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今更と言われようが紹介するおすすめ残響系バンド・アーティスト12選

おーい磯野、美しい瞬間を思い浮かべてそれにひとつひとつ名前を付けていく遊びしようぜー!

どうも、残響系に最近ハマった人間です。

残響系、という言葉の意味をよく知らない人のために説明すると、「なんかややこしいけどエモい感じの曲を作っているバンド」の総称です。

おそらく何を言っているかさっぱりわからないと思うので、具体例を紹介します。

この曲のように、クリーントーンのアルペジオを基調としたギター、手数の多いドラムと複雑な曲構成、今にも消えてしまいそうな儚さを纏った歌詞、これらが合わさって何だかエモい雰囲気を醸し出している、そのようなバンドをまとめて「残響系」といいます。

もともとは「残響レコード」というレーベルに所属していたバンドがこのような楽曲をよく出していたのですが、それが2010年前後に爆発的に流行し、残響レコード所属でなくても似たような音楽性ならまとめて残響系と呼ばれるようになりました。

どうやら当時は世のバンドが軒並み超絶技巧で変拍子を奏でていたそうですが、僕がこの言葉を知ったのは2017年頃。時代は移り変わり、そのようなバンドは既にほとんど姿を消していました。儚げな音楽は儚く終わってしまうということなのかもしれません。

しかし、そんな現在でも活動を続けている、または楽曲が聴けるバンド・アーティストは数多くいます。本記事では、そのような「おすすめ残響系バンド」たちを紹介していきたいと思います。

【残響レコード編】

まずは、残響系が広まるきっかけとなった残響レコード所属のバンドから紹介していきます。やはり同じレーベルだけあって、曲の雰囲気は結構似ています。互いに影響を与えあっている要素も多いのではないでしょうかね。

※ここで紹介する中には現在別のレーベルに移籍しているバンドもありますが、残響レコードに所属していた時期があれば記載することにします。

the cabs / österreich

先程も紹介したthe cabs(通称キャブス)は、2006年から2013年まで活動していた3ピースバンドです。爆撃機のようなドラムとギターと超速アルペジオ、そこにベースと儚げなボーカルが合わさり、一度も訪れたことのない街に郷愁を感じるかのようなノスタルジックな世界観が生み出されている、そんなところが魅力のバンドです。

現在は惜しくも解散してしまいましたが、メインの作詞・作曲を担当していた元ギターの高橋國光が新たにösterreich(オストライヒと読みます)というプロジェクトを始め、活動を続けています。こちらでは楽曲にピアノやストリングスが加わり、土台となる雰囲気はそのままにより開けた世界観が表現されています。

おすすめアルバム:
the cabs「再生の風景(2013)」
österreich「四肢(2020)」

cinema staff

cinema staffは、2008年に活動を開始した4人組ロックバンドです(通称はシネマ)。動画のgreat escapeは進撃の巨人のEDテーマにも起用されており、知名度は比較的高いのではないでしょうか。

一曲の始まりから終わりまで常に全速力なところや、ドラムの手数が多いところなどはthe cabsと似ている点もありますが、どちらかといえば音楽性は王道の邦ロックに近く、力強い曲調の楽曲が多い印象です。テンションを上げたいと思ったときに聞きたいバンドですね。

おすすめアルバム:
「eve(2016)」「熱源(2017)」

People In The Box

People In The Boxは、2003年から活動を続ける3ピースバンドです(通称はピープル)。上で紹介したthe cabsやcinema staffのような疾走感は控えめで、ゆったりとした曲調の楽曲が多いバンドですが、アルペジオを基調としているところや、どことなく浮遊感のある世界観には似ている点もありますね。

また、People In The Boxの一番の魅力はその「気持ち悪さ」です。美しさとグロテスクさが同居したような歌詞、ときにはひたすらに純粋で、ときには壊れきったサウンドは、最初は変だと感じるのですが、聞いていくうちにどんどんとハマっていきます。

おすすめアルバム:
アルバムは13枚、シングルは5枚とかなり多作なバンドですが、アルバムごとにかなりガラリと雰囲気が変わります。
・The 残響系な楽曲が聞きたければ
 「Ghost Apple(2009)」「Family Record(2010)」
・気持ち悪い感じが好きなら「Ave Materia(2012)」
・ポップなサウンドが好きなら「Wall, Window(2014)」
がおすすめです。

ハイスイノナサ

先程まではギターを主軸としたバンドが多かったですが、次に紹介するハイスイノナサはギターだけでなくキーボードも加わったバンドです。メンバーは結構流動的で、現在は8人編成らしいです。(多くない?)

エレクトロニカと呼ばれるジャンルにも影響を受けており、ピアノの硬質な音色も加わった無機質で静謐な曲調が魅力的です。変拍子でリズムが取りづらい楽曲が多いからか、半分夢の中にいるような不安定さ、今にも消えてしまいそうな感覚が心地いいですね。

おすすめアルバム:
「動物の身体(2012)」

【残響レコード以外のバンド編】

続いて、残響レコード所属ではないが残響系と呼ばれているバンド、またそれに似た雰囲気を持つバンドを紹介します。

実際どこまでを残響系に含めるかは個人の解釈によるところが大きいのですが、日本の歌ものバンドでポストロック(残響系の上位概念みたいなものです)系列ならば気に入る要素も多いと思い、独断と偏見で好きなバンド・アーティストを7つ取り上げました。

凛として時雨 / TK from 凛として時雨

まず紹介するのは、言わずと知れた男女ツインボーカルの3ピースバンド、凛として時雨です。

歌いながら弾くものじゃないギター、ゴリゴリのぶっといベース、全く休む暇のないドラム、さらに男女ツインボーカルと、バカが取ってきたバイキングみたいな構成ですが、それが奇跡的に絶品料理として成立してしまっているのが凛として時雨の凄いところです。しかもこれを20年以上続けています。なんかよくわからんけどすごい。

ギターボーカルであるTKのソロプロジェクト、TK from 凛として時雨とともに、アニメの主題歌として抜擢されることも多いバンドです。情報量の洪水を全身に浴びたい気分になったときにおすすめですね。

おすすめアルバム:
凛として時雨「i'mperfect(2013)」「#5(2018)」
TK from 凛として時雨「彩脳(2020)」

tricot

tricot(トリコと読みます)は、女性3人(ギターボーカル・ギター・ベース)+男性1人(ドラム)の4人組ロックバンドです。

初期はかなり残響系に影響を受けた音楽性でしたが、近年は洋楽ポストロックの要素も取り入れ、海外人気もどんどん大きくなっています。(Youtubeのコメント欄を見るとほとんどが外国人だったりします)

ボーカル・中嶋イッキュウの艶のある歌声や、不思議なリフや変拍子が満載なのに思わずテンションが上がってノッてきてしまうような曲調が魅力的です。

また、個人的に残響系のドラムは手数が多いほうがいいと思っているので、tricotの疾走感のあるドラムも好きな要素の一つです。初期のkomaki♂さんのちょっと荒っぽいドラムも、2017年からメンバーに加入した吉田さんの丁寧に突っ走るようなドラムも最高ですね。

おすすめアルバム:
・残響系らしいサウンドが聞きたければ「T H E(2013)」
・海外ポストロック的な新鮮味のあるサウンドが好きなら「真っ黒(2020)」
がおすすめです。

宇宙コンビニ / JYOCHO

宇宙コンビニは、2012年から2015年まで活動していた、女性ベースボーカル・ギター・ドラムからなる3人組ロックバンドです。

このバンド名は「宇宙のように壮大で、かつコンビニで流れているような身近な音楽」をやりたいという思いから名付けられたそうですが、その名の通り、複雑さとポップさが見事に融合した音楽性が魅力です。

作詞・作曲担当のだいじろーはハチャメチャにギターが上手く、タッピング奏法を駆使した手数の多いサウンドが特徴的なのですが、かといってテクニックを見せびらかしているような印象は全くなく、透明感のあるボーカルや流れるようなドラムと合わさって素晴らしい楽曲に仕上がっています。

また宇宙コンビニ解散後、彼が新たに始めたバンドがJYOCHO(じょうちょと読みます)で、こちらはギター・ベース・ドラムに加え、キーボードとフルートが加わった少し珍しい編成です。フルートの牧歌的な音色がキラキラとしたバンドサウンドと合わさって、自然の壮大さや情緒を感じられるような雰囲気になっているところが素敵です。

おすすめアルバム:
宇宙コンビニ「染まる音を確認したら(2013)」
JYOCHO「美しい終末サイクル(2018)」

Ivy to Fraudulent Game

Ivy to Fraudulent Gameは、2010年から活動を続ける4人組ロックバンドです(略称はアイビー)。バンド名は「アイビー トゥー フロウジュレント ゲーム」と読むのですが、誰も正式名称を覚えていないのか変換候補が途中で力尽きたりfragmentに間違えられたりしています。

音楽性としては、初期は残響系ど真ん中、最近は王道ロックをベースに残響系やシューゲイザーの要素を取り込んでいるという感じです。上で紹介した「she see sea」は初期の楽曲ですね。

また、面白いのがボーカルの寺口さんの歌い方です。ポストロック系のバンドの男性ボーカルは芯が細めな穏やかな声、もしくは感情を爆発させたようなシャウト系の声が多いのですが、彼はどちらでもなく、ちょっとヴィジュアル系っぽい歌い方をしています。なかなか見かけない組み合わせで、このバンド特有の良さが現れていて良いですね。

おすすめアルバム:
「行間にて(2016)」

said

最後に紹介するのは、2013年から活動している4人組ロックバンド、saidです。(バンド名がめちゃめちゃシンプルなので、Googleで検索するときは「said バンド」と入れないと「saidはsayの過去形です」と言われます)

インディーズバンドのためネットに情報が少ないのですが、現在Youtubeに音源が上がっているのは「Sunday」「youth」「cut」「朝になれば(ライブ音源)」「グッドバイ」の5曲です。個人的にはyouthとcutがお気に入りです。

今までに挙げたバンドと比べると曲の感じはシンプルですが、2月の朝のような透明感のあるギターのサウンドや、アルペジオのリフには残響の息吹を感じます。初期の残響系の影響も受けつつ、それを最近の王道なバンドサウンドと融合させたような音楽性が魅力ですね。

おすすめアルバム:
「blue(2015)」

【まとめ】

まだまだ紹介したいバンドはあるのですが(Cö shu Nie、初期の神サイ、PENS+など)、きりがないので今回はここまでにします。ポストロックの世界は広いので、探していけばどんどん面白いバンドに出会えると思います。残響系はいいぞ。

※トップ画像は残響レコード公式サイトより引用

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