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「それってなんの役に立つんですか?」って聞かれたら

自分の勉強や仕事に対して「それってなんの役に立つんですか?」と聞かれたら、みなさんは何と答えるでしょうか。

ニュアンスから分類する3パターン

私の場合、物理学の学生だった頃に、バイト先でよく「物理学ってなんの役に立つんですか?」的な質問を受けることが多かったんですね。
その時に、みんなそれぞれ微妙にニュアンスが異なっていて、大きく3つのパターンに分けられそうだ、ということに気付きました。

「どういうことに使われるの?」
「何が分かるの?」

といったニュアンスの、純粋に興味があるので聞いてみたといったもの(パターン1)

「将来何になるんですか?」
「どうやって飯食っていくの?」

といったニュアンスの、将来の自分の仕事(就職先)を案じるもの(パターン2)

「世の中の何かに役立ってるわけ?」
「ホント意味ある?それ」

といったニュアンスの、ネガティブな含みをもつもの(パターン3)、の3つです。

バイト先はいわゆるコールセンターで劇団や声優の仕事をしている社会人の方が多く、物理学どころか理系出身の方はごくわずかだったことから、純粋に興味や好奇心で聞いているように思えました。
上記の3パターンの割合は、感覚値ですが6:3:1ぐらいだったように思います。

また、それぞれのパターンによって答え方や答える内容も変えたほうがよい、というのが分かってきました。

たぶんその頃からだと思うのですが、『「それってなんの役に立つんですか?」と聞かれた時の傾向と対策』みたいなものを考えるようになり、今でも仕事でその考え方をアップデートしています。

そこで今日は、それぞれのパターンごとの『傾向と対策』を紹介したいと思います。

パターン1:純粋に興味があるから聞いてみた

好奇心が強くて「人が楽しそうにしていたり、自分と違う世界に住んでいる人がいると、その人の話を聞いてみたくなる」というタイプの人です。
人と飲み会に行ったりお茶するのが大好きで、いろんな人と話をするのが好きな方ですね。

「それってなんの役に立つんですか?」には悪意は全くなく、本当に想像もつかないから教えてほしいな、という願望がそのまま言葉になって表れた形だと思われます。

「役に立つ」という言葉の中には「人生を豊かにする」という意味合いが含まれているように思います。
そのような方には、「自分はこういうことが楽しい!」ということを情熱をもって語ると良いです。
例えば、

(例)
リンゴが落ちるのと、月が地球の周りを回っているのは、実は同じ物理現象なんですよ。
万有引力っていうんですけど。
一見まったく別の現象に見えるものが実は共通点があったって分かることは興味深いと思いませんか?

などの話をすると、ほほぅ、と興味深く聞いてくれます。

ポイントは、情緒的に語ることです。このようなパターンの方は、具体的な事例よりもその人の生き方に興味があって、どんなことに心が動かされるのかを知りたいためです。

たまたま先日見たコズミックフロントでは、天体物理学者の方がブラックホールについて生き生きとお話されてました。そのような人には、たとえ話の内容は詳しくはよく分からなくても、惹きつけられますよね。

パターン2:仕事を案じて聞いてみた

堅実な方や保護者目線の方に多いように思います。それを今勉強していて、将来仕事はあるのか、という心配です。

そういった方には、具体的な効果を挙げて説明すると喜ばれます。身近で親近感が湧くようなものでありながら、ちょっと意外で誰かに喋りたいと思うような「トリビア」的なものも良いですし、手法やプロセスを説明するのも有効です。

例えば物理学の場合は、物理学そのものだけでなく「プロセスを学ぶための手段としての物理学を学んでいる」というスタンスです。

(例)
物理学を学ぶと論理的な思考力や説明能力が身に付いて、世の中のあらゆる事象を体系化して考える事が出来るんですよね。
それは効率よく生きることにも繋がるんです。

人によっては、自分の将来なんて自分で考えるからわざわざ案じてくれなくても結構です、という方もいらっしゃると思います。
ただ、ここで「はぁ?うっせーわ!」などと説明放棄に走ると、相手も不快な思いをするだけでなく、自分の説明スキルもまったく向上しません。

粘り強く言語化する努力をしてみましょう。

パターン3:ネガティブに聞いてみた

最後にネガティブに聞いてみた、というパターンです。これが一番やっかいです。なぜなら、相手は否定しにかかってきているためです。

このような場合、まずは論理的に説明することを試みますが、ほとんどの場合論理的な説明は通用しません。相手はかなりバイアスをもってきているので、そもそも話を聞くつもりが無いからです。

パターン1のように感情的、情緒的に語ってみたらどうでしょうか?
私の経験上、それで相手の心が動かされることも2,3割ぐらいはありましたが、多くの場合はやはりネガティブな状況は変わりありませんでした。

そういう場合は、それ以上何を言っても無駄なので、「確かになんの役にも立たないことが多いですよねー(笑)」と開き直ったほうがお互いにあと腐れが無くて良いでしょう。

「それってなんの役に立つんですか?」を不快に感じないために

世の中には「それってなんの役に立つんですか?」という質問を無条件で不快に感じる人もいるように見受けられます。
私の見立てでは、特に理系の人に多いように感じます。
察するに、

「それってなんの役に立つんですか?」
  ↓
「(別になんの役にも立たないでしょ(笑))」

というように、自分の研究や仕事を馬鹿にされた気分になっているのではないかと思われます。

確かにこういったニュアンスで言ってくる方もいらっしゃいます(「それってなんの役に立つんですかぁ??」みたいな)。
つまり、パターン3です。

ただ、先に挙げた私の感覚値でいえば、本当に悪意がある人は1割ぐらいです。
まずは深呼吸でもして「もしかしたらパターン1かもしれないな?」と思ってみるのはいかがでしょうか。
相手も聞き方がうまくなかっただけで、単純にあなたの人となりを知りたいだけかもしれません。

よく考えたら「それってなんの役に立つんですか?」って仕事でも聞かれること多い

今日このことをnoteに書いたのは、よく考えたら「それってなんの役に立つんですか?」的なニュアンスのことを聞かれるのって、仕事の場面でも多いよな、と思ったためです。

ダイレクトに聞かれなくても、例えば「それの費用対効果は?」とか「目的や意図を明確に」とか、近いことを聞かれると思います。
仕事でやっていることですから、説明責任があるわけです。アカウンタビリティって言ったりします。

こういった時に、何かを題材として「それってなんの役に立つんですか?」と聞かれたときにどう答えるか、普段からシミュレーションしておくと、仕事にも役立つのではないでしょうか。

参考文献

「役に立たない」論に関しては、様々な意見に触れました。
私が読んで特に面白かった記事をご紹介しておきます。



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