いろいろな事がぐるぐると

「そろそろ退院を目処に」と言われていた肺がん治療中の父の様子が変わったのは先々週。見舞いに行くと病室入り口のネームプレートに名前がなく、オロオロとする僕に病院のスタッフさんが「HCUに移りましたよ」と慌ただしく伝えてきた。

肺炎の発症。嘔吐物が気管に入ったことが原因ではないかとのこと。たぶんむせることが出来ず肺に至ってしまったのではと推測。嘔吐についても見回りの看護師によって気づいてもらった。

肺の機能の3/4が機能していないことを伝えられ、「大変頑張られました」と話を聞いたのがその時。なんとなく長くはなさそうな気がして、姉に父の兄弟への連絡を頼んだ。

その後肺炎は回復していき、ゼリーを食べるなども出来るようになった。それを聞きつつ僕は1週間の海外出張へ。

昨日帰国して今日病院へ行くと病室が隔離されていた。感染性のウィルスが排泄物から発見されたとのこと。聞けば特に悪さをするものではないけれど、薬が効きにくいとのことで他の患者さんから隔離したとのこと。その点についてはそれほど心配はなかった。

ただ父は僕の来院に気づいて反応はするものの受け答えが悪い。会話が出来ない様で簡単なうめき声の様な声で応える。ただ反応するのも厳しそうなので、一方的に近況報告をしていると眠ってしまう。仕方ないので淡々と病院の事務的な処理を行う。

一通り終えて、そろそろ帰えろうかなって時に姉が来た。そこでもう一度父にも聞こえる様な声で姉と近況報告を行った。海外出張のこと、最近の仕事のこと、夏の予定のこと。
眠る父の傍らで二人で笑って、ワイワイと一通り話をして、「じゃ、帰るね」って言ったところで主治医が通りかかった。

「少しお時間宜しいですか?」と。

先生の話はこうだった。飲み込む力が弱まっている。というより飲み込むことが出来ない状態だというのがわかった。可能性として疑うのは脳への転移。と同時に肺がんは脳へ転移しやすい病気であることを説明を受ける。
脳へ転移していることが原因であった場合は自力で食事は難しくなるとのこと。
その場合、点滴による栄養剤の投与か胃ろうを選択することになる。そしてそれはがん治療の終了を意味することも説明を受ける。

脳への転移があるとする場合、抗がん剤治療が効いていない結果であること。自力で食事が取れない人への抗癌剤治療は難しいこと。そもそも体力の低下している身体へはリスクが大きいとのこと。
そして、脳へ転移していなかったとしても、同じ理由でモノを飲み込む程の体力が無い状態での治療は難しい。体力が回復する見込みがゼロでは無いけれど高齢ということもあり、どこまで回復できるかはわからない。
どちらにしろ現在の状況ではがん治療が出来ないとのことだった。

「がん治療が出来ないということは、現在入っているがん病棟で対応できなくなるということなのか?」という問に先生は「ガンである状態は変わらないので、どちらにしろ引き続き対応を行っていく」と応えてくれた。
「ただ、そう長くは無いと思う。」と先生の言葉が続いた。

体力の衰え、現状の症状、数値だけでなく父本人を見ながら感じるものでもあった。

父の対応に疲れた姉が計画していた夏休みの旅行の計画は数日前にキャンセルしたとのこと。女の勘ってのもあるのかな。
僕はまだ現状をよく理解できていない。悲しくもないし、来週の遊びの予定も進めている。ただ、明日の精密検査の結果によって考えてみなければならないかもしれない。

父は声をかけない限り眠っている。死期が近いと眠りが長くなると聞くけれど、本当にそんな感じなのかもしれない。

頂いたお金は両親の病院へ通う交通費などに活用させて頂いております。感謝いたします。