楽天の「新型コロナウィルスPCR検査キット」は本当にまずい
Twitterやラジオ配信でそこそこ高評価だったので文字起こし的に書きます。
並の人間がサンプル採取できるわけがない
4月20日に楽天が法人向けに「新型コロナウィルスPCR検査キット」を提供すると発表しました。
「法人向け」というのがどの範囲を示すのか明確ではありませんが、医療施設や介護施設と限定しておらず、申し込みフォームには「企業名(団体名)」とあるので、どんな法人でもよさそう。最低100キットからの申し込みなので、そこそこの規模の団体を想定しているようです。
つまり、医療知識がなくてもいい、ということです。
これはまずいです。
検査するためのサンプルは、鼻の奥に採取棒を突っ込んでグリグリ回して採取します。インフルエンザの検査をやったことがある人ならわかると思いますが、結構痛いくらいまで奥まで突っ込みます。人によっては出血するくらい。この論文の図3くらい突っ込みます。
採取する側も、ガウンを着て手袋をフェイスマスクをつけていますね。
それくらいやらないと、ちゃんとサンプルが取れないのです。自分一人では無理です。職場の同僚にやってもらうにしろ、「痛くしないでね」とか「痛そうだからこれくらいで」という優しさがあるとできません。並の人間ができるほど甘い検査ではありません。
もし、鼻に指を入れる程度でやったらどうなるでしょうか。新型コロナウイルスに感染していても、ウイルスがいないサンプルを採取することになり、感染しているのに陰性と判定される、いわゆる偽陰性となります。そうなると「陰性だったから外に出ても大丈夫!」と思って外出すると、周囲の人に感染させることになります。
本当に新型コロナウイルスに感染していなくて正しく陰性と判断されても、それは「耐性がある」ことを意味していません。「陰性だったから外に出ても大丈夫!」と思って外出すると、周囲の人から感染させられる可能性があります。
陰性だから大丈夫、ではなく「陰性でも大人しく家にいよう」ということになり、何か行動が変わるわけではありません。
では、陽性と判定されたらどうするのでしょうか。このキットは正式な検査ではないので、結局病院で同じような検査をすることになります。ただ現状、「37.5度以上の4日間続いた場合」が受診条件の一つになっているので、検査キットの判定は考慮されない可能性があります。
つまり、結果が陰性でも陽性でもやること、できることは一緒です。検査とは、問題に対して何かできる対策があって、その対策を実行するかどうかの判断材料となるものですが、この楽天の検査キットについては、どんな結果でも私たちにできることは何もありません。
何もわからない、何も言えない、何かの判断材料にならない
ここまで陰性、陽性の言葉を使ってきましたが、根本を覆すものを見つけてしまいました。
この検査は、新型コロナウイルスに特徴的なRNA配列が検出されるかどうかを検査するものです。陽性や陰性など医療的診断を提示するものではありません。
なん……だ……と……。
これは医師法と関係しています。医師法第17条には「医師でなければ、医業をなしてはならない」とあります。医業には、病気の診断も含めると解釈されているので、医師が介入しない楽天の検査キットを「医業」にするわけにいかず、上のような、よくわからない注意書きになってしまいます。
身も蓋もない言い方をすると、楽天の検査キットでは「何もわからない、何も言えない、何かの判断材料にならない」ということです。
これを法人向けに最低100キットから販売する楽天の姿勢は理解できません。とにかく買わないでください。使わないでください。
せめてもの提案
批判だけでは悲しいので、建設的な意見を書きます。
楽天が本気で取り組むのなら、保険適応の条件となる検査体制を構築してほしいです。楽天ほどの資金力があるなら、検査施設を作って人を雇い、病院と連携してちゃんとしたPCR検査を請け負うくらいの気合いを入れていただきたいです。今からでも遅くないですよ。掌返しして喜びます。
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