後づけの蔓延(清水勝彦研究室ブログ)
今から50年以上も前、行動経済学のメッカであるカーネギーメロン大学で組織の意思決定に関してgarbage can model (ゴミ箱モデル)が提唱された。超単純に言うと、問題があって解決策を考えるのが普通(合理的)だが、現実的には先に解決策があって問題を見つけることも多いというのである。
え、と思うかもしれないが、そうした経験をしている人は多いと思う。先に答えが決まっている会議、社長がしたいからそのための理由を探す、などなど。
新聞などを見ていても未だに同じようなことが起きている。2月27日付の日経夕刊には「多様性が生むパワー」と題して、両親がガーナ出身の馬瓜エブリン選手と女子バスケチームを取り上げていた。人種という面ではとても分かりやすい「多様性」だが、単純に個性のぶつかり合いが相乗効果を生み出したと考えたほうがよくないだろうか?金槌には何でも釘に見えるというが、はやり言葉による後付けは、本質を見誤る。「○○の成功はxx理論で説明できる」というのもそうだろう。
以前著した『失敗から学んだつもりの経営』のメッセージは、「世の中に蔓延する説明を自分の失敗に当てはめて満足すると間違える」。実際、トップクラスの研究でも、よく言われる成功・失敗要因で説明できるのは全体の3割程度であり、7割は企業個別の要因である。でも、だれだれ先生が言っていた、どこどこに書いてあるといったほうが社内の通りがよかったりする。
「 Thinking is very hard work. And management fashions are a wonderful substitute for thinking」とドラッカー氏が指摘したのももう15年以上前のこと。本質に迫ることは多くの近道の誘惑に耐えることだ。