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水が怒るんと違いますかのし

NHKラジオ番組「朗読」から。
この番組は、明治以降の日本文学、西洋古典の翻訳を中心に、
著名俳優やアナウンサーの朗読で名作の息づかいを感じられる。
名作をたった一人で朗読するだけの番組だけれど、楽しい。
今回は「有吉佐和子作『紀ノ川』」の一節、
作品の舞台が、紀州和歌山であり「小さな川の流れを呑みこんで
しだいに大きくなっていく紀ノ川のように、
男のいのちを吸収しながらたくましく生きる女たち」の物語だが、
明治・大正・昭和の時代背景をよく表している。
明治時代「紀の川」は、頻繁に氾濫を繰り返して、
下流域の住民を苦しめたようだ。
夫のけんさくが「どうして、氾濫が多いのかな」と首を傾げると、
妻のはながサラッと、こう答える。
「豊かな紀の川を豊かに使わんので、水が怒るんと違いますかのし」
歩きながら聴いていた私は、立ち止まってメモをした。
「川」とか「水」に関する表現に、敏感に反応してしまう。(汗)
「〜のし」というのは、紀州和歌山の方言なのか、
何度も耳にしている間に、違和感なく聞き流せるようになった。
さて、本題のフレーズ。
「豊かな川の氾濫は、豊かな生活になるよう利用されないから、
怒って氾濫する」という視点が気に入った。
せっかく「日本一の湧水量を誇る、自然豊かな柿田川」も、
「地元に住んでいる人々の生活が豊かになるように使わない」と
怒って氾濫するかもなぁ、と思った。
柿田川は、全て湧水だから氾濫することはないんだけど。(笑)

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