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盗みと殺しの境界について

物騒なタイトルですいませんが、以下は事実に基づく話です。

昔、おばさんの家が泥棒に入られました。

大変だ!ということで行ってみると、部屋のカーペットの上には生々しい土の靴跡が残っていました。そうか、泥棒は靴を脱いで入らないんだ、と妙なことに感心した記憶があります。

幸いなことに、盗まれた物はカセットテープレコーダーひとつだけ。おばさんはあまり経済的に豊かでなかったこともあって室内に金目の物はなく、あちこちに残された荒々しい靴跡が「チェッ、何もねえのかよ!」と泥棒の苛立ちを物語っているようでした。

侵入経路は、1階の窓。

シングルマザーとして働いていたおばさんは、まだ小さい子ども(いとこ)に鍵を預けるのが不安なため、いとこが帰ってきたら窓から入るよう窓の鍵を開けておいたのです。おそらく泥棒は、いとこが窓から入るのを見かけたことがあり、おばさんが出かけ、いとこが帰る前の時間を見計らって侵入したのです。

不幸中の幸いは、泥棒がいとこと鉢合わせしなかったこと。もし、鉢合わせしていたら、ただの空き巣が強盗となり、いとこの命も危うかったかもしれません。

実際、誰もいないと思って侵入したところ、住人がいたため殺してしまったという事件が、私の住む地域で発生して強いショックを受けました。

その事件の犯人は、1ヶ月以上前から念入りにターゲットの行動パターンを調べ、犯行当日も8時間前から付近に潜伏。30分〜1時間おきに部屋の明かりを確認し、不在を確信してから未明に侵入。

ところが、住人はベッドの上でおびえた表情で、声も出せずに見つめていた。あわてた犯人は、フェイスガードやニット帽などで顔を隠していたにも関わらず、とっさに飛びかかって首を絞めて殺したというのです。

計画的な犯行であり、犯人に同情の余地はないのですが、もし被害者が不在だったら。犯人の目的はあくまで金品狙いであり、殺すつもりなどなかったけれど、パニックになってつい手が出てしまった。

犯人の行為は決して許されるものではありませんが、被害者の方がたとえ在宅だったとしても、ぐっすり眠っていたり、別室にいたりして犯人の侵入に気づかなければ、殺されることまではなかったのではないか……との思いが拭えません。

盗みと殺しの境界は、私たちが想像するより、意外と低いのかもしれません。

人間だれだって、もちろん私だって、間が悪かったり、もののはずみで衝動的に行動してしまうことはあります。

ただ、盗みや殺人は日常生活の延長上にあるものではなく、明らかに異次元の行為。「まさか、自分に限って、そのような行為は絶対にしない!」と考えがちですが、ふとしたことがきっかけで転落する可能性は否定できません。

では、そのような事態を防ぐため、私たちは何ができるのでしょうか?

ふだんから、正しい倫理観を強く保っていれば防げるのでしょうか?それはとても大事なことですが、それだけではないようにも思います。

今、答えはわかりませんが、これからも考え続けていきたいと思います。

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