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29年前の暑中見舞い

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フリーのカメラマンになって1年目の暑中見舞い。
カメラマンになったら自分の作品も撮ろうと決めていました。
被写体は脚でしたが、スマートな脚ではなく
日本人特有の肉感的な脚を撮りたいと思っていました。
作品として最初に撮った脚の写真と
陶芸用の土の写真を組み合わせて暑中見舞いを作りました。

まだまだ(今でも)外人の細くて長い脚が良いとされていたので
面白いと言ってくれる人もいましたが
なんでこんな脚がいいの、と馬鹿にもされました。
でも仕事じゃない自分の好きな写真を撮りたかったので
何を言われても仕方がありませんでした。

その頃カメラマンの営業も必死にやっていましたが
ある時営業に行ったデザイン事務所のディレクターに
脚の写真を見せたら、秋に事務所でグループ展をやるから
参加してみないかと誘われました。
やってみたいけれど、展示するほど写真がなかったので
急遽脚の作品を撮り足しました。
撮影場所は席を置かせてもらっていた
友人の事務所の屋上や休日に机や椅子を片付けて
なんとか撮影スペースを確保して撮影しました。
当時は脚の写真が撮れるのであればどこででも撮影していました。

グループ展が始まりやっぱり評判は良くないだろうなと
思っていたら意外な反応がありました。
当時ちょっと高級なアートの雑誌の編集長が観に来て
僕の脚の写真で特集ページを組みたいと言われ
二つ返事で引き受けました。
マイナーな脚の写真が少しだけ社会に
認められたような気になりました。

この展覧会をきっかけにして
脚の写真集など形になり始めました。
グループ展に誘ってくれた
デザイン事務所のディレクターと
撮影場所を提供してくれた友人に感謝です。
しかし肝心の撮影の仕事はなかなか順調にはいかず
経済的には苦しい状態が続きました。
バブルは崩壊し脚の写真を
撮っているような場合ではなかったのですが
それでも撮っていたように思います。
こんな暑中見舞いを作っているようでは仕事は来ません。
当然生活費は苦しくなり、毎月脚が出ておりました。

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