こまちゃん
ひらがな
こまちゃんは小学校に入ったばかり。身体が小さく何をするのも人より遅い子どもです。まだひらがを知らないので自分の名前が書けません。保育園でお友だちが名前を書いて遊んでいるときは見ているだけです。お友だちに頼むと「こまちゃん」と書いてくれるので、字が書けるってかっこいいなとあこがれます。
早く、早く
こまちゃんの苦手なことはせかされること。「早く支度しなさい」、「早く学校へ行きなさい」、「早く食べなさい」、「早く寝なさい」、「早く、早く」といつも言われるので「早く」という言葉がキライになりました。
「早く」と言われるたびに落ち着かないので、わざとゆっくり動いています。こまちゃんは自分のペースでじっくり動きたいのです。
忘れちゃう
こまちゃんは、頭がすぐいっぱいになります。「あれしなさい。それが終わったらこれしなさい」と一度に言われると、最初に言われたことは覚えていられません。よく、ぼーっとしていると言われます。人の話を聞いていないと怒られるけど、聞いているけど忘れちゃうのです。
給食
こまちゃんが学校で困っているのは給食の時間です。クラスで身体がいちばん小さいので給食を全部食べられません。すぐにお腹がいっぱいになってしまうのです。でも、先生は給食を全部食べ終わらないと外へ遊びに行ってはいけませんと言います。
お友達は給食を食べ終わると、すぐに運動場へ飛び出しドッジボールをするのがブームです。ワーワー楽しそうな声が聞こえると、こまちゃんも遊びたくてたまりません。
こまちゃんはいつも給食を残すので、給食時間の終わりころには先生にじっと見られています。がんばって食べようとしても給食がのどを通らず涙が出そうです。「はぁーっ」
こまちゃんはどうやったらお昼休みにみんなと外で遊べるかを考えました。「そうだ、先生は給食のはじめは自分が食べるのに忙しくて私のことを見ていないから、最初にパン3枚のうち2枚を隠して家に持って帰ろう。おかずはなんとか食べられるから大丈夫」
この作戦は大成功でした。給食が始まるとすぐに、先生に見つからないようにパンをハンカチにささっと包んでランドセルに押し込みます。それからはもう泣きながら給食を食べることはありません。
図書室
こまちゃんは、小学校でひらがなを覚えたので、字が読めて書けるようになりました。うれしくて自分の名前をノートにたくさん書きました。本を読めるようになったのもうれしくて、本が大好きです。図書室というお部屋には本がたくさんあるのでお気に入りです。
こうして、こまちゃんの小学校生活が始まりました。小学校一年生で覚えたのはひらがなとドッジボールにうまくウソをつくことです。
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