ステップはパズル、即興は絵

僕がタンゴを踊り始めて3ヶ月くらいの頃、ある程度初歩的なステップを一通り習って、拙いながらもリードしながら一曲踊りきることができるようになった。


「ペアダンスってパズルみたいだな」と思った。


ステップというピースがあって、それを選択、敷き詰めていくことで「一曲」という一枚の絵が完成するからだ。その時は10個くらいしかステップを知らなかったので、パズルとしてはずいぶん子供向けだ。

そこからさらに半年ほど経った頃、知っているステップは20くらいになった。

それでもまだ子供向けパズルだ。この当時僕は、「なるほど、こうしてステップというピースを増やしていくと、将来はクリスチャン・ラッセンのイルカのやつみたいなきめ細かいパズルが完成するんだな」なんて思っていた。

今はこの頃に比べれば多少マシに踊れるようになったが、それは僕がピースをたくさん獲得したからではない。最近気づいたことだけど、僕が即興で踊れるようになるための練習で今までやってきたこと、そして今まさにやっていることは「ピースを分解すること」だった。

習い始めた時に「一つのステップ」として教わったものは、実は一つのピースではなくていくつかのピースが集まった「ブロック」だったのだ。そのブロックをバラバラにすると、5とか10とかのより小さなピースになった。しかしそのピースも実はまだ分解が可能で、さらに小さなピースになる。


こうしてどんどん分解した先にあるのは、


点、ピクセルだ。


普通ジグソーパズルは、元の絵に戻るように組み立てなければ失敗だ。描かれたものの輪郭はガタガタで、何が書かれているのかわからないピカソみたいになってしまう(ピカソになったらそれはそれでいいけど)でもそのピースを極限まで小さくしてただの「点」になるまでハサミでチョキチョキしたら、組み合わせ次第では、元の絵なんて無視して自由に絵を描くことができるようになる。

もちろんまだ僕はピクセルを手にしていないけど、どんどんピースを分解していって極限までピクセルに近い小さなピースを手にしていきたい。

その先に完成する「絵」は、完全に自分オリジナルの絵になるはずだ。もちろん絵を描くのは、1000ピースのパズルを解くよりもはるかに難しい。好きなように絵を描けるようになるためにはピースを分解し続けなくてはいけないし、無限に存在する組み合わせを適切につなげるのは容易なことではない。


選択と創造の境界は意外と曖昧で、全くのゼロから何かを生み出す事はできないと僕は思っている。けれども選択のその先にある創造の世界、より深い意味での「即興」の世界に少しずつ足を踏み入れている気がしていて、最近の僕は実にワクワクしている。タンゴを初めて二年目でやっと「創造」のフェーズに足の指先が一本触れたくらいだ。どれくらいかかるかわからないけど、いつまでも遊べそうな気がする。

そりゃみんなハマるわ。



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