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さよなら杉並区〜告知事項ありの物件に4年半住んだ話〜

杉並区にある今の家に引っ越したのは、確か2015年の冬ぐらいだったと思う。
当時、渋谷に所在する編集プロダクションに勤めていたのだが、実家の埼玉から通うのにさすがに無理を感じ、井の頭線1本で通うことができる永福町を引っ越し先に選んだ。
(幼なじみが隣駅の明大前に住んでいたこと、よく行くライブハウスが高円寺寄りにあったこともあり、永福町の立地が非常に都合良かった)

住み始めてから約4年半が経ち、フリーランスに転向してからやや安定してきたこと、また在宅で作業するにあたって今の家が手狭になってきたこともあって、2020年夏、引っ越しを決意した。

ので、この家についての思い出を綴っていこうと思う。

一人暮らし初の物件探しということもあり、何を基準に選べばいいかよくわかっていなかったが、とりあえずそこそこ綺麗で家賃が安ければいいなという思いで目ぼしい物件を漁っていた。
永福町駅近くの不動産屋さんに入り、いくつかの条件を提示し、物件を紹介してもらっていたが、なかなかしっくりくる物件が見つからず(そりゃそうだ、永福町周辺は昔からの高級住宅街ということもあって家賃相場が高い)。
渋い顔をしながら、紹介された間取りをじっくりと眺めていた。
そんな自分と担当さん(以後Aさん)のやりとりを眺めていた不動産屋さんの店長がAさんの後ろを通りかかり、こう言った。
「あれ?Aくん、あの物件は紹介していないの?」
そして少し戸惑ったような表情をするAさん。
「えっ、あの物件紹介していいんですか?」

なんだこの茶番と思い、笑いをこらえるのに必死だった。

「こちら、いわゆる告知事項ありの物件でして…」
と、紹介されたのは、先に薦められた物件と同じ建物の別部屋で、設備等の条件は全く一緒だが、家賃が2万円近くも安いというものだった。
少しでも初期費用は抑えられるに越したことはないと思い、心惹かれた。

候補物件をいくつか案内してもらい、最後にたどりついたのが例の物件。
まずは告知事項なし、正規家賃の部屋に入らせてもらった。
いたって普通だったが、壁紙が柄柄しい感じで、正直うーんという印象だった。

そして次に告知事項ありの部屋に入らせてもらう。
こちらも入ってみた感じ、いたって普通で特に暗い雰囲気も嫌な感じもない。
キッチンのガスコンロが新調されたばかりということ、壁紙もシンプルな白で明るく見えたことから、この物件に住むことに決め、すぐに契約を進めた。

(道中、Aさんが告知事項の内容を説明してくれたのだが、前の前に入居されていたおばあさんが心筋梗塞か何かで、ユニットバスで亡くなってしまっていたそう。連絡がとれなくなった息子さんが心配しすぐに不動産屋さんに連絡、2、3日以内に発見。お祓い、リフォーム済み。間に別の人も住んでいたため、本来は告知事項を伝える義務はないらしいのだが、大家さんの意向で家賃を安く提供している、とのことだった)

ハイローのロケ地が徒歩圏内にあったりとか

入居して数日、特に問題なく過ごしていたが、ユニットバスの水道のしまりが悪く、蛇口をしっかり閉めても水がぽたぽたと垂れてくるのが気になった。
不動産屋さんに相談し、大家さん経由ですぐに業者を手配してもらったものの、業者さん曰く分解してみても水もれの原因がわからなかったとのこと。
で、大家さん負担で水道周りを全部取り替えてもらえることとなり、まるっと新品になった。
それ以後は水もれなしである。

…要因はどうあれ、水回りが新品になった!やった!ラッキー!!と思って過ごした。

ほか、若干、怪奇現象と思われる出来事として挙げると、
・寝付く瞬間にテレビが勝手に点く。年2、3回程度(テレビのタイマー機能の故障の可能性が高いが、留守中にテレビが勝手に点いていたことは一度もない)
・冬、窓ガラスの結露に謎の手形が(その位置に手を置いた心当たりがないし、手形の部分だけきれいに結露がない)
・地元の友人が遊びに来て家に帰った後、生まれて初めて金縛りにあったと聞いた
・退去を決めてから、キッチンの床にカビが生えだした(それだけ今年の梅雨がしつこく長引いてる説もあるが)
ぐらいだろうか。

激務で睡眠時間も少なく体調を崩していた時期、よし、なんとか眠りにつける…、というタイミングでテレビが勝手に点いた時はおいこらまじでふざけんなよと思って心の底からキレた。特に何をするってわけではなかったけど。

でもその後ぐらいからテレビが勝手に点くことは一度もなくなった。
少しだけ寂しくなった。

網戸に張り付いたツタの隙間から入る木漏れ日も好きだった

というわけで実際のところ、告知事項うんぬんによる怪奇現象があったのかどうかはわからないし、こればっかりは気持ちの問題だと思う、個人的には。
とりあえず相場よりはるかに安い家賃で、永福町駅から徒歩10分、近くにコンビニやコインランドリーもある閑静な住宅地に住めたのはありがたかった。

ちなみに2年目の更新時に家賃2000円上がった。
それにしても他の部屋より安かったが。

毎年この時期になると窓ガラスに張り付いているヤモリ

夏には網戸にツタが茂り(茂りすぎると大家さん夫妻が定期的に草むしりしてくれる)、たまにテラスの外を猫が通っていき。
鳥の鳴き声を聞きながら目を覚ましたり、友達が宅飲みしに来てくれたり、途中、隣に引っ越してきたファミリーが引っ越し挨拶にお菓子をくれたり(朝お会いするとお父さんが「いってらっしゃい」と言ってくれたのが嬉しかった)。
仕事で1ヶ月不在にしており、帰って来たら家のドアが急にど派手なオレンジ色に塗られていたのもいい思い出である。
上階に大家さん一家が住んでいたため、万が一何かあったら助けてもえらえるという安心感もあり、この4年半特に不自由なく暮らすことができた。

次の入居者さんもどうか幸せに楽しく暮らしてくれたらいいなと思う。

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