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【第一章】脳をぶっ壊したい。から始まった

ある朝突然、私の脳は壊れてしまった。

朝起きることが出来ない。夜も今日しでかした失敗で胸がつぶされそうになって眠れない。今日の失敗だけじゃない、何年も前のミスを私のポンコツな脳はご丁寧にも次々と思い出させる。

ちゃんと寝てない頭で仕事ができるはずもなく、性懲りもなくまたミスをし5時間、上司と二人きりの会議室に缶詰で叱られる。そんな毎日を3年も続けてしまった結果、ある朝私はぶっ壊れた。気が付くと「最寄りの駅_心療内科」で検索し、朝9時、朝一番に電話した。

「プルルルル」

心療内科の方「はい、〇〇心療内科です」

「・・・(思うように言葉がでない。嗚咽)」

心療内科の方「大丈夫です、ゆっくりでいいので気持ちを教えてください」

「あ、あ、朝起きた瞬間から辛くて、も、もう立てなくて(嗚咽)」

心療内科の方「わかりました、今日午後なら入れますのでお越しください。それまでゆっくり休んでまずは落ち着きましょうね」

それは今思えばこころの救急外来への電話だった。なんだったらこころの救急車があれば連れて行ってほしかった。今すぐ助けてほしかった。
朝の忙しいときに嗚咽でほとんど話せていない私の話をゆっくり聞いてくださった。運よく優しい対応の心療内科にあたってよかった。

なんで私はこんなにポンコツなんだろう。

そんな言葉で頭がいっぱいだった。そのときの上司に言われた言葉で今も思い出すとキューっとなる言葉があって「俺のブランドをつぶす気か」って。私はポンコツでは飽き足らず、人様にこんなにもご迷惑をおかけしてしまう存在なのだと思ったらシュッと消えてしまいたかった。

今思えば相当全部狂ってるだけなんだけど、当時の私は半径10センチも見えてなくてどう申し開きをすればこの人に赦されるのだろう、そればかりを考えていた。


職場は小さなオフィスだった。そこに社長と私、2人の会社。
密室。社長のデスクの前が私のデスク。今考えるとこれまたどう考えてもおかしいのだけど、2人しかいないのに、横並びではなく、縦にデスクが並んでいて私の背後にはいつも社長がいた。咳払い、深いため息、「スーッと」息をのむ音、重苦しい空気で長い一日が始まる。

何か私がミスをするたびに容赦なく浴びせられる罵倒。
今思い出そうとしても、脳が勝手にもやをかけてくれて詳しく思い出せない。(そういうところは高機脳)

とにかく人格を滅多打ちにされる言葉を何万ワードと浴びせられた。
「お前33にもなってこれまでどうやって生きてきたのかわからないな。」
「いまのあなたでは外部に出せませんね」
「あなたはずっと甘えている。それは要望じゃなくわがままです」
「あなたのためを思って言っている。ここまであなたのことを考えてくれる人、いないよ。いたら連れて来いよ」

これに類される言葉をずっと。大きな声で。
人目につかない密室で。


14時、心療内科に到着すると
これまでの生い立ち、ここに来ようと思ったきっかけとなった出来事など。丁寧に聞いてくれた。今思えば認知行動療法といって認知のゆがみをカウンセラーとの対話を通じて自ら気づく、というものをしていただいた。
その後月に2回、カウンセリングに通った。ただ3回目にして先生に私はこう尋ねた。

「これって何になるんですか、薬も気持ち悪くなってしまうから飲みたくない。対処療法じゃなくて根本的に見直したい」

救急車で運ばれたと思っているのに
内科で、椅子に座って悠長に聴診器を当ててもらっている気がした。わたしは今すぐ大手術をしてほしかったのだ。それこそ今までの苦しい出来事をさっぱり忘れて、明るく前向きな女の子になれるように脳外科で。必要ならば電極とか流してもらっちゃって。

それなのに、この目の前の人はずっと聴診器を当て、問診してを繰り返している。すぐに限界がきて通わなくなってしまった。


人生立ち往生したまま、
無常に時間がすぎていく。



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