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夕食時の食卓の光景 (小説・第1回)

 こんにちは、Shimizu_Tです。

 今日は、いつもと趣を変えて、たまには「小説」を書いてみました。
 小説といっても1,400文字ほどなので、長くありません。
 断っておきますが、「小説」なので、あくまで「フィクション」です。

 では、よろしければ、最後までお付き合い下さい。 


「ただいま〜」

「・・・おかえり・・・」
かすかに返事が聞こえたが、それ以外にもなにか喋っているのか?食卓の近くにあるテレビの大きな音が、玄関まで響いてくるので、はっきり聞こえない。

男は、勤めから自宅へ帰ったところ。
寝室でスーツを脱ぎ、部屋着へ着替える。
そのあと、洗面所で両手をしっかり洗い、うがいをする。

食卓を覗くと、女はテレビを見ていて、テーブルの上には夕食の準備が出来ていない。ちなみに、男の帰宅が遅いため、女自身の夕食は、とっくに1人で済ませている。

「ゴメン、ゴメン。クイズ見てて、答えを見てからオカズ出そうとしたら、『正解は、CMのあとでっ!』なんて言うもんだから、ちょっと待ってたのよ。そしたら、CM終わってもすぐに答えを言わないのよ。も〜、やんなっちゃう。」

やんなっちゃう。のは男の方だ。

仕方がないので、冷蔵庫にあるオカズを自分で出して食卓に並べ、さて、白飯を茶碗へよそおう(盛ろう)とすると・・・

「なんで、炊飯器のご飯が炊き上がったら、ほぐさないの?そのままにしておくと固まっちゃうでしょ。いつも言ってるのに。」

「ゴメン、ゴメン。つい忘れちゃうのよね。だって、白飯食べるの、あなただけなんだもん。私も食べるなら、ほぐすんだけどね〜。」

理由になってないと思う。
仕方ないので、自分でほぐしてしばらく待つ。

その間に、夕食のオカズを見てみると・・・焼き鮭、煮豆(パック)、大根・しいたけの煮物、イカのから揚げ(惣菜)、以上。

ここで男は、嫌な予感がした。
「煮豆か・・・」

なぜか?

パックに入っているメーカー品の煮豆だったからである。白花豆といって、枝豆より二回りくらい大きな「いんげん豆」を甘く煮たものなのだが、別に好き嫌いがあるというわけではない。

男は、流し台の三角コーナーに捨てられているパックの袋を拾った。
「やっぱりそうか。」
男の予感は当たった。

賞味期限が切れているのである。たったの5日間ではあるが。

もちろん、男は知っている。賞味期限は「美味しく食べられる期限」のことであって、虚弱体質の自分が少しくらい期限が切れた食品を食べても、おそらく体調には問題ないことを。

しかし、賞味期限が切れた食べ物は、風味が落ちるなどして、美味しくない。だからといって、捨てろとは言わないが、期限が切れる前に食卓へ出そうとしないのはなぜなんだ。

「え〜、つい忘れちゃうのよ。新しいオカズを買ってきて冷蔵庫へ入れておくと、前に買ったヤツは奥の方へ隠れちゃって、見えなくなっちゃうんだよね。」

聞けばこう答えるのが分かりきっているので、男はあえて聞かない。

やや落ち込んだ気分になりつつ、空腹には勝てない男は、夕食を食べ始めるのだった。

女は、とっくに食卓横のリビングで寝転がり、スマホの画面を指でクルクル回している。ゲームでもしているのだろう。
ときどき「チクショー」「くそっ」と、悪態をついている。

男は、さらに気分が落ち込んでいく。

これが、夕食時の食卓の光景であった。

(繰り返しますが、あくまで、「フィクション」ですよ。実在するS何とかさんとかとは、一切関係ありません。)


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
いつものように、締めくくりはこの言葉で。

 「毎日が、心穏やかに過ぎますように」

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