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優しいふりした偏見

アメリカ人はホームパーティー好きが多いと思う。何かにつけて 家でパーティー、庭でバーベキュー、プールパーティー、などのお誘いが季節を問わず来る(*パンデミック以前の話です)。
そして私は見知らぬ人が参加するパーティーが非常に苦手で、もし一人で参加せねばならないなら多分5回に3回は仮病を使って行かないだろうと思う。

大抵が夫の家族関係のパーティーなので行かねばならず、そんな時は知っている親戚や子供達と話していることも多いが、その家にペットがいるならばその大小を問わず動物につきっきりであまり大人達の会話に加わることはない。

そんな私でも呼ばれたパーティーでは一通り参加者の皆さんに挨拶をするため夫や義両親に連れられるがままにあっちの塊からこっちの塊へ移動しながら紹介される。

何年か前のパーティーで遠い親戚であるという男性とその奥さんに紹介されたときのこと。

義母に “こちら息子のシマオの嫁のシマよ、日本人よ” と紹介され、いつもどおりに “初めまして、シマです”と挨拶した。

その男性はニコニコと “へぇー、日本から来たの?アメリカ生活はどうだい、慣れたかい?”と話しかけてきた。 
ひとつ気になったのは話すスピードが ゆーーーーーーーっくり だったこと。子供用の英語学習教材でもこんなにゆっくりには喋らないというほどSLOWだった。

なので私も ゆーーーーっくりと返事した。“もうこっちに来て20年は経つんで、どうもこうもないですな〜”  
おっさんはまた ゆーーーーっくりと “20年か〜ずーっと東海岸かい?”
私も負けじと ゆーーーーっくりと “いいや〜 大学は西や真ん中でしたよ〜コロラドとかにおりました”

そこまで話しておっさんは普通のスピードで隣のおばさんに話しかけた。
“何でこの子はわたしにゆーーーーーっくり話すんだろうか?僕がアメリカ人とわからないのかな?僕らは流暢な英語を話すnativeなのにねぇ”

それを聞いた私が普通のスピードでおっさんに
“あんたさんがゆっくり話すから私もゆっくりにしたんです〜。普通に喋れるなら最初から普通に喋ってくれたらよかったのに。私はnative ではないけど流暢に喋りますよ” と返すと

おっさんは驚いた様子で ”だって君はアメリカ人じゃないんだろう?“ と またゆーーーーーっくり返した。

おい、おっさん。たった今私が普通のスピードで英語は流暢や、と言ったのを聞いてなかったんかい!

“アメリカ人以外にも英語を流暢に話せる人はいるんですよ、英語を学ぶ外国人も多いですしね”(普通のスピード)

そう説明してから立ち去ろうとした時に、おっさんがおばさんに向かってぶつくさ言っているのが聞こえた。

“なんだよ、アメリカ人みたいな見た目なら最初っから普通に英語で話したのに”

仮にも遠い親戚なのでもう反論はしなかったが、このおっさんにとっての ”アメリカ人みたいな見た目” とは白人と黒人の2択しかなかったんだろうなぁと思う。
ヒスパニックもインド人もネイティブアメリカンも中国人も英語は出来ないか片言だと信じていたのだろう。ゆっくり話すのは優しさかもしれないが、偏見に満ちた優しさだなぁと考えていた。

後ろでおばさんがおっさんをたしなめているのが聞こえた。

“彼女の英語、あなたのより文法も発音も綺麗じゃないの 見た目は関係ないわね〜(大笑い)”

おばさんグッジョブありがとう! おっさん、これからは偏見なしの優しさで接するように!


シマフィー

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