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かつ江さんからの手紙

事務所にピンク色の封筒が届いた。
中を開けて見るとかつ江さんからの手紙だった。(笑)

10年前、鳥取市が鳥取城のマスコットキャラクターの公募を行い、応募した高藤さんが制作した「かつ江さん」からである。

戦国時代の戦さのイノベーション

無双の天才軍師、黒田官兵衛の発明的兵法と言ってもいい鳥取城の兵糧攻め。通称「鳥取の飢え殺し」。

兵たちが斬り合って死ぬこともなければ、大変な損害を与えてしまうように町を焼き払うこともなければ、合戦で田畑を荒らすこともない。

ただ、城下の人々を狭い堀内の城内に囲い込み食料を断つことによって敵を消耗させ降伏させる。

秀吉と官兵衛は前の年から米を買い占め相場を操作し、買い占めた米を高値で売り、猛烈に稼いだともいう。

古典的ないくさ場での殺し合いからほとんど全く血をながさずに領地を奪い取るという、ある意味でとんでもなくイノベーティブな超近代的戦法を編み出した。もちろん最後は城主の切腹によって恭順の意を示すわけだけど。

生まれながらの旧来型の武士であれば、そんなのは戦さではない。と聞き入れなかったかもしれない。しかしそこは飛ぶ鳥を落とす勢いの新進気鋭の信長軍団にあってさらに農民の出の超リアリストの秀吉であるから、自軍の損害がゼロどころか、敵地の田畑も城下町も城も全く痛めず手に入り、かつ米を売って稼ぐことができるとは、なんという新しい戦い方だ!と嬉々として採用し実行しただろうと思う。そしてそれが、戦さでありながら経済なところが秀吉の真骨頂である。

鳥取城には、前任の織田方になびきがちな城主を廃して、吉川経家という新しい城主が着任していた。たった数ヶ月の在任で兵糧攻めにあい城下の人々を守るために切腹して果てた。ちくしょう、秀吉なんかにという思いだっただろう。その無念たるやいかばかりか。

城下の人々は鳥取城に追い込まれ守られたと思ったところに待っていたのは壮絶な飢えである。きっとかつ江さんのように生き延びて子を産み育て、鳥取城の兵糧攻めの「飢え殺し」を後世に語り継いだ人たちもいただろう。

10年経った今こそ丁寧に説明を

10年前に公開された直後に市民からの苦情により炎上したためわずか数日で公開中止に追い込まれた、鳥取城のマスコットキャラクターである「かつ江さん」

念のため申し上げておくが、かつ江さんはゆるキャラではない。間違いなきように。

作者の高藤さんは、鳥取城と鳥取城の歴史に対して市民と全国の人たちに関心を持ってもらおうとかつ江さんをデザインした。

上に書いたような戦国の、日本全国で戦いの絶えない時代に彗星の如く現れた織田信長と家臣団、その急先鋒である羽柴秀吉。本能寺の変に至る過程で起きた鳥取城攻めとその凄惨さ、だけどその手法の斬新さや、吉川経家の武人らしさ。

そう言った一連の歴史の繋がりを、僕は「かつ江さん」をきっかけに「かつ江さん」を通して知った。

その全てをかつ江さんは身に纏って現代の僕らの前に登場したのである。みんなその存在の崇高さがわからないのかな?笑

歴史にふれて学ぶことは、今の時代を生きる僕たちが、今起きていることに対する関心や想像力を膨らませるためだ。

鳥取市の当時の対応を責める気はないのだけど、今ここで、丁寧に説明してはどうだろうと思う。自分たちの歴史とルーツを大切にして、未来を切り拓くためにも、かつ江さんは大切な存在だと思う。

かつ江さん、10周年おめでとう。

そしてありがとう!

かつ江さんステッカー
かつ江さんからの手紙

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