死神のこども 6

水甕の中には、砂の山になったジウがいる。しばらく甕を見つめていたヤタが、顔を上げた。「どうするんだ、これ。」

水甕を見つめていたら、かえしはぐれた私にかわってヒカリが応えた。「揺籃部にいくように言われた。魂がどうなっているのかは、現場の担当なら分かるかもしれないって。」ヤタはさらに問う。「そういや、あんたは天使だよな、ただの付き添い?それとも、もしかしてヨルと組んだ仕事に関係している?」ようやく砂の山から目を外すことができた私はぼんやりと2人の会話を聞いていた。「ヨルは、私と一緒に閉じ込めた奴らに呪われたんじゃないかって言うけど。おかしくないか?わざわざ死神と天使2人にがっつり封印した奴がどうやってやるの、こんなこと」「まあ、そうだよなあ」ヤタはこめかみの辺りを人差し指で押さえて考え込んでしまった。「とにかく、揺籃部にいくわ、それからまた考える。ヤタはまだこの辺にいるの」「いや、そろそろ引き上げる、お迎えがあるからね、何かわかったら今度教えてくれよヒカリ。おい、ヨル?大丈夫か?」

曖昧に微笑んで返すと、あんまり気を落とすなよ、などといいながらグループは去っていった。休憩が終わったらしい。

揺籃部は、ここから目と鼻の先にあった。あまりお役所然としていない。工場のような雰囲気で、工具らしきものが窓越しに見える。「失礼します、創世課からこちらに来るよう言われたものですが。」

入り口で声をかけると、作業中と思しき青年風の天使が顔を上げた。「ああ、連絡はきているよ。こどもが砂に崩れたって。そっち行って見るよ」散らばった工具を跨ぎながら大股でこちらに近づき、水甕を覗く。そして倉庫だろうか、隣の部屋から1枚の透明な、円形のものを持ってきた。金色の枠の中に、透明なガラスのようなものがはまっている。ガラス越しに砂山を見ているようだ。

「いないね」ぽつりと天使は言った。そんな。甕を抱えたまま、座り込むしかなかった。天使が私に問う。「その崩れた子、会ったんだよね?」「はい」「話はした?」「お互い一言ずつ。あの子が私のところに近寄ろうとして、崩れたので」

「じゃあ、近くにいるか」天使は、何を思ったかガラスで周囲を眺めはじめた。「うしろ、あなた、そう死神のあなたのうしろ」「はい?」「魂がついてきている」

にっこりと金の枠取りのあるガラスを渡された。ガラスを通して自分後ろをみる。ジウ!左後方、ぼやけてはいるといえ、あのとき会ったジウだ、ジウの魂は私についてきていたのだ。(やっときづいたのか)とでもいいたげな、でも嬉しそうなジウの魂が見えた。


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