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【専従者給与】専業主婦(夫)の配偶者がいるフリーランスの節税策


はじめに

こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

最近では共働き世帯が多くなってきました。

とはいえ、子育てや介護など、様々な事情があって夫婦のどちらかが一家の大黒柱になっているご家庭もまだまだあります。

そして、起業しやすくなっているというのもあってか、その大黒柱が会社員ではなく、フリーランスとして一家の家計を支えているご家庭もたくさんあるでしょう。

この場合、配偶者が専業主婦(夫)で仕事を一緒に手伝ってくれる条件が整えば、一定の要件を満たすことで節税することができます

今回は、そのようなご事情があるフリーランスの方々が適用できる「専従者給与」という節税方法を解説していきます。

専従者給与の概要

対象になる人

専従者給与の正式名称は、青色事業専従者給与といいます。

対象になる方は、次の全ての条件に当てはまるフリーランスです。

  • 青色申告をする個人事業主(事業所得者)であること(法人ではない)

  • 妻、もしくは夫のどちらかが、基本的に専業主婦(夫)であること(他社の正社員やパートがメインの仕事ではないこと)

  • 専業主婦(夫)が個人事業主である夫(妻)の仕事に従事していること

簡単に言うと、専業主婦(夫)が事業のお手伝いをしていて、その労働の対価として給与を出したら、それを事業の経費にしていいですよ、という制度です。

というのも、個人事業主のフリーランスが対象になる所得税法という法律は、家族に支払った給与として認めません、というスタンスをとっています

なぜなら、夫婦で財布は一緒なので、変な話、夫婦間の資金移動を認めてしまえばどれだけでも経費にできてしまうからです。

経費が膨れ上がると税金を安くすませることができるので、これを防ぐために上記のようなスタンスがとられています。

ただ、勤務の実態があるのに給与を支払っても経費として認めなかったら、それもそれで不公平です。

そこで、以下の要件を満たす配偶者への給与であれば、その給与を経費としてもOKですよ、というのが青色事業専従者給与です。

  1. 青色申告をする個人事業主と生計が同じである配偶者

  2. 年の半分(6か月)超事業に従事している配偶者(一年丸ごと事業をしていない場合は、している期間の半分超)

ちなみに、この青色事業専従者給与は、配偶者以外で生計が同じ親族でも適用できますが、その場合は、その年の12月31日時点で15歳以上である親族が対象になります。

必要手続

青色申告承認申請書を提出する

先ほど説明したとおり、青色専従者給与の適用は、青色申告をしている事業者に限られます。

青色申告とは、簡単に言ってしまえば、正確な会計帳簿を記録することを税務署と約束することで、諸々の優遇を受けられる制度です。

そのひとつが青色事業専従者給与ということです。

なので、そもそも青色申告を選択する青色申告承認申請書を税務署に提出しておかなければいけません。

ここで注意点。

青色申告承認申請書は提出期限があり、基本的に、事業を始めてから2か月以内に提出する必要があります。

給与を配偶者に払いたいけど青色申告承認申請書を提出していなかったから青色事業専従者給与の適用を受けられなかった、ということがないようにしましょう。

青色事業専従者給与に関する届出書を提出する

そして、青色事業専従者給与そのものにも届出があります。

この届出の提出期限も基本的に2か月以内です。

この届出には
・配偶者の業務内容
・配偶者へ支払う給料

などを記載する欄があります。

つまり、これらは提出する前に事前に決めておかなければいけない、ということです。

3つの注意点

①配偶者に所得税がかかる可能性がある

青色事業専従者給与の制度を使って配偶者に給与を支払う場合は、その給与に対して、通常の社員と同様に所得税を源泉徴収する必要性が出てきます。

いっぽうで、払う給与は世帯主であるフリーランスの経費になります。

なので、

青色事業専従者給与による減税>配偶者から徴収する所得税

が成立するように配偶者に支払う給与の額を決める必要があります。

②配偶者控除が適用できなくなる

配偶者に青色事業専従者給与を支払うと、配偶者控除や配偶者特別控除(以下、まとめて「配偶者控除」。)が適用できなくなります。

配偶者控除とは、低い所得の配偶者(例:専業主婦やパート主婦)がいる場合に、世帯主であるフリーランスの所得税や住民税を抑えられる制度です。

配偶者控除の控除枠は最大38万円ですが、世帯主の所得や配偶者の所得で変動します。

世帯主が青色事業専従者給与で節税を図る場合は、この配偶者控除以上の青色事業専従者給与を支払い、経費算入しなければいけません

③適正な金額までしか認められない

「え、じゃあいくらでも配偶者に給与を払ってもいいの?」

「所得が3,000万円くらい出そうだったら、3,000万円配偶者に払っちゃえばよくない?」

という思考が働く方もいるかもしれませんが、それは認められません。

それを認めてしまうと、いくらでも恣意的に税金を減らすことが可能なので、客観的に「それくらいが妥当だよね」という水準までしか、青色事業専従者給与として経費にすることはできないのです。

ただこれも、配偶者の業務の内容や従事期間などで適正額は変わってくるので、ここまでは認められる、という正解はありません。

同じような条件での求人の待遇と同程度であれば、特に問題になることはないでしょう。

ざっくり節税シミュレーション

たとえば、配偶者に時給1,500円で一日8時間、週3回勤務で1年間働いてもらって、年間1,728,000円の青色事業専従者給与を出すと仮定します。

フリーランスである夫の所得は年間500万円としましょうか。

そうすると、青色事業専従者給与を出す前の所得税と住民税は1,072,500円になります。

そして、仮に青色事業専従者給与を1,728,000円出すと、夫と妻の所得税と住民税は766,620円になります。

つまり、節税額は305,880円ということになります。

※計算の考え方
・夫の各種所得控除後の課税所得を500万円とし、所得税住民税を計算
・これと、青色事業専従者給与による所得圧縮、配偶者控除の不適用を考慮した夫の所得税住民税と、給与を受け取った妻の所得税住民税の合計を計算
・上記2つの差額を節税額として算定
・なお、全く他の条件やそれに伴う影響は全く考慮していないことにご留意ください。

確定申告でやること

青色事業専従者給与を支払ったら、その事実を記帳し、確定申告書に添付する青色申告決算書に記載しましょう。

たとえば、Freeeであればこのような手順が案内されています。

とはいえ、確定申告で適用するにあたっては、

  • 配偶者が事業を手伝っているという事実をつくる

  • 上記の必要手続を行う

ことが必要になります。

実際に適用を受けるにあたって不明点があればLINEでお問い合わせいただければと思います。

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