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“お洒落着洗い”のあれこれ

先日、我が家の洗濯機でお洒落着洗いをした。
つまり、いつもとは異なるボタン操作をさせられ、いつもとは違う洗剤を用意させられた、ということである。それほど難しくはないが、何となく面倒である。そして如何せん、お洒落着の洗濯物というのは、いつも、それらの手順をぼんやり忘れた頃にやって来る。

洗濯機の電源を入れ、洗濯ネットに入れた服を中に放り込む。お洒落着用の洗濯コースに照準を合わせる。そして水量をピッピッと選択し、洗剤と柔軟剤を各々の入り口に流し込む。大丈夫、全て合っているか目で確認した。よし。そしてスタートボタンを押した。と思いきや、突然電源が切れた。

嘘だと誰か言ってくれ。上手く事が運んだとゴール近くで慢心していた僕を叱ってくれ。なんと、手元を良く見ずに押したボタンは、電源ボタンだったようだ。ああ、また一からやり直しだ。心なしか、洗濯機の中の服もがっかりして草臥れているようだ。

洗濯機の電源を再び入れる。お洒落着用の洗濯コースに照準を合わせる。そして水量をピッピッと選択する。服も、洗剤も、柔軟剤も、全て入っている。大丈夫、合っているか今度こそ目で確認した。よし。そしてスタートボタンをしっかりと見据えて、押した。

洗濯機が、ようやく動き始めたので、僕はふうと息をつきながらゆっくりと蓋を閉めた。成功した。今日の成功者は僕だ。いやあ、今日も良い仕事をした。よしよし、と思って踵を返した瞬間、あることに気づいた。

洗剤を間違えた。お洒落着用洗剤を傍らに用意しておきながら、つい、いつもの洗剤に手を伸ばし、それを入れてしまっていたのだ。手付かずのお洒落着用洗剤のボトルが、僕をじっと見つめているのを感じた。

しかしもう、やり直す訳にもいかない。使わなくてごめん、と心の内で呟いた。
そして、何も知らないことにした。
そんなにお高い服でもない、大丈夫、何とかなる、と自分に言い聞かせながら、僕は、出番の無かったお洒落着用洗剤を、そそくさと片づけた。

これだから、お洒落着洗いはちょっと面倒なのだ。

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