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ウェディングドレスを決めるまで

秋が深まる今日この頃、気がつけば結婚式が3ヶ月後に迫っているではないか。そういうわけでのんびりしている私たちは、ようやく本腰を入れて準備を始めたのであった。今日は、その一歩手前のウェディングドレスを決めるまでの話を書きたい。

言うまでもなく、この地球上にはものすごい種類のウェディングドレスが存在している。ブランドごとに特色があり、価格帯も大きく異なる。シルエットはAライン、プリンセスライン、マーメイドラインなど、比較的絞りやすい項目の一つだが、生地も種々様々存在するのだ。よって、1着試着してみて、スレンダーラインが似合う体型なのだなと思いきや、レース、サテン、シルク、チュールなどの生地によって雰囲気が大きく変わり、シルエットだけで絞り込もうとすることは困難を極める。結論、着てみないと似合うかどうかわからないのだ。白色縛りのドレスでよくもこれだけの種類が発明されてきたものだと世のデザイナー様方に感服したしだいである。

式場と提携しているレンタルドレスショップから良さそうな2店をピックアップし、その2店でそれぞれ数着を着させてもらえれば、すんなり決められるだろうと高を括っていた。良い意味であまりこだわりがなく、安ければ安いほど嬉しいという庶民の権化花嫁とは私のことである。

まず、冬婚のため季節感を意識して長袖スレンダーで探し始めた。1着目は大柄のレースが全体に施されたクラシックなスレンダードレスで、裾の流れが美しい。これぞ、私の運命のドレス!と思い、意気揚々と半ばドヤ顔で試着した2秒後には違うとわかった。主張が激しい私の肩は、なんとかドレスに収まっているものの、美しいレースの殻から出てきたくてしょうがない様子だ。鏡に映っている自分はというと、肩のラインが強調されて、戦士のように強く逞しい。強く逞しい女性でありたいが、それはあくまで内面の話であって、ドレス姿でその理想像を暗喩する必要はない。もちろん、このドレスは却下させていただいた。

このようにして、「ここがもう少しこうなっていたら良いんですけどねぇ」などと、一丁前なことを言いながら試着を続け、結果、2店を2回ずつ、計4回試着に行った。それでも「これぞ運命のドレス!」と思えるようなピンとくるドレスには出会えなかった。

これまで着た中から選んでも良いわけだが、一生に一度の結婚式だ。これだ!と即決できるくらい気に入るドレスを着たいという思いが捨てきれず、新たに別のドレスショップにも手を広げることにした。コスト重視の即決庶民花嫁はどこへやら……である。

これまでの試着は全て夫がついてきてくれた。試着する本人も体力が削られるが、同行者も同じく大変である。1回あたり3時間コースで、コロナ禍のためかドレスの安全のためか、特に飲み物も出されない中、着てはカーテンを開けて「オープン!」の繰り返し、毎度感想を求められ、写真をパシャパシャ撮り続ける。

試着についてくる男性は概して全部のドレスに「良いんじゃない」と言い、結果女性が不機嫌になるという話はよく聞くが、夫はそうした男性像の対極にいた。「さっきのドレスの方が良かったと思う」や、「もう少しシンプルなドレスの方が似合うかもしれないね」などと、毎度的確なアドバイスをくれるのだ。いろんな角度から写真を撮ってくれるし、動画まで撮ってくれる。私のドレス選びを自分のことのように真剣に一緒に考えてくれるのだなぁと、結婚式をしないと気がつかなかった夫の素敵な一面をまた知ることができ、このためだけに結婚式にうん百万円を払う価値あるわぁと内心思う私であった。

夫のそうした姿勢にありがたく思いとても嬉しい一方で、なかなかドレスを決められない自分の決断力の無さにますます嫌気が差してきた。3店目はついて来てもらうのも申し訳なく思い、「もう大体自分の好みもわかってきたし、1人で行けるから大丈夫だよ」と申し出た。それでも「1人で行くのは寂しいと思うから一緒に行くよ」と言って、ついてきてくれることになった。試着に1人で来ている女の人がいて、どこか寂しそうに見えたらしく、私にそういう思いをさせたくなかったそうだ。

1人で行けるよと申し出があっても、一緒に行くよと言ってくれる夫の優しさたるや……。政府のお偉い方、彼は日本の宝です。夫が放つ日々の優しさの連鎖がいずれ地球に平和をもたらすかもしれません。ブライダル業界の皆様、夫の言葉集を作って式場の説明会で配りましょう。やる気のない男性方の襟を正すきっかけとなり、結婚式の準備で喧嘩するカップルが減るかもしれません。

私のドレス選びはというと、夫が献身的に協力してくれたおかげで3店目でようやくドレスを決めることができた。そこはInstagramで知った購入専門のインポートドレスのみを扱っているショップだった。レンタルと変わらない価格帯で購入することができた。ドレス選びを始めるまでは、まさか自分がドレスを購入するとは思ってもみなかった。ドレス迷子に陥っている人も数多いと聞く。どうやらドレス選びには魔物が潜んでいるようだ。

余談だが、購入の注意点として、式場がそもそも提携外のドレス持ち込みがOKなのか、持ち込み料にいくらかかるのかを事前に確認しておく必要がある。また、クリーニング代が自分持ちとなるため、それらを含めてトータルコストで考えなければならない。購入のメリットとしては、裾切りを含めた大幅なサイズ直しが可能なこと、人と被らないこと、ご時世で式を延期した場合もドレスを選び直す必要がないこと、式後に1/3〜半額で売れれば、ペイバックがあることなどが挙げられる。売れたら良いけど……。

こうして無事、私のドレス選びが幕を閉じた。これで夫のタキシード選びに移ることができる。夫は何を着ても似合うだろうが、片っ端から着てもらい、写真をたくさん撮りたい。私は終始にやにやしているはずだ。想像するだけで、自分のドレス選びよりも楽しみだ。

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