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第三章 人間の顔とは何か?-001


私たちにとっての顔とは

現代社会を生きる私たちにとって、
顔とはなくてはならない存在です。

しかし、それはなぜなのでしょうか?

2020年に新型感染症という、一つの社会現象が到来しました。
世界中の国民はパンデミックを拡大させないために、
一斉にマスクを着用し始めました。
このことによって私たちはなぜか?顔という存在に、
強い意識を抱くようになりました。

なぜなら、マスクを着用すると、
コミュニケーションの取りにくさを感じたからです。

コミュニケーションとは?

なぜこのような不便な気持ちを生じるのか?
は、まったくの謎でした。

このことに追い討ちをかけるように、
国内での移動制限が始まりました。
感染の拡大を、これ以上広げたくなかったためです。

毎日会っていた仕事仲間や友人との対面は突然と遮断され、
その置き換えとして、デジタル上でのコミュニケーションを
取り始めました。

すると、ある社会人は寂しげに、このようにこぼしました。
何げない会話ができなくなった」と。

何げないとは?

この後、積極的にデジタル社会を受け入れ始めた人たちからは、
「新たなる戸惑いを感じる」との吐露を耳にするようになりました。

「デジタル上で顔を読み取ろうとすると、なぜか?違和感を感じる」と
感想を述べたのです。

いまだかつてない便利な環境を整えたはずなのです。
なぜこのような感覚を生じるのか?
についての疑問を、専門家はこのように述べました。

デジタル機器を通したコミュニケーションでは、
五感の中の視覚と聴覚の2つにしか頼ることができません
」と。

私たちがアナログの世界でどのように五感を使っていたのか?
に、気づけたのです。

 

口の持つ意味

目は口ほどにものを言う」と言います。
そうではないことが、この社会現象を通して明らかとなりました。

人間の目は、口と同様に表情筋の発達した箇所として知られています。
他の動物と比べると眼裂は横長で、
目の白い部分(強膜)の面積を大きくすることによって、
目の動きをあからさまにしました。

この変化によって何を生み出したのか?と申せば、
互いの脳に入り込み、相手の意図を読み取り、
こちらの意図を伝えるという意思の疎通をしやすくする仕組みを
編み出したのです。*1

これに対し、パンダの目をご覧ください。
目の周りに黒い輪のようなものがあるのは、
目をどこに向けているのかさえもわかりにくくするための
カモフラージュとなっているのです。

私たちは目の前の情報を五感からキャッチして、その情報を脳に上げ、そのことによって脳が動き、そしてこころを動かす動物です。
脳に情報を送り込まなければ、こころは動かないのです。
(このプロセスは重要です) 

移動制限が解除されると、舞台俳優は感染症対策のためにマスクを着用して演技を開始しました。すると観客は表情が読めないと、クレームを噴出させたそうです。

このことによって、観客は役者の口の動きから役どころの細かな表情を読み取り、そのことによって心をふるわせることを楽しみに、
わざわざ高いお金を払って来場していることが分かる化したのです。
(俳優から聞いた話です。)

幼稚園の先生がマスクを着用して、子どもたちとコミュニケーションを取り始めると、子どもたちの学習能力の低下に気づきました。
このことにより、子どもたちは先生の口元から学びを得ていることが明らかとなったのです。
(マスコミが報じていました)

新型感染症絡みのこれらの社会実験とも言える現象は、
人間のコミュニケーションがどこを起点として発しているのか?について、クローズアップさせることになったと言えましょう。

さて、マスクによってカバーされた顔の下3分の2の機能について、
もう少し深い吟味をしていきたいと思います。

*1 A. Whiten. The evolution of deep social mind in humans in the Descent of Mind Psychological Perspective on Hominid Evolution. eds. Michael Corballis and Stephen E. G. Les. Oxford: Oxford University Press.(1999) 173-193


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