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家から出ないと……

最近、本当に家から出ない。

家から出ない生活を送っていると目が開かなくなる。ベッドから動けなくなる。活字を読むのが億劫になるなど、負のループに突入している感さえある。


ちなみに僕は大学生の頃、「家から出ない生活をしたらどうなるのか?」みたいな実験をしたことがある。

当時は映画と本が好きすぎて、気づいたら深夜みたいな生活を送っていたし、夏休みの予定も特に入れていなかったので興味本位で実行したのであった。

「買い物一気に済ませて、引きこもるか」

食料、生活必需品を買って――そこから僕の布団の上での生活が始まった。

そして12日後、カーテンからこぼれる外の光しか知らない生物が誕生した。

外を出た理由は、バイトに行かなくてはいけないから。やってみた感想としては、意外といける、といった所。


特に体調的な変化もなかったので健康体だった。そのためクソ暑いのにスーツを猛暑日に着ても倒れることなく、バイト先の塾に難なく到着した。

「おはようございます!」

お盆休み中めちゃくちゃ肌を焼いた塾長が元気に挨拶をしている。ちなみに知り合いに会うのは、16日ぶりだった。

「……」

あれ?

「……」

うそ、声が出ない。塾長は僕の異変に気付かず仕事に戻った。

「……」

え、マジか。

大声を出している感覚なのに、声が全く出ない。

「………………」

あと30分後には生徒が来る、それまでに何とかしないといけない。

次々と来る同僚の先生たちが僕に挨拶をしては、持ち場に付く。

塾長が大きな声で挨拶をするから、僕が挨拶を返していないことには誰も気づかない。

「……(詰んだ)」

流石にこのまま誰ともコミュニケーションを取らないのはまずいので、仲の良いK先生にメモを渡す。

すみません、声が出ません

「え?」K先生は、口頭で返してくる。

僕はメモに新たに文字を書き加える。書いている時間が、まどろっこしい。

何かわからないんですけど声が出ません

「え、あ……その大丈夫ですか?」

大丈夫じゃないんです……

「ちょっと待ってくださいね!」

K先生は席を立ち、自分のカバンをの小さなポケットから、細長い棒を取り出した。

「これ舐めて下さい」

僕はアイコンタクトで、何これ?と訴える。

「龍角散です」

龍角散!!?

とは、流石に書かなかったけど、取り敢えず成す術もないのでありがたく龍角散を頂いた。

「どうですか?」

マズい

「じゃなくて喉の方!喋ってください」

ああ、そうか。僕は声を出す努力をしなかった。

「……ぃぁきぃごえてる?」

「聞こえます!」

「ぃす、あマジで!話せていぅ!」

所々、空気が漏れた声を出すものの、何とか復活を果たした。


~数分後~

「マジでありがとう!助かった!」

「いえ、どういたしまして、本当に治って良かったですね!でも原因は何だったんでしょう?」

その場では適当に龍角散舐めたから喉の調子が悪かったんだよ、たぶん、と適当に流した。


皆さんも引きこもるときは、声を出す練習をしておきましょう。


追記:

最近はyoutubeがお友達。


最後まで読んで頂きありがとうございます!文章を読んで少しでもほっこりしてくれたら嬉しい限りです。