動は現状二極化の傾向がある。オンライン合唱とオフライン合唱の違いを改めて考え、特に、オンライン合唱についての新しいマインドセットについて言及する。

まずは言葉の定義。

オフライン合唱

これまで人類が何千年と取り組んできた合唱の形態。同じ場所に集まって、同じ時間に練習(指導を受ける+議論を交わす)し、完成物を仕上げていく。

オンライン合唱

オンライン上で実施する合唱。同時刻での演奏は当面技術的な課題も多いので、ここでは多重録音によるポストプロダクション型の合唱をさしてみる。ある指揮動画、クリック音、ガイドボーカルなどに合わせて各自の時間・場所で録音を実施、DAWに長けた人がミックス処理をして完成物を仕上げていく。

それでは、いくつかの視点での違いを考えてみよう。

練習の取り組み方の違い

オフライン合唱では、事前の譜読み等をどれくらい個人がやってくるかは団体により様々であるが、アマチュア団体はアンサンブルの場で個人の練習サポートに相当する部分を多く担っているだろう。その内容は、音の確認や発語の確認などの基本一義的に解釈できそうなものもあれば、フレージングや音色などの解釈が分かれるものもあり、アンサンブルにて相互に聞き合ったり、指導者による指導を受けたりして練習に取り組んでいる。よりプロフェッショナルな団体になればそれらも最小限に抑えられるが、それでも音楽的にどう形作るかについては、アンサンブルの場で行われることが多いだろう。

オンライン合唱では同時刻性が担保されないため、アンサンブルの場でのこういった練習が困難である。指導者のフィードバックを伴って複数回の録音を実施する形式にしてもそれには多大な時間がかかるし、オフライン練習特有のその場で聞き合って気付くスタイルの練習は完全に望めない。その代わり個人でのリテイクが可能で、その演奏の再現性の度合いについては言及されない。

完成物のイメージ共有の違い

オフライン合唱ではその練習の途上において、完成物のイメージを全員で共有することができる。また団体によってはその完成物のイメージを議論して自分の音楽性を完成物に注ぎ込むことができるだろう。

かたやオンライン合唱においては完成物イメージの共有は原則難しい。オンラインDAW等によってある程度、途中経過をお互いに確認しあいながら録音を進めることも考えられるが、それには録音自体がかなりの精度を伴っていないと実現が難しい。

最寄駅集合か現地集合か

「練習の取り組み方の違い」の「完成物のイメージ共有の違い」の2つの違いを例を用いて解釈してみたい。

オフライン合唱はさながら、地図(楽譜)を持って最寄駅に集合するようなものである。最寄駅の設定は団体により違う。大阪集合の団体もあれば、天満集合の団体もあれば、日本集合の団体もある。集合してからはみんなで手元の地図を元に「あの辺りっぽいな」と歩みを進める。道から外れた奴がいたら「そっちじゃないぞ」と声をかけて進む。目的地に近づいてくると、「近づいてきたな」と皆で意識を共有できる。

オンライン合唱は対して、現地集合を呼びかけるようなものである。その途上で道に迷ってもサポートしてくれる人がいないし、目的地に着いたと思っても他の人と違う場所にいたりする。

テレコーラスに取り組むマインドセット

上記のことから、以下の2つのマインドセットを設定してみたい。

1. 自分で歩く力をつける
オフライン合唱に比べて、オンライン合唱は自分で歩く力を求められる。道に迷った場合も自分で正しい道を見出さなければならない。

2. 目的地を明確にする
地図だけでは目的地になり得ない。オンライン合唱に取り組む団体はその地図を元にどこへ向かうのかを今まで以上に明確に示さなければいけない。

まとめ

オフラインとオンライン合唱の違いから、オンライン合唱へ取り組むマインドセットについて言及してみた。「自分で歩く力をつける」「目的地を明確にする」というマインドセットを持つことで、少しでもこのコロナ禍のオンライン合唱が円滑になればと思う。




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