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025.読書日記/ミステリー専門書店店主が主人公「8つの完璧な殺人」

「あなたが10年ほど前に書店のブログに書いた<完璧なる殺人8選>に沿って連続殺人が行われている」FBI特別捜査官グウェン・マルヴィに、ミステリー専門書店の店主マルコム・カーショーがそう告げられるところから物語は始まる。その8つのミステリは以下の通り。

『赤い館の秘密』A・Aミルン
『殺意』フランシス・アイルズ
『ABC殺人事件』アガサ・クリスティ
『殺人保険』ジェイムズ・M・ケイン
『見知らぬ乗客』パトリシア・ハイスミス
『The Drowner』(邦訳なし)ジョン・D・マクドナルド
『死の罠』アイラ・レヴィン
『シークレット・ヒストリー』ドナ・タート

読んだことがあるのは、『ABC殺人事件』だけだったけど、あらすじの紹介もあるし、本を読み進めるのに支障はなかったです。他にも知っている作家、知らない作家の名前や本がどんどん出てくる(知ってる名前が出てくるとうれしい)。マルコムと奥さんの初デートがルース・レンデルのトークショーとか面白い。あとがきによると、著者は元書店員だったそうで、書店の仕事やクセの強い常連客の記述は実体験からきてるのかも?
いろいろと好きになれそうな要素はあったけど、小説は全体的に暗くて一体どうなるのか、という不安と緊張がずっと続いていて楽しめなかった。もう少し明るくユーモアも感じられるシーンも織り込まれている方が私の好み。→この本では仕方なかったとは思うけど。

アンソニー・ホロヴィッツや「木曜殺人クラブ」のシリーズみたいに、ミステリファンを喜ばせて、楽しく読める方が好きだ。…好きだけれど、過去ミステリに言及するこの手の本、最近増えてます?少し内輪受け的にも取れるかも。本を買う人が減って、新規読者を開拓するよりミステリマニア(既存顧客)を喜ばせて、ガッチリ引きつけておこうっていう魂胆なのかも!と思ったり、この「8つの完璧な殺人」のように、本に出てくる作品を読んでいなくても小説として読めて、かつミステリガイドとしても成り立つやん、と思ったり。
あとがきによるとアガサ・クリスティを意識した作品が相次いで発表されてて、これは世界的風潮だそうだ。クリスティ、どんどん古典化してますね。

ミステリー専門書店が近くにあったらいいだろうな。一時期、ピエール・ルメートルにハマって、2015年の私のベストワンは「天国でまた会おう」だった。その年か翌年かに来日されて、書店でサイン会があったことを後から知って、東京はなんて羨ましいんじゃ!と悔しかった記憶。フランス語なんてさっぱりわからないし、ピエール先生に感想を言ったりできないけど、ホンモノの本人の存在を確認したかった。
東京出張の時は、よくオアゾの丸善を利用してて、店内イベントの多さに驚いた。本屋さんって、本を買うだけじゃないんだ、と。いつも誰かしら来てサイン会や講演会が行われてたり、ちょっとした展示があったりしてた。ちょっとタワレコみたい。そんな本屋さんが近くにあって、スタッフさんにマークされる常連客になれたら面白いかも。

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