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群馬に行ったら、おばあちゃんと。

お盆休みや冬休み。
長い休みになると、父の運転で半日〜1日ほどかけて群馬のおばあちゃん家に遊びに行っていた。

滞在中、両親2人で出かけることも多く、その間1人になる孫をおばあちゃんは映画館に連れて行ってくれた。当時一緒に観たのは、話題のジブリ作品やハリー・ポッターシリーズだったと記憶している。

正直いうと、映画の内容についてはあまり覚えていない。
それよりもおばあちゃんがチケットを渡してくれたこととか、私の好きな味のポップコーンを買ってくれたこととか、その時のおばあちゃんの笑顔が眩しかったことの方が鮮明に覚えている。

おばあちゃんはいつも優しい。
同世代の中でも特に小さかった私は、当時身長120センチくらいだろうか。160センチのおばあちゃんは同年代の中でも比較的大きい方だと思う。かなり腰を低くして、「〇〇ちゃん」と満面の笑みで名前を呼んでくれた。

大きくなってからは、おばあちゃんと映画館に行くことは無くなった。映画館よりもお買い物に行くことの方が楽しい年頃だったのかもしれない。

今もあの映画館はあるんだろうか。
もう20年ほど前だし、おばあちゃんの車に乗ってついて行っただけだから場所も曖昧。今ある映画館を見ても、思い出せない。

どんな入口だったか、どんな席だったか、広さは?
どれもわからない。

私の視界は、おばあちゃんの笑顔とポップコーンでいっぱいだった。映画はもちろん面白かったけど、何より大好きなおばあちゃんを独り占めしているこの時間がすきだった。

今、おばあちゃんはお家にいない。
キレイな建物で、同年代のお友達に囲まれて暮らしている。そこでは美味しいご飯がたくさん出てきて、たくさん優しくしてもらえるらしい。

私はお休みが合えば、時々おばあちゃんに会いに行く。
もう名前で呼んでくれることはないし、距離をあけて少しお話しするか、遠くから見守ることしかできない。

それでも唯一、あの笑顔だけは変わらない。
優しい笑顔でこちらに手を振ってくれる。寒いから中に入りなって言ってくれる。

「映画館行った時のこと覚えてる?」
なんて今話しても、きっと困った顔をさせてしまうだろう。そんな困った顔をされるより、笑顔で楽しそうにしてくれていたらそれでいい。それが一番いい。

おばあちゃんが思い出せなくたって、私はちゃんと覚えているから。
案外、おばあちゃんの方がちゃんと映画の内容覚えていて記憶の合わせっこができるかもね。

おばあちゃんには、もう2人孫がいる。
2人とも私より結構年下だから、孫1人だった期間は長い。

だからあの映画館での笑顔のおばあちゃんは私だけのもの。
独り占めできる、私だけの思い出。

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