見出し画像

一割の選ばれしバーサーカー

 前回は「クレームの半分は勘違い」という話をした。
 じゃあ残りは何か。いいですか。

 クレームの半分は勘違い。二割は店側のミス。二割は触るとヤバい人。残りの一割は始めから怒ってる人だ。

 相変わらず独断と偏見の私調べなのだが、この考えを披露したところ、就活支援中に講師の先生から深く深く頷かれたので、やっぱ間違っちゃいないんだなぁと思った次第である。
 体感、わりかし合っている。

 二割のミスは、あるまじきことです。販売者側が努力して減らしていかなければならない。……逆に言えば、気を付けて減らせるクレームは二割だと思うね僕ぁ。
 いやもちろん、もちろん、企業努力としてやっていかなければならないし、その姿勢は崩していいというものでもないというのは理解できる。お客様のために心からの丁寧な接客をする。それは、いいことだろう。いや、いいことですね。
 で、残りの八割の話。今日は初めから怒ってる、一割の人の話にしましょう。

 人生色々あって、イライラしながら買い物に来た客がいる。
 もうそれだけでクレーム地雷1.5倍キャンペーン中ですよ。気を付けていようが難しい、ハードモードの一面になる。まるで首領蜂のラスボス戦のよう……と言ってわからない人が多いのだろうな。でも言いたかった。すまない。
 我らに全く関係ないところでお怒りになってくるお客様がほとんどで、何で怒ってるのかはさっぱりわからない。だって、来た時からカリカリしてたので。
 しかし、稀に、原因をはっきり聞いたわけではないが「おそらく……」と思う場合もある。
 それは、買い物に不慣れな人が買い物に来た時だ。
 例え話がしやすいことに、最近だとセルフレジが増えた。そのせいで、キレるお客の話を聞くことが多くなっている。
 要は「使い方がわからず、聞くのも恥なので怒ってみせる高齢者がいる」というものだ。なるほど。
 この見解は、おそらく合っている。
 そして、セルフレジだけとは限らない。

 カワイイお菓子屋さんなんて軟弱なものには、男子、立ち寄るべからず。
 そんな信条があるのかどうかはわからないが、そのお客様はハナからイライラしていた。何しろ時は三月半ば。ホワイトデーが近いのだ。
 ありがた迷惑にも会社でもらった品物のお返しを買いに来たらしい。うちのホワイトデー商品を指して言う。
「これを13個」
 そして、いかにも不機嫌そうにブスくれて黙る。はい。会社の女の子は13人なんですね。了解。
 日持ちなどを説明するもうるさそうに生返事。しかし袋に詰めようとすると「一個一個ラッピングしてくれ」は言う。
 あー、と。
「すみませんこちら、個別包装の袋はございませんで」
 商品がすでに個包装なので、そこにシールとリボンはついている。それがうちの店の精いっぱいです。すみませんね。専用の袋はなく、あとは店のクソダサ紙袋しかない。どうしても可愛い袋にしたければ百均にいって選んでくるといいよ、今なら色々あるんで。
 ということを丁寧に伝えると、多すぎる機雷に当たる。
「もういい!」
 ドカーン。こちらの残基が減らされ、客は去っていく。
「僕は歓迎されていないようだからね!」
 捨て台詞つきである。すまんなうち和菓子だからな。ハナから洋菓子に行けば、綺麗なラッピング置いてるとこ多いと思うよ……
 ともかく、
「僕は望んで買い物をしているわけではない、そこんところ誤解しないようにしてくれたまえ。こんなもの僕が欲しいと思ってなぞいないのだからね」
 という圧力を、ゼスチャーや言外にビシバシと感じる接客であった。
 別に、恥ずかしいことは何もないんだけどなぁ。
 店員はゾンビなので、誰が品物を買っていこうと特には何も思っていないのでね。

「一割はウソでしょー、もっとしょっちゅう来るよー」
 と言うのはコンビニ勤めしていたミケミケちゃん。
「コンビニは殺伐としてるから誰もかれも威嚇しながら来るんだよー」
 そういう修羅道の話はしてないんだけど……
 しかし、だいたい内容は一緒だ。初手でキレている人は店員が必要な(重ねて言うが余計な、ではない)ことを言うともっとキレる。
「お弁当あたためますかー」「今あたためたら冷めるだろう!!」「年齢確認タッチしてくださーい」「そんなの見てわかるだろう!!」
 ああ、よくいますね。なんか頑なに年確したくない人いるよね。あれも羞恥の一環なのかしら。美学かしら。
「コンビニはさらに客質が違うので、クレームの内容も違う。主に客側がルール違反を強行しようとして起こるトラブルが多い」
 な、なるほど。
「最初からキレてる人が小魚ナッツ買っていくといっぱいお食べっていう気になるね」
 そういうお客様はたいがい酒もセットで買うだろうからねえ。せっかくのカルシウムも、アルコールで流れてしまうかもね。どうなんだろうね。

 クレームのうち一割は キレながら出かけて買い物をした客がキレ続けているだけである。
 これってトリビアになりませんかね……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?