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タイ式コロナ対応の「抜け道」と「裏道」


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(リード)
コロナ禍の世界一周。旅はタイからはじまった。タイは今年の3月にも訪ねていた。厳密にいうと、昨年の3月にも滞在していた。新型コロナウイルスの感染がはじまったばかりで、入国規制や隔離といった話が出はじめている頃だった。いま振り返れば、そのときがいちばん緊張していたかもしれない。新型コロナウイルスの実態もよくわからず、タイ人たちはただびくびくしていた。それは日本人と同じだった。
その後、早めのロックダウンなどが功を奏し、タイは感染拡大を抑えていたが、新型コロナウイルスは一筋縄ではいかない。今年8月初旬には、感染が急拡大することになる。新規感染者は1日に2万人を超えた。その嵐もようやく収まった。
そこでタイランドパスのシステムを使い、観光客を受けいれることになる。もちろん不安を抱くタイ人も多い。感染予防と経済再開のせめぎあいはどの国でも起きている。タイの政権が軍事政権の流れをくんでいることが、今回の緩和につながったと見る向きもある。
バンコクには4日間滞在した。そこで目にしたコロナ対策には「タイ式」も入り込んでいた。そんな空気も味わえるようになった。ようやく落ち着いてきたということだろうか。

旅の期間:11月19日~11月22日
※価格等はすべて取材時のものです。

カオサンはライブ配信「ツイキャス」で1時間半にわたって中継されました。
「ツイキャス」のプレミアアーカイブチケットを購入すると、配信されたライブ映像を全編視聴できます。購入から7日間は何度でも視聴可能。販売ページはこちらから。 https://twitcasting.tv/c:shimokawayuji/shopcart/114953



コロナ禍を経験してバイクタクシー代が値あげ?


(旅のデータ)
バンコク市内の公共の交通機関は問題なく運行されている。BTSとMRT。ともに路線がのび、大都市の交通機関の顔になってきた。感染が拡大したときは利用客は減ったというが、いまはコロナ禍前に戻っていると思っていい。同時に渋滞も戻ってきた。一時は気持ちが悪いほど道がすいていたが、朝夕はぎっしり車が連なる。コロナ禍前に戻りつつある。バイクタクシーも健在だが、コロナ禍を通過して全体的に少し値あげされた感がある。一時は利用客が減っての値あげだったったが、そのままにしてしまったらしい。なんだかセコい話だ。場所にもよるが、5バーツから10バーツは高くなったところもある。

いろんなところの検温機でピッ。地下鉄の通勤時間は無用検温機に


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どこでもピッ。これがタイの新型コロナ対策に映る。ホテルやショッピングモールの入口はもちろん、食堂、コンビニまで検温機が置かれている。その横には消毒用アルコール。バンコクではじめてこの種の検温機に遭遇したとき、センサー部分に額をあてようとして、警備員さんから。「掌をあてればいい」と笑われてしまった。

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MRTと呼ばれる地下鉄の入口にも検温機。かつて地下鉄には金属を察知するセキュリティーチェックがあった。チェックが廃止され、ゲートは無用門になっていたが、その正面に検温機が鎮座。コロナの時代である。はじめのうちは珍しがって皆、掌をかざしていたというが、最近は⋯⋯。通勤時間帯は無用検温機になっていた。


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高架電車のBTSやMRTの車内では、ほとんどの人がマスクをしている。いや、100%か。そのあたりは欧米やアフリカとは違うアジア人気質? 8月に感染が拡大し、病床も逼迫した。その経験がマスク着用率をあげたようだ。しかしバンコクは日本よりはるかに暑い。「車内でマスクをかける人が多いのは、冷房が効いているから」とあるタイ人。

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夜、カオサンのメイン通りに入るには、身分証明書とワクチン接種証明が必要だった。それは外国人も同じ。かつての警察署の前がチェックポイント。僕は裏通りで動画を撮り、路地を先に進んでいくと、カオサン通りに出てしまった。「ん?」。チェックなし。そうだよな。カオサン通りには横から入る何本もの路地がある。なんというまぬけ。いや、このチェックってパフォーマンス

むさいおじさんも虹模様のハート形シールを胸に貼る


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僕がよくいく食堂。今回、入ってみると、中央にあったテーブルは壁際に寄せられている。壁に向かって食べることになる。ほう、ここもコロナ対策⋯⋯と関心していると、店のおばさんが、「3人? じゃあ、テーブルをまんなかに動かしましょう。分けあって食べないとおいしくないでしょ」。頭ではわかっていても、やはりタイ人です。


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大きなショッピングモールやデパートはシール作戦。入口の検温機で体温を測り、手をアルコール消毒をすると、スタッフがぬっとシールの貼られた台紙を差し出す。それを1枚とって、シャツの胸に。これがあれば館内を堂々と歩くことができるということ。でも、どうして虹模様のハートなのだろう。僕も胸に貼ったが、ちょっと恥ずかしかった。


カオサンは「外こもり組」の聖地だった


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外国人向けバックパッカー街、カオサン。新型コロナウイルスの感染拡大の予測もできず、メイン通りのリニューアルをはじめてしまった。完成したときには、ウイルスが蔓延。外国人はタイに入国できなくなっていた。カオサンの不運だった。タイ人の若者が週末には集まり、少しずつ人も戻ってきたが、土曜日の夕方でもこんなこのです。

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1本裏通りに入ると、もっと不運なカオサン。シャッターを降ろした店が路地に沿って続く。屋外カフェやホテルも閉鎖され、入口にはチェーンが渡されていた。音がない世界というより、ちょっと怖くなる空間。カオサンが世界一のバックパッカー街になったのは30年ほど前。誕生して以来の試練のなかで静かに沈んでいる。


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マクドナルドもカオサンでは休業⋯⋯。日本ではマクドナルドが店を閉めた話は聞かない。バンコクでも街のマクドナルドは健在。というより、宅配需要に支えられて売りあげが増えた店もあるとか。しかしカオサンは別世界。外国人のバックパッカーが上客だった店舗のドアは閉められてしまっていた。


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かつての日本人スポット。この空き地の周りに数軒のゲストハウスがあり、そこを日本人が埋めていた。フクちゃんが働く旅行会社もここにあった。彼からさまざまな旅の情報が入る。夕方からここに集まり、ときに誰かがつくったカレーが振る舞われることもあった。「外こもり組」の聖地がここだった。僕は毎日、ここに通った。彼らとビールを飲みながら、寛容さを失った日本社会を考えていた。

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タイランドパス政策がはじまっても、一気に外国人観光客が増えるわけではない。しかしバンコクの街は、しだいに活気を戻しつつあった。タイの景気を測る材料は車の数とよくいわれる。つまり渋滞。タイ人の渋滞うんざり顔の下には、「景気が戻ってきた」というしたたかな笑顔が潜んでいる。で、これはソイ・アソークの夕方6時。バンコク有数の渋滞交差点はこんな混みぐあい。どう判断します?


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繁華街の飲食店はタイランドパスを裏解釈。外国人の入国規制は緩和されたが、バンコクは非常事態宣言下。アルコール類はオーダーが夜9時まで。飲めるのは10時までと決められていた。しかしこの店は、大ぶりの紙コップを用意し、10時以降は、そこにビールを注いで営業。もちろん警察との関係も織り込みずみ⋯⋯のはず。


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日本の技能研修性もそうだが、海外からの出稼ぎ組も新型コロナウイルスの影響を受けた。バンコクの出稼ぎ組といえばミャンマー人。多くが建設現場で働いている。景気の後退が彼らの仕事ににも影響を与えているが、ミャンマーの軍によるクーデターも拍車をかける。噂では帰国した出稼ぎ組は、空港で法外な金銭をとられるらしい。ひとり40万円ほどという話も。これは軍の収入になる。帰るに帰れず、彼らはバンコクで働いている?


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コロナ禍でも変わらないもの⋯⋯筆頭は料理? 中華街を歩き、メガプラザというオタクビルのクーポン食堂でカーオマンガイのミックス。60バーツ、約210円。昔は蒸した鶏肉を載せるだけだったが、世界的な鶏唐揚げ人気に、タイの若者も反応。伝統を右側に残し、左側は鶏唐揚げという新タイ料理が登場。いまではすっかり定着してしまった。

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タイに着いたらまず食べるもの? トムヤムクン? ガイヤーン? すいません。僕はヤムママー。ママーというインスタント麺にシーフードや野菜を入れて和えた料理(右側)。タイ料理好きから見たら、どっかへ行ってほしいようなジャンク料理で……すいません。しかしこれが好物。人の視線を気にせずに注文する年齢なので、堂々と「ヤムママー」。

【次号予告】次回は世界一周の旅がいよいよ本格スタート。タイからギリシャへ。(12月24日公開予定)


新しい構造をめざしています。