今時の子供の、呼び名の話

 先日、小学生の姪から、興味深い話を聞いた。

 姪のクラスの女子同士で、名前に「子」をつけて呼ぶ、ということが流行っているのだそうだ。

 例を挙げて説明すると、クラスに堀北真希と指原莉乃がいた場合、彼女たちは「まきこちゃん」「りのこちゃん」と呼ばれる、というようなことらしい。
 いろいろ詳しく話を聞いてみたところ、姪のクラスの女子には、本名に「子」のつく名前の子は一人も居らず、姪も含めて3人だけが3文字の名前、それ以外は皆2文字の名前なのだそうで、2文字の名前の女子同士で子をつけて呼び合うようになったのが始まりだったのだそうだ。
「なんかね、陽キャ? っぽい人たちがね、やり始めたの」とのこと。
 ついこの間までアンパンマンだのプリキュアだの言ってたような気もするのに、もう陽キャとか言ってる。

 ならば、姪のようなもともと3文字の名前の子はというと、2文字の名前の子からは、「子」をつけて呼ばれることもあれば、つけずに呼ばれることもあるそうだ。
 つけずに呼ぶ子は「(自分は名前に子をつけて呼ばれるから)おんなじ3文字」などと言い、つけて呼ぶ子は「『○○○子ちゃん』って、『桜子』みたいな感じでカッコいいよね」などと言うらしい。
 姪のクラスは全員仲はいいという。
 なので、姪を含めて3文字の名前の子だけ仲間はずれにあっているということではなさそうだ。
 3文字の名前の子同士では普通に呼び合っているのだそうだ。

 聞けば、どの子も、今風のおしゃれな名前を親からつけて貰っているようだ。
 どんな漢字を当ててあるのかまでは知らないから、それがいわゆるキラキラネームなのかどうかは解らない。
 ただ、音で聞いた限りでは、こちらの慣れもあるのかも知れないが、特別風変わりではなく、歳をとってもそれほど浮くこともなさそうな、今時の可愛らしい名前ばかりだった。
 皆、親御さんの幸福感に満ちた愛情が伝わるような名前だ。

 その名前に、「子」をつけるのが、姪のクラスの女の子の間で流行している、「くだけた呼び方」だというのだ。

 私たちの若い頃は、名前を短く呼ぶことが、親しい呼び方のひとつだった。
 姪のクラスでは、名前を長くすることが、親しい呼び方のひとつになっている。
 加えて、今の若い親が言うような「子のつく名前は古くさくダサい」という感覚は、当事者である子供たちの間では、さほど強くはなさそうだ。

 いつの時代も、子は親の世代の価値観とは少しだけ違う何かを、自分たちで選び、作り、大切にしていくものなのだろう。
 それはきっと、健全な生命力の証なのだと思う。

 親は、自らの名前よりも、もっともっと素敵な名前をつけてあげたいと、「子」のつかない名前を我が子に与える。
 その結果はどうであれ、少なくとも親のその心情だけは、ひとつの愛には違いあるまい。
 そして、その子どもたちは、自分の名前に「子」の字をつけて呼び合い、自分たちだけの世界を確立し楽しんでいく。
 それが、もしも「子」のつく名前が珍しくない大人への素朴な憧れからくるものであるのなら、これもまたひとつの愛の形であろう。

 毎日、楽しそうで何よりである。
 のびのびと、元気に育ってもらいたい。

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