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メイドへ送る
三つ単語を貰って書いた短い物語です。
「スマホ」「マグカップ」「ココア」
「ちょっと私の部屋に来なさい」
私はご主人様の大切にしていたスマホの画面をひびだらけにしてしまいました。このお家に家政婦として入ってから何回目のミスだろうか。
「おまえは何回注意しても直らない。罰としてここに置いてある土をお湯で割ったマグカップの中身を全て飲み干しなさい。できないとはいわせない」
私が悪いんだ。目を見開き瞬き一つせず私を見下ろすご主人様に逆らう事は到底できず、私はマグカップに唇を当てました。あれ。美味しいでございます。
「おまえも疲れてるだろうからな。ココアだよ。さあ、甘いものでも飲んで、これからもしっかり働いてくれよ」
ご主人様はいつもやさしい。あまりに熱くて指から離れ床で割れ散ったマグカップを見ても、私の頭を撫でてくださっている。
「おまえは本当に駄目な子だな。やはりたまにはお仕置きも必要だ」
ご主人様は私をベッドに押し倒し、きつく抱いてくれました。
私は今、マグカップの中にいます。奥様にご主人様との情事がばれてしまいまして、巨大なマグカップの中から顔だけ出した状態で、土で埋められています。熱い。頭から熱湯をかけられています。薄れゆく意識の中で、奥様の「土は甘くはないでしょう」という声が微かに聞こえます。でも、私などまだましな方だと思います。何故なら、窓から見えるあの大きな木の下に、私のやさしいご主人様は永遠に眠っているのだから。
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