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いま、小中学校での通知表評価は「絶対評価」だってこと、あなたは知っていましたか?

母親となり、子どもたちが小学校に通うようになったころ抱いた違和感。
「私が受けてきた時よりも、全体的に評価甘め?」
それは、彼らが中学に通うようになってからも同じ。

そして「1」という評価が下されたら大抵の高校には入れない、という衝撃の情報をキャッチし、ますます違うと感じるようになりました。

いや、クラスに数人いるはずでは…
その子達は専門学校とか通信にみんな流れていくとか?
これはもしかして、評価法が変わったのかなぁ…と思うようになりました。

漠然と感じていた違和感が現実のものとなったのは数年前に参加したとある教育系のセミナー。
そこで、登壇されていた先生が「いま、公教育では絶対評価を採用している」という話をされた時、今までの違和感がなんとなく払拭されました。
と同時に、「他の保護者の方たちはこの事実に気が付いているのだろうか、、、」という疑問が。

そこで、参加した別のセミナーで「私が子どもの頃、地域の小中学校は相対評価だったのですが、今は絶対評価に変わっているところが多いようです。うちの子どもたちはいま都内の公立校に通っていますが絶対評価ですし、以前住んでいた福岡県でもそうでした」と発言したところ、教育系のセミナーに数多く参加されている方に「え?そうなんですか?今はじめて知って衝撃でした」という感想をいただきました。

教育のセミナーを開催している「専門家」に近しい方でも、普段、公教育との接点が薄いと評価法がこっそり変わっていたという事実を知らないという現実。

今回、絶対評価と相対評価について少し調べてみて、それぞれの特長などをまとめてみることにしました。

絶対評価であろうが相対評価であろうが残念ながら今の日本社会では高校・大学の進学時には「数字」でほぼ決まってしまうところに変わりはありません。
ただ、絶対評価に変わったんだ、ということがわかるだけで対象が「クラスのほかの子」から「自分の子どものみ」に変わります。

少しでも保護者の方々が神経質になってしまう状況から解放されればと思います。

絶対評価とは

絶対評価は生徒の到達度に基づいた基準が決められています。
定められた基準に到達したものは順位に関係なく「5」というように評価されます。
逆に、到達されていないと判断されれば全員「1」というように評価される可能性もありますが、現在の学校教育においてはあまり現実的ではありません。
純粋にテストの点数に平常点を加味した形での評価となります。
なお、テストの点数と平常点の割合は現場の先生の判断に委ねられます。

相対評価とは

生徒の成績が学習集団全体のどのあたりの位置にあるかで評価されます。

相対評価の考え方は「集団の絶対数が多くなればなるほど、その成績の分布はおよそ正規分布に近づく」という統計学の理論を基本としています。
教師は成績資料を精査した後、生徒を成績順に並べ、5段階評定の場合、5…7%、4…24%、3…38%、2…24%、1…7%が目安とした、一定の割合で評定をつけていきます。
そのため、必ず評定5の生徒、1の生徒が存在することとなります。

ただし、この評価法では同じような点数、同じような平常点を獲得していても「5」の生徒と「4」の生徒が出てしまったり、そこまで点数が低くなくてもやむを得ず「1」という評価を下さなければならなくなってしまうという弊害がどうしても生まれてしまいます。

現在、学校現場では使用されなくなった相対評価ですが、模擬試験を受けた時に評価される「偏差値」などはこの相対評価の手法を取り入れています。

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模擬試験で用いられる偏差値の出し方

大学受験などにおいて、大手予備校が公表しているものには「平均偏差値」と「ボーダー偏差値」という2種類が存在しています。
どちらも、模擬試験を受けた受験生に対し追跡調査を行い、「模擬試験の成績」と「各大学の受験結果(合否)」を照らし合わせて算出します。

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現在の公教育の評価について

東京都における児童や生徒の学習評価については事細かくこちらのホームページに載っていました。


児童・生徒の学習評価(評価・評定)
1.理論編
2.実践編
※東京都教育委員会HPより

この文書をきちんと読みこなしながら35人の評価をつけるのは大変な作業です。
学校の先生はこのほかにも教材研究、教科指導、テストの問題作成&採点、提出物のチェック、部活動、保護者対応、手紙やプリントの作成、課外活動など多種多様な業務をこなさなければなりません。
少々乱暴な言い方にはなってしまいますが企業におきかえる完全にブラックではないかと改めて感じました。

絶対評価がなぜ重視されるようになったのか

改めて絶対評価と相対評価について表にまとめてみました。

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この表から、二つの評価は評価軸に違いがあることがわかります。
絶対評価は生徒側からみて評価がわかりやすく、相対評価は先生側からみて評価がわかりやすく設定されています。

極論になってしまいますが、相対評価では「35人クラス内で10人が100点満点。提出物も完ぺきに出して授業態度もいたって真面目」という状況になったときでも上述した相対評価の基準に照らし合わせると生徒の評価を「5」と「4」に振り分けなければならなくなります。
これでは評価をする先生も苦しいし、生徒側からも不満の声があがってきます。

対して、絶対評価は同じような状況になった時、全員に「5」という評価を出すことができます。
評価に透明性があるのです。

小学校から中学、高校、大学とあがるにつれ、今の日本の教育システムではどうしても評価を気にせざるをえません。
透明性のない評価になると生徒のモチベーションがあがりにくくなります。
そのため、生徒側から見てより透明性、客観性をもっていることから、絶対評価へと舵を切ることになったのではないかと思われます。

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また、先生側からみてもメリットが。
具体的な方向性を示すことで必要な業務に集中できるようになり、無駄な業務が減ります。
生徒自身の目標の具体的にどのような結果をもたらすかをイメージできれば、モチベーションの向上にも役立つでしょう。
そのため、学校現場においても、相対評価より絶対評価を採用する動きが、近年見られるようになっているのです。

いつから絶対評価に変わったの?

学校現場では、長らくクラスの中で自分はどのポジションにいるのか、という相対評価という評価法が採用されていました。

私の子ども時代(1970年後半~90年代前半)、小中学校では相対評価、高校、大学では絶対評価が採用されていました。

転機となったのは2002年に施行された「ゆとり教育」。
少子化の加速にともない、今までのような人材の量産型から個性を重視する向きに変わったことが背景として挙げられるのではないかと思います。

それにともない学習指導要領の改正へとつながり、比べる対象が他者から自己へと変化した結果、小中学校の評価法もそれまでの相対評価から絶対評価へと移行していったものと考えられます。

とはいえ、完全に相対評価がなくなったかというとそうでもありません。
前述いたしましたように、高等教育への入学基準をはかるため、偏差値であらわします。偏差値は、相対評価の一種ととらえています。

絶対評価とはいえ、100%テストの成績を評価に反映させない理由

多くの学校で絶対評価が採用されているものの、テストの成績=通知表の評価とはしていないようです。理由として、以下の3 つをあげられます。

①テストの点数にのみこだわる児童・生徒の出現
②テストの点数が振るわなかった場合の救済措置
③不測の事態による、テストだけでは評価しにくい局面

テストの点数にのみこだわる児童・生徒の出現

テストの点数さえ良ければ、という要領のいい子がもしかしたらクラスのなかに存在しているかもしれません。

普段の授業態度が悪く(騒ぐ、寝る)提出物は全く出さない、忘れ物もひどいのに、テストでいつも100点を取るので不動の「5」を獲得するA君。
かたや、授業中寝たり騒いだりせず、よく発表もしたけど、テストの成績が85点だったから「4」にそれてしまったB君。
こうなってしまうと、B君のモチベーションはダダ下がりです。

②テストの点数が振るわなかった場合の救済措置

定期テストとはいえ、一発勝負です。
体調不良の中テストを受けて実力が出しきれなかった、テストそのものを受けることができなくなった(今は追試があるとは思いますが)などの理由で実力が発揮できなかったことも出てくると思います。
先生方は普段の学習態度や提出物の状況をみてなんとか救ってあげたい!という親心が出てくるはず(?)

③不測の事態による、テストだけでは評価しにくい局面

滅多にないことですが、今まさにこの状況です。
コロナという予測不能なウイルスと闘争中のいま、学習環境が整っていない、一律ではない状況下において、テストのみで測るのは困難です。
こういう状況下においても成績は出さなければならないので大変です。
特に、新入生に関しては、その人となりを知ることなく手探りで成績を付けなければならなくなります。
大きな成績材料としてテストということにはなるかもしれませんが、これが本当の実力か、というと大きな疑問が残ります。

3つの要因は似て非なるものとして挙げさせていただきました。
いずれにせよ、一生懸命に頑張っている子の救済のため、何らかの考慮がはたらきます。
平常点、提出物、忘れ物、、、などテスト以外の様子を加味して成績をつける先生が多いと思います。
ただし、テストとテスト以外のバランスについては現場の先生に任せている、というのが現実です。

個人内評価を取り入れる理由

テストのみの絶対評価になるとテストのみに集中するというデメリットがあるため、そこに相対評価・個人内評価を加味する学校が多いようです。

個人内評価とは、その子の伸び率だけを純粋に評価する方法。
絶対評価と一見すると似ているのですが、絶対評価の場合、評価する項目がクラス共通であるのに対し、個人内評価は一人ひとり評価項目が異なるという点です。

例えば、A君の評価項目は「漢字を間違えずに書ける」、Bさんは「たくさんの漢字を使うことができる」、C君は「とめ、はねを意識して漢字を書ける」、といった感じです。

個人内評価は一人一人じっくり観察しないと書けないので35人クラスを一人で受け持つ状況下にでは生活態度を評価するのが精いっぱい、といったところでしょうか。

ただし、この個人内評価を取り入れることにより、生徒のモチベーションがよりあがる、伸ばすべきポイントをつかむことができるというメリットを感じます。

いまの成績表は「教科評価=絶対評価に相対的要素を加味」+「学校生活=個人内評価」が主流

〇小学校低学年→「よい」「ふつう」「がんばろう」
小学校の低学年は成績をストレートに載せる、というより勉強態度や提出物などの平常点により比重がかかっています。
評価も5段階評価で位置を確認するというよりは、あらかじめ教科ごとに用意された項目に対する習熟度が見えるようになっています。

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〇小学校高学年以降~中学校→5段階評価

より成績を見える化するために絶対評価を取り入れた5段階評価をしています。
平常点にあらかじめ教科ごとに用意された項目に対する習熟度が見えるようになっています(教科ごとに用意された項目に対しA~Cの評価・①興味・関心、②思考、判断、③技能 ④知識)
学校生活に関すては「書評」という形で個人内評価を採用しています。

〇高校→10段階評価(評定で5段階に変換)

中学と同じく、基本は絶対評価。
ただし、成績表としては10段階評価で出し、受験などのときに出す評定はそれを5段階評価に換算したうえで提出しているようです。

娘の学校は「テスト9割、平常1割」平時ではとのことですが、コロナの影響により今年は「テスト7割、平常3割」という報告を受けています。

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まとめ

今回は、各評価法の概要と絶対評価に移行した背景などを考察していきました。

今の学校の評価法は、内申を絶対評価にすることで進学する局面ではより公正な判断を受けることができるという利点があります。
また一方で、模擬試験をうけることにより偏差値を知ることで自分のポジショニングを客観視できるという利点もあります。

二つの評価法をうまく使い分けて生徒自身のその先につながればと思います。

●絶対評価→目標に対する習熟度はどれくらいか。比較対象は自分自身。
●相対評価→クラスの中でどれくらいの位置にいるか。
比較対象がクラスメイトや同学年の生徒。
●個人内評価→伸びたところを評価する。対象は自分自身。
※いずれも生徒目線からみた場合

相対評価から絶対評価に移行したきっかけ→2002年のゆとり教育(実際には2000年頃からスタート)

絶対評価に移行した背景
・少子化による個の伸長
・成績をより透明度あるものにする
・できるところ、できないところを瞬時に分析する

現在は、絶対評価と相対評価のミックス
公教育では絶対評価、民間では相対評価でトータルに分析。

追記(2020.8.5)

現役の先生から、評価項目が今年度から変わったとのコメントをいただきましたので付記します。
いただいたコメントをそのまま引用させていただきます。

評価項目についてなんですが、今年度から
1.知識・技能
2.思考力・表現力・判断力
3.主体的に学習に取り組む態度
に変わったんですよ~。
まだ慣れてなくて、1学期の評価が難しかったです。

先生の生の声を聞けて嬉しかったです。
ありがとうございました。

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