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駆落ち、嫉妬、殺人―「お艶殺し」(谷崎潤一郎)

最近、谷崎潤一郎の全集を読み始めました。
一、二巻も読みましたが、今日は「お艶殺し」に触れます。

あらすじ
主人公の新助は真面目で男前の奉公人。奉公先の主人の娘と恋仲になるが、相手が主人の娘では双方の親から結婚の許可が下りないだろうと駆落ちをする。駆け込み先の船宿の清次が主人と新助父を説得するから逗まっておけと言われるが。

感想
男が悪女に翻弄される筆者のいつもパターンなんだろうなと思いつつ読んでみましたが、突然に命を狙われる新助、姿を消したお艶、と物語が進むにつれていつもと違うと分かり楽しく読めました。

お艶に惚れた清次が双方の親に話をつけるなんてホラを吹いて、新助を始末し、お艶を手篭めにしようと画策するも、新助は刺客を返り討ちにし、お艶は肯かない。結局、清次はお艶を徳兵衛に預け、お艶は町一番の藝者として華々しく活躍していました。
新助はお艶を探す過程で清次の妻を殺し、金蔵の助力を得てお艶と再会します。この時に、お艶と話をしたら翌日には自首することを助力の条件にしましたが、恋人との逢瀬にてお艶への情や世への未練、酒宴でずるずると自主を先延ばしにしていきます。
最後にはお艶が新助とは別の恋人を作り、そのことを知った新助が新しい恋人の名を叫ぶお艶を殺して幕引きです。

数多の男から金を搾り取る妖艶な女性に変貌したお艶、新助の義理を通そうとする理性とそれに反してお艶とともに残ることを望む情念の葛藤、刺客・妻・徳兵衛を殺しそれまで堅気の人間だった新助の堕落と、いつものパターンである女性が変貌するにつれ身を落としていく男の様を味わえました。結末の新助がお艶を殺す際にお艶の口にする名前が目前にいても捨てた男の新助ではなく、あくまで新しい恋人なのもお艶の中では新助にもう用はないとばかりで好みでした。

おまけ
全集を読み始めたきっかけ
読書猿さんのこの記事です。
https://readingmonkey.blog.fc2.com/blog-entry-330.html


#読書 #谷崎潤一郎 #全集


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