夏に向かう

 いや、季節の足の早いこと早いこと…。

 つい最近まで肌寒さに軽く震えが走る瞬間があり、毛布を被って眠る日々を送っていたというのに、もう日中は威勢の良い太陽の光に晒され、額やら胸元やらにじわあっと汗の滲む時期に差し掛かりましたね。

  私は早起きな方で、朝は大体5時だか6時に起きるのですが、先日ふと5時台に窓の外に目をやると、薄い桃色の雲の隙間から空の青が望める事に気付き、何だかハッとしました。

 思わず窓を開け、胸に吸い込んだのは緑の匂いと透明な驚きでした。

  日々の新鮮な季節の欠片をしっかり握りしめ、心身に取り込み、染み込ませ、五感を総動員させる。

 そんな瞬間ってとっても大切です。

 感じるということは、自我から離脱し、例えば鳥の鳴き声や、白い雲や、蒼天や、あるいは雨粒一つ一つや、地面と同一性上の存在になるということです。四季そのものになることでもあります。

  私の肉体はこれから夏の空気と一体化していくのだなぁとしみじみ思うと、夏を四季の中で最も愛する人間としては、思わず走り出したくなるくらいたまらない気持ちになります。

  伸びた髪をとかしながら、今年もしゅわしゅわと泡立つラムネを口に含み、舌と喉で炭酸の爽やかさを楽しみ、瓶の中に入っている夏の空そのもののような透明な丸いビー玉をからから鳴らしてみようかな、なんてことを思うと、甘くて刺激的な気泡のような喜びが、胸の中でしゅわっと弾けました。

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