賀茂川渡ったその先で
written by Hiroshi Kawajiri(下鴨ロンド・シェアメイト)
京都地下鉄・鞍馬口駅を出て東に向かってしばらく歩くと賀茂川に出会う。この数ヶ月何度もこの川を渡っているが、ここからの風景がお気に入りで、毎回立ち止まって眺めてしまう。
やがて道は下鴨神社に突き当たる。
下鴨ロンドの活動の場となる石割邸は、この下鴨神社の徒歩圏内、かつては神社の境内の一部だったであろうエリアにあり、今は住宅地となったその中に埋もれるようにして佇んでいる。
初めて石割邸に足を踏み入れたのは、2023年春分の日だった。
この10年間は空き家で荒れ放題だったという建物は、前年秋からボランティアによる片付けや掃除が行われており、また専門業者による工事も始まり、トイレや電気も何とか使うことができて、日中を過ごすには問題ない環境となっていた。
ところで私が下鴨ロンドに興味を持ったのは、主宰する建築史家 tomoki honmaさんのSNSでの告知がキッカケだった。
honmaさんとは、昨年偶々SNSを通して知り合った。以降何度かお会いする機会もあったが、普段の交流はSNSの投稿を拝見する程度である。そんなある日、下鴨ロンドへの参加を募る投稿が目に留まり、迷うことなく参加したい旨を伝えたことが始まりだった。
honmaさんは失われていく古い建物を何らかの形で保存・再生する活動もされており、このプロジェクトもそうした活動の一つである。
さて、下鴨ロンドに参加したのはよいものの、私自身は明確な活用方法を決めていなかった。京都観光の拠点にでもしようか、あるいはブログ(note)を書くセカンドルームとして使おうか…。
だがそれは後でゆっくり考えれば良い。それよりこうした古い建物の再生プロジェクトに何らかの形で関わりたいという思いの方が強かった。
実際のところ現在までは、修復・改修作業のボランティアに参加させてもらうことが多い。"日中を過ごすには問題ない環境"といっても、あちこちまだ埃をかぶったままだし、設備や内装がボロボロの箇所もあり、それらを修繕する必要がある。
具体的には傷んだ内装材を剥がしたり、
掃除したり、
床板を張ったりという作業だ。
しかしこれがメチャ楽しい。何故ならこの家は自分たちが使うのだから。
予算も限られているので、専門的な工事はプロにお任せするとしても、自分たちで出来ることは自分たちで作業するしかない。ボランティアは必然的に休日作業となり、また参加者は必ずしも建築や工事のプロではないので、お世辞にも手際が良いとは言えない。となると完成まではまだまだ長い時間がかかる。先は見えているようで見えない。
でもそんな状況も含めて、自分にはワクワクしかないのだ!
ボランティアには建築を学ぶ学生のみならず、シェアメイトを含む社会人や近代建築に興味を持つ人たちも参加しており、その日お互い初めて会った人同士が共同で作業することによって、彼らとユルい関係を築けることも興味深い。
そのコツコツとした作業のおかげか、最近は石割邸に来るたびに、少しずつ着実に家が息を吹き返しつつあることを感じている。
次に訪れる時、石割邸はどんな表情を見せてくれるのだろう?
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