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ちいさいシマリス

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昭和の子供はこんなんでした。
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#子供の頃

世界の始まり、海のある小さな町

宮崎県の青島 ここに住んだのは人生の最初の何年かだけだけど、自宅の周りの風景も学校までの道のりも、ピアノ教室やお寺の幼稚園までの風景もよく覚えている。 不思議なものでこの町を引っ越して、その後高校卒業まで暮らした海から遠い町のことはところどころしか思い出せない。 小さい頃に見たものや食べたもの、経験や感情などは”人生で初”のものだからだろうか、私の記憶の中の青島はとても鮮明だ。その後に似たような経験をしてもそれが何度目かであり繰り返したものであるので強い印象がないのだろ

牛とひまわり

幼稚園に上がった頃、じいちゃんとばあちゃんの家があった敷地内に両親が小さな家を建てた。あまり詳しいことはわからないけれども、多分両親が建てたのではないと思う。まだ20代前半で小さな子(私)がおり、じいちゃんが経営する店で二人とも働いていて一体いくら給料が出ていたのか、それとも出ていなかったのか、わからないが、とにかく一戸建てを建てるような余裕は宮崎の小さな町でもなかっただろう。 裏には草ボーボーの”裏庭”があり、そこを抜けてひと一人通れるくらいの小さな抜け道を通るとちょっと

南国のすごく美味しいもの、ボンタンアメ

ボンタンアメをひとつ握りしめている。 あまり早く食べてしまうともったいない。 でも美味しいので早く食べてしまいたい。 長く手に持っているとオブラートが溶けてしまう。 次のトンネルが来たらこれを口に入れよう。 小学一年の夏、宮崎の田舎から1時間ほど離れた別の田舎まで、土曜日にひとりで汽車に乗っていた。母方のじいちゃんが国語の教師、高校の校長先生を退職したのちに自宅で習字教室を開いており、そこに通っていたからだ。 学校が半ドンで終わると、駅近くにある父方のばあちゃん家で急いで

いやしんごろの田舎の子供

ぐみの実 つわぶき アケビ ヤマモモ ざくろ さくらんぼ 柿 栗 小みかん キンカン びわ サトウキビ ミナ(小さい巻貝) 小エビ 小さい頃にそこらへんの山やら庭やら浜やらで採って食べていたものです。 ぶらぶら帰り道に食べたのもあれば、持って帰って母や祖母に料理してもらったものもあります。 今思えば、昭和の田舎の子供はラッキーでしたね。 ちょっと山を探検したらヤマモモやらアケビがお腹いっぱい食べられるんですから。 おばちゃーん、ちょっとみかん食べていい?と誰かの庭に入れば

主人公はわたし:はてしない世界を追うきっかけをくれた本

大人になると本を読むのが仕事や義務になってしまうことがあり、なかなか自分にピッタリな良書に巡り合うことが少なくなってきますよね。もう長いこと生きていますが(笑)わたしにとってのナンバーワンの本はいまだにもう35年以上前に読んだ はてしない物語 です。 子供時代は本を読むのが好きで、空を見ては木を仰いでは水を弾いては違う世界に迷い込む空想が好きだったわたしにとって はてしない物語 は衝撃でした。 ここでネタバレしてしまうとこれからこの本を初めて読む羨ましい人から、この本を読

人喰い犬の屋敷

かっちゃんとコーちゃんとサムー、3人の男の子が我が家の駐車場に自転車をキュッと止め、大きな声で叫ぶ。 シーーマーーちゃーーーーーん! 私は半ズボンを履いて帽子のあごひもを留め、水筒を斜めにかけて勢いよく飛び出す。 3人の顔を交互に見ると彼らが “俺の後ろに乗れよ”と自転車の荷台をポンポンしてくれる。今日はかっちゃんの後ろにする、かっちゃんは体も大きいしビュンビュン漕げるし、コーナーをぎゅーっと曲がるのもうまいから。 小学校3年生にはちょっと大きすぎる自転車に二人乗りで

鬼とじいちゃんと節分

じいちゃんは、お酒を飲んで気に入らないことがあれば、窓からコップやら小皿やらをパーっと投げ捨てる。そうなるとテレビを見ている私といとこのゆりちゃんは二人で奥の部屋に引っ込まないといけない。子供を怒鳴るわけでもないし、手をあげるわけでもないが、 “もう、こんげなん料理は食わん!” と大きく自己主張する老人は見ているだけで怖い。 ばあちゃんはその日のうちに壊れたコップやら皿を取りにはいかず、次の朝までそのままにしておく。じいちゃんが朝起きて、昨夜と同じ場所に座ってお茶を飲む時に

自分6歳:盗んだお金から何を学んだか

自分が持つお金のことをあまり考えない。というか、あまりお金に執着がないし興味もない。 ポケットにお金を入れたまま忘れるし、1年ほど使っていないハンドバッグから2万円の裸銭を発見することもある。 大きな大人になってからは、現金は必要分ギリギリしか持たず、カードは万一の時にしか出さないようになっている。何かをローンで買うことはない。ありがたいことに夫はやりくりが上手で細かに家計簿をつけ、老後の貯蓄も年金の計算も嬉々としてやってくれるので全部まかせている。 そんなお金に執着ない