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関東第一vs日大豊山~オーバーロードの欠点~

今回は、全国高校サッカー選手権大会東京A決勝、関東第一vs日大豊山の試合を分析していきたいと思います。

1.スタメン

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注目ポイント
・4試合で17点の攻撃力を誇る関東第一を日大豊山守備陣がどう抑え込むか
・球際の強さを売りにする日大豊山がデュアルで優位に立てるか

2.試合情報

得点
1-0(前半13分・14類家)
2-0(前半16分・10笠井)
3-0(前半34分・10笠井)

交代
後半7分(日大豊山):IN14保田↔OUT18今泉
後半15分(日大豊山):IN19藁谷↔OUT7石川
後半21分(関東第一):IN16堀井↔OUT7肥田野
           IN20若松↔OUT6北村
後半31分(関東第一):IN18神山↔OUT11宇山
後半30分(関東第一):IN3高木↔OUT20若松

3.ミスの代償

実況解説で「日大豊山はポゼッションを武器にしたチーム」と言われたように、試合開始早々から関東第一相手にボールを保持し続ける。
その中で特徴的だったことの一つがビルドアップの際にボランチがディフェンスラインに全く降りてこないことであった。
相手の2トップに対して2CBでビルドアップするのは良い形ではないが、おそらくGK浦田の足元の能力が高いという前提の上での配置だったのであろう。
しかし、この前提が前半早々に崩れてしまう。

前半9分、GK浦田が足元でおぼついていると宇山にボールを奪われ、関東第一に決定機を作られてしまう。
GK浦田の判断が遅れたのは勿論そうだが、この時ボランチの大谷は完全に相手の陰に隠れてしまっていた。

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それ以前はGK浦田が比較的ボールを保持していたために、相手の2トップの片方が軽くプレスを掛けることでCBからのパスコースが生まれていた。
しかし、このミス以降は少しずつGK浦田のボール保持する時間が減っていくことで関東第一のプレスが嵌りやすくなっていく。

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もともとビルドアップの時にCBが開かないのに加えてボランチへの縦パスの意識も全体的に低いため、うまくプレスでサイドに誘導されて攻撃が詰まってしまうシーンが散見された。
日大豊山はビルドアップの時にボランチの大谷をもっと使えていたら有効な攻撃が出来ていたことと思う。

4.オーバーロード

日大豊山の特徴のもう一つは攻守でのサイドへの人数のかけ方だ。
俗に言うオーバーロードであるが、これは前半10分ごろまでは機能していた。

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IHとボランチがボールサイドに集まり、5vs4の局面を作る。この構図が守備の時にも多く見られた。
恐らく、これには逆サイドにいるWGの突破力を生かすという思惑があったのであろう。

しかし、オーバーロードによってペースを掴む前に、隙を突かれて2失点を喫してから状況が一変する。
関東第一が積極的に逆サイドへ展開するようになり、数的不利の場面を作られチャンスを頻発されるようになる。

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これは日大豊山の逆SBの絞りの判断基準が曖昧なことも大きな要因だったと思う。
上図のように思いっきり絞っている時もあれば、まったく絞っていなくてCBとのギャップを攻め込まれてしまうシーンも見受けられた。
そして、日大豊山DF陣がこれに対処するために逆サイドへも意識を配ろうとすると、今度は高い技術力を伴ったテンポの良いパス回しで同サイドを突破される。

日大豊山が自分たちの武器であるオーバーロードを生かすはずが、それが足枷となって関東第一の後塵を拝していたのである。

5.総括

快進撃を続けて初めて決勝に駒を進めた日大豊山。オーバーロードを攻守に生かした戦術は非常に見ごたえがあり、個人個人の技術力は差があったものの、得点差ほどチーム力には差は感じない試合展開ではあった。

東京では新鋭校の台頭が著しいが、関東第一などの常連校はもちろん、日大豊山などの新鋭校も切磋琢磨して東京のサッカーを盛り上げていって欲しい。

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