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冬へ向かう道の強烈な紅葉

静脈血が固まった様な真っ赤な葉が一枚、道路に落ちていた。
赤黒く萎びたそれが、ひょい、と突然視界に入ってきたものだから、ぼんやり下を向いて歩いていた僕は、ぎょっとした。

顔を上げると、すぐ近くに、真っ赤な葉を沢山ぶら下げた真っ赤な街路樹が道に生えていた。
その幹の、丁度、人間の目の高さの辺りに古びた木製のネームプレートが引っ掛かっていたので、近づいて見てみた。
そこには、

「ハナミズキ」

という文字が書いてあった。黒い塗料でかかれたであろうそれは、風雨に曝されて半分ほど消えかかっていた。

ハナミズキの紅葉というのはこんな不気味なほどに赤黒くなるものなんだなあ、などとそこで初めて学習した。

この強烈な赤色に、どうして今まで惹かれなかったのだろう、と少し後悔した。

またその後、その街路樹とは離れたところにある、とあるお寺の前を通った時、僕は再び、ぎょっとした。
また同じ赤色の葉を、そのお寺の敷地内に見つけたからである。

そしてその光景は僕の頭の中で、街路樹のネームプレートとすぐさま結びついた。

なるほど、ここにもハナミズキがいたのか、と一人で納得しながら、僕はお寺の前をゆっくりと通り過ぎた。

赤の映える冬が、すぐ近くまで来ている。

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