日本企業は短期志向か?(前)(清水勝彦研究室ブログ)

「日本企業はなぜ短期志向なんでしょう?」そう複数の機会で聞かれて驚いた。ざっくり30年前、私のMBA時代は「アメリカ企業は短期重視、日本企業は長期志向」というのが世界中の定説だったからである。実際、今でもアメリカでは四半期のアナリストの1株当たり利益予想を1セント上回るのがいい企業と本音ではされているし、災害次第で毎年損益に波があるはずの損害保険会社までが達成していたことは有名だ。

こうした質問が出るのはいくつかの理由があるだろう。1つはアルファベット、アマゾン、あるいはNetflixといった企業の投資姿勢に比べて、日本企業は全くリスクをとっていないという報道。そして、何かと目先の選挙を気にしてばらまく政府(個人的には、マイナカードにしても処理水にしても頑張っているとは思う)。起業が少ない、ユニコーンがいないこともある。

実は日本企業が本当に短期志向であればもっと早く復活していたのではないか。「長期志向」が先送りの言い訳として使われてきたからである。その一方で、昔から社長の任期が2期6年だから「逃げ切る」などと言われ、オーナー社長の活躍(時には横暴)が目立つ。

J.C.アベグレンの『Kaisha』が1985年、伊丹先生の『人本主義経営』が書かれたのは1987年。そしていま再び人的資本経営がもてはやされる(「私たちがいた欧米企業は人的資本経営はあたりまえでした」なんてどや顔で講演する人がいてまた驚いた)。バブル後の30年私たちは何をしていたのだろう?、実は何も学んでいない?それとも自信を失っているだけ?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?