ショートショートのような何か

私と同じ中学校に通うナオちゃんは、まるで男の子ように見える女の子だった。
私はナオちゃんに、恋の話や好きな芸能人の話を屈託なくする、他の女の子とは違う魅力を感じていた。
彼女が私が大好きな黒髪ショートカットのボーイッシュなアイドルに似ていたから、という単純な理由もあった。少なくとも最初は。
どういう訳か、ナオちゃんは、いつもひとりぼっちだった。
彼女は休み時間などはいつも遠くを見るような瞳をして、気怠げに教室の開け放された窓の外を眺めていた。
風に靡く、ナオちゃんの艶々の短い髪と物憂げな表情に、私はどんどん魅入られていった。
ある日の放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると、ナオちゃんは小さな身体を震わせながら一人で涙を溢していた。
私はナオちゃんに吸い寄せられるように近寄ると、彼女の瞳から溢れる涙を舌で拭い、勢い余って、唇も舐めた。
ナオちゃんは、驚いた表情をしつつも、私のぎこちないキスを受け入れた。
ナオちゃんは、泣きながら、笑っていた。
ナオちゃんの腕には、引っ掻き傷のようなリストカットの跡があって、私はそこにも舌を這わせた。突如ナオちゃんは、私の手を払い、机の上で足を広げ、白い下着を脱いだ。
「ここ、傷跡みたいでしょ」
私は無言で、ナオちゃんの性器を眺めた。そして躊躇うことなく、そこを舐めた。
一本の線のようなナオちゃんの性器は、しょっぱかった。
決して美味しくはなかったが、私の舌で、ナオちゃんの傷を治癒できるような気がして、額に汗を滲ませながら一心不乱にそこを舐めた。
ナオちゃんは、相変わらず泣き笑いの表情を浮かべていた。
ナオちゃんは、翌日から学校に来なくなってしまった。
それから暫く経って、ナオちゃんは義理の父親から性的な虐待を受けていたという噂を耳にした。
彼女は県外に引っ越ししてしまったし、私は彼女の連絡先も知らなかったから、もう多分、二度と会う事はできない。
私はそれからも、ナオちゃんに似たアイドルがテレビで歌い踊る姿を見る度、彼女の香りと風に靡くショートカットを思い出し、たまに泣いた。
ナオちゃんの傷は癒やされたのだろうか、今は幸せにしているのだろうか。私は自室の窓を開け放し、風に晒されながら、自分の傷跡のように裂け目の入った性器に指を這わせた。

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