見出し画像

067.読書日記/懐かしの斉藤美奈子さん

図書館のミニコーナー(お薦めコーナー?)で、斉藤美奈子さんの「出世と恋愛 近代文学で読む男と女」(講談社現代新書 2023年)を見つけた。フェミニズム系の文芸評論家さんで一時期よく読んでいました。しかも本屋さんで買って読んでいたのだ!

上野千鶴子さんや小倉千加子さんの本も読んでたけど、斎藤美奈子さんは怖そうなオバサンじゃなく、フェミニズムの視点を持った書評で、日頃モヤモヤしているところをぶった斬ってくれるオネーサン的な受け止めであった。
「妊娠小説」から始まって「あほらし屋の鐘が鳴る」とか「モダンガール論」「文章読本さん江」「趣味は読書」「物はいいよう」「誤読日記」等々。2005年くらいまでは熱心に読んでて(wikiで確認した)、その頃私は転職して、仕事の資料探しに東梅田のブックファーストに行ったついでに文芸書コーナーをチェックして新刊が出てたら買う、みたいな感じになった。

少し脱線すると、東梅田のブックファースト(正確な場所の記憶はもう定かでないけど、梅田の地下の丹青堂の近く、ディアモールらへんの奥の、雑居ビルのワンフロアかツーフロアが本屋になっていたような)は、私の一番のお気に入りの書店だった。広すぎず狭すぎず、ビジネス街にあるので、デザインやマーケティングの本が充実していて、本を探すのが楽しかった。確か5,000円以上買い物すると、店内のコーヒーショップのチケットが一枚もらえた。この書店で本を買うのを楽しみにしていたので、なくなった時はショックでショックでたまらなかった。
それからは梅田の紀伊國屋や丸善ジュンク堂を利用しているが、あまり本は買わなくなって、2010年くらいから斉藤美奈子さんの本も見かけなくなって遠ざかっていたように思う。だから15年ぶりくらいなのだ。懐かしい。

さらに脱線すると「サイトウミナコ」と言えば、私世代では「ミス ミナコ サイトウ」であった。「超一流主義」とか、ハイソを売りに、アッパーなお暮らしを啓蒙される、叶姉妹のようなインパクトのある方で、女性誌に掲載されているのをいつも半笑いで眺めていたのだ。新潟県出身のフェミ系文芸評論家が、そのヨーロピアン・ハイライフの方と同姓同名(字はちょっと違うけど)というのが少しイジワル気分もありつつなんか面白く感じた。ところが、驚いたことにミス ミナコ サイトウは若くして病死され、「『サイトウミナコ』といえば誰!?」という戦いを続けることはなくなった。

早くに亡くなられて残念だった。

で、「出世と恋愛」だ。新書で軽めの内容。近代文学の悩める若者はなぜ告白できずに振られるのか、なぜ相思相愛の女は死んでしまうのか?をかなり古臭い小説を俎上に乗せて読み解く。この本に出てくる小説は、なんだか美術史の黒田清輝の「湖畔」的なものばかりじゃないかな。教養として作者・タイトル・あらすじは知っているけど、本として面白いものじゃない。もっと今流行っている本を、どんどん読んでぶった斬ってくれたらいいのに…と少し物足りなく感じたのだけど、よく考えると、今そんなに売れてる本も話題の本もないし、部数少ない本の書評はさらに売れなさそうだし、それで多くの人がよく知っている(タイトルだけでも)本を論ずることにしたのかな。

2015年頃から本も出されているようなので、図書館で蔵書検索して予約してみた(無職ですので買えなくてすみません)。また楽しい読書体験ができたらいいな。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?