プロット 先行公開 第1話 目覚め リリカルなのは Numbers
第1部 目覚め
少女は夢を見ていた。幼い頃の夢だ。
姉と共に父に会うために父の勤め先がある街に飛行機でやってきて、着いた先の空港で姉とはぐれてしまった、そして事件に巻き込まれた。
火事だ、空港を一気に覆いつくすほどの大火災。気づけば周りにはだれもおらず少女は一人炎の中に取り残されていた。(この記憶の中の風景はなぜかモノクロだった)
薄くなっていく酸素。迫りくる炎の熱。鼻につく煙や何かが焼ける臭い。少女はただ泣くことしかできなかった。思わず呟く「助けて…..お姉ちゃん!」その時、彼女のづ上で大きな音がした。顔を上げる、その時目に映ったのは自分の側に倒れてくる彼女がさまよっていたメインフロアに飾られていた巨大女神の石像だった。
自分が石像に押しつぶされる寸前、彼女は目覚めた。そして、直後に安堵する間もなくパニックになる。自分が何やら液体で満たされた水槽のようなものに入れられているのに気付いたからだ。
「ここから出して!」と力いっぱい水槽のガラスをたたく。思いの外あっさりと割れて脱出できたが、直後に呼吸を整える間もなく警報が鳴った。
水槽から飛び出した彼女の様子は監視カメラにより別の部屋から見られていた。モニターの前に座るウルフグレーのBDUに髑髏マークの腕章をつけた男たちが無線で状況を報告。
「緊急事態発生!実験体Number9が勝手に起動しました」
通信機越しの指示
『慌てるな!所定の緊急事態マニュアルに則り対応しろ』
「了解」
モニターを見ていた一人がコンソールのボタンを押した。
そんなやり取りの最中、当の少女は部屋で、磨きあげられた金属の壁を鏡の代わりに自分の姿を見て思い返していた。自分が誰なのかを…….。
鏡に映った自分、深紅のショートカットに金色の瞳。そして、身体のラインがくっきりと見える青いボディスーツ。手の甲や肩、腰、脛にプロテクターらしきものがあることから戦闘服と判断。見ているとなんだか恥ずかしい気がする。何故かわからないがどうにも一般的な服装とはかけ離れているように思えた。そこまで考えて自分がいったい誰なのかわからないことに気づく。落ち着いて自分の名前を思い出してみる。
私の名前…..名前……。たしか…..『ノーヴェ』?
ダメだ、それしか思い出せない。でも、記憶にうっすらとしたものがある自分には家族がいたというあいまいな記憶が….。最後にあったのはいつだろう?
何とか思い出そうとしている時、どこからか、声が聴こえてきた。
『そこから逃げて』
誰だ!?周囲を見回してみるが姿はない。声色からして少なくとも女の様だった、それも自分より年下の。
第2部 脱出
直後、閉じられていたドアが左右に開かれ奇妙な機械が現れた。円筒状全長2~3mの外装に一つ目のようなカメラらしきものがその真ん中にある。自分のスーツ同様に青い塗装がされていた。全部で5体ほどが縦列でさらにその間をダークグレーの戦闘服を着た兵士ー黒いヘルメット(PASGT)に灰色のBDU、その上に同色の防弾ベスト、黒いコンバットブーツ、脚のホルスターに拳銃、手にはプルパップ自動小銃(Norinco Type-95)ーたちが固めている。部屋に入ってくると、ノーヴェを壁際に追い詰めるように半円状に包囲した。
「(何だコイツら!?ロボット?)」
機械たちの間を挟むようにその二倍の数の兵士たちが銃を構え、無警告に発砲した。
手にした95式が一斉に火を噴いた。
至近距離で撃ったこともあり全弾が命中。ノーヴェの身体には激しい痛みが走った。しかし、彼女の身体に銃創は見られなかった。
その場に蹲(うずくま)るノーヴェ。
次の瞬間、機械たちの側面が開き赤い電気コードを太くしたような触手を展開した。
機械たちはその触手を伸ばし瞬く間にノーヴェを拘束し、締め上げた。
赤いコードに絡み取られ身動きが取れないノーヴェに、追い打ちとしてデッキショックが加えられる。悶絶し、意識がもうろうとするノーヴェにマシン達の後ろで控えていた兵士数人が近づいた、兵士の一人が注射器らしきものを取り出し絡めとられたノーヴェに近づく。
もうろうろする意識の中、再び声が聴こえた。
『早く逃げてって、言ったでしょ?』 こちらの苦労などお構いなしといった調子に危機的状況ながらもノーヴェは切れた。
「(ふざけんな!この状況でどうしろってんだ!?)」
しかし、《声》は冷静な調子を崩さず淡々と続けた。
『あなたの力なら振り切れるはずよ......』
そんな馬鹿な、と思いつつもこのままではまずいのでダメもと/ヤケクソに力を込めてみる。すると、体の奥底から力が湧き起こるように腕に力がこもり体を拘束していたコードを力任せにブチブチと引きちぎった。
それからは夢中だった、触手の拘束を解き着地するとすかさず目の前にいた機械に鉄拳を一発。拳はカプセルのようなボディを貫き大穴を開けた。すぐに拳を引き抜き、その隣にいたヤツにさらに一発。背後から来た奴に後ろ回し蹴り、残り二体も片づける。
続いて兵士たちが発砲。咄嗟に両手を交差させて顔をかばう。5.8mm弾が身体に当り先ほどと同じく激しい痛みが来るが、兵士たちは銃弾を撃ち尽くして呆然とした。身体に一発も銃弾がめり込んでいないのだ。再装填前にねーヴェはとびかかり兵士たちを昏倒させた。その動きは無駄が無く、彼女は倒した後に自分が戦い方を知っていることに気付き驚いた。
『言ったでしょ、貴方なら出来るって』
ノーヴェはその〈声〉をただ茫然と聞くしかなかった。先ほどマシンを粉砕し、そして兵士たちを殴殺した自分の手を見て戸惑うのみ。
何だこの力は!?
どうして私は撃たれても平気なんだ!?
どうして戦い方を知っている!?
戸惑う彼女に対し、声の主は続けた。
『戸惑ってる暇はないわ!そこにある装備を身に着けてそこから早く逃げて。誘導する』
彼女の指示で、自分が入れられていたカプセルの隣にあるコンテナから機械仕掛けのローラーシューズと歯車のような部品が付いたガンレット。祖rを言われた通り身に着ける。ローラーシューズは自分の考えた通り動くようで以前から知っていた通り自分の体の一部として動かせた。
指示通りに部屋を出て通路を走っていると再び灰色の戦闘服に黒いヘルメットの兵士たちと出くわした。先ほどより数が多い。突破しようとすると再び〈声〉の指示。
『その上に大きめの換気口があるわ。跳んで』
言われた通りに跳躍。換気口に入った。兵士たちがノーヴェを追うように発砲。人が一人入れる分に大きい空間にしたから穴が開き次々と光が差す。
ノーヴェはそれから逃げるように姿勢を低くして動き、途中で横穴を見つけ、体を滑らせる。しかし、滑り降りた先は奈落の底に通じていた。落ちそうになり咄嗟にふちにつかまるが、どうやらそこは施設の廃熱口だったらしい。
熱風、というよりすさまじい火炎が押し寄せ彼女はそのまま地上へと吹き飛ばされることとなった。
廃熱孔から押し出されたノーヴェ、吹き飛ばされて地面にたたきつけられるも、服も体も本来なら大やけどどころか燃えカスになってもおかしくないにもかかわらず、なんともなかった。
「うう....」
何とかして起き上がり、周囲を見渡してみる。
見る限りの無人の荒野だった。
「ここは一体?」
直後にけたたましいキャタピラとエンジンの音。
音がした方向を見てみると黒塗りの四角い車体に前方がやや傾斜したNorincoのVT-4戦車が8両、こちらに迫っていた。
「戦車⁉︎」
第3部 私の力
その時、頭の中にさっきの少女の声とは雑音混じりの声が響いた。
『実験体No.9を発見した!』
『反乱に加わるつもりか⁉︎そうはさせん!』
思わず耳を押さえる。
「何だこの声?さっきのと違う」
『あなたの体内にある無線通信機が周囲の交信を無差別に拾ってるのよ』
ここまで自分を誘導してくれていた少女の声が戻った。
「通信機?体内に?」
『みんなあなたのことを話してる。人気者なんだね』
「ふざけんなっ!」
直後に戦車のうち1台が125mm砲を発射した。
榴弾が炸裂し吹き飛ばされるノーヴェ、
「うわぁぁっ!」
しかし、彼女の身体はバラバラになるどころかその服にも傷一つなかった。
空中で体制を立て直すとローラーシューズを履いた足で器用にも着地する。
改めて戦車群を見た。数えただけでも10両以上。轟音と砂塵をたてて迫り来る。
そのうちの一台が砲塔の同軸機銃を発砲。無数の7.62ミリ弾が地面を走り弾着がノーヴェのすぐ左隣を横切った。
「くっ」
両手を交差して、顔をガード。飛び散った砂塵と機銃弾の風圧が赤い神と両手に当たる。
銃弾が過ぎ去った時、ノーヴェは目を見開いた。
「(あのロボットだって壊せた今の私の力なら!)」
最大出力でローラーダッシュ、吶喊。自分を機銃で撃った戦車に狙いを定める。
「うおおおお!」
右腕の大きく拳を振りかぶると、手に装着したグローブに取り付けらえたシリンダーのようなギミックが始動。エンジンの様にうねりを上げドリルのように回転し始めた。
そのまま、戦車の正面装甲を殴りつける。
とたん、砲弾すら弾く複合装甲の車体がへしゃげ、履帯がはじけ飛び、更に装甲が陶器のように割れた。
出来た!ヤれる!!
自分に戦車を破壊する力があることを確信すると。すぐに別の戦車に突進。今度は足回りに狙いを定め左フックの要領で殴りつける。その戦車の履帯は先程と同様にはじけ飛び重量52tの車体が軽自動車のようにスピンした。
三両目、今度は砲塔に飛びつくと無理やり砲塔を回した。戦車も必死に砲塔を反対に回そうとしたり同軸機銃を売ったりと抵抗したがついに手法を見方の戦車に向けてしまった状態で発砲してしまった。
マッハ4で飛び出す付翼安定徹甲弾。
砲弾が命中し、大破した戦車から火だるまになった兵士3人が転がり出てくる。
その様子を見てねーヴェは一瞬茫然としてしまった。
そうか....「人が乗ってたんだ....」
直後に乾いた音が二つ、同時に何か小さな金属の塊がそれと同数彼女の後頭部に当った。
振り返る、両手で拳銃を握った兵士がハッチから半身を出し、おびえた様子でこちらを見ていた。
ノーヴェが撃たれて何ともないのを見て、言った。
「ば、化け物!!」
「おい!」思わず手を伸ばすノーヴェ。するとその兵士は悲鳴を上げて逃げ出した。
その時。
ガスっ!
鈍い音ともに何かが戦車に食い込むと、のーべが飛び乗った戦車が爆発した。
地面に投げ出されるノーヴェ。
振り返ると、岩山の上に黒いヘルメットとグレーのBDUを着た兵士が数人伏せているのが見えた。伏せた状態で自動小銃や機関銃、更にはミサイルランチャーらしきものを構えている。砲声がしなかったところ恐らくそれで先ほど自分が飛び乗っていた戦車を売ったのだと判断。
逃げ出した兵士は一人だけ、つまり......。
「仲間ごと撃ったのか.....くそっ」
相手が自分と同じ人間だと思うと、気が引ける。何故か殺すのにためらいがあった...。
思わず後ずさる。しかし、文字通り後がなかった。
「海.....」
そのすぐ後ろは断崖絶壁だった。
無数の足音、振り向くと先ほどの兵士たちがグレーのBDUの上に黒のヘルメットだけでなく防弾チョッキ(プレートキャリア)までつけた状態で19式自動歩槍や各種小火器を手に自分を包囲していた。その背後に残った戦車の群れも見える。
退路は無い、戦うしかないのか。
そう思った時だった。
包囲していた兵のの中から数人が飛び出してきて自分に銃を向けた。その中には兵士背負うタンクにつながったホースのような物がついていた。
火炎放射器だった。
撃て!
指揮官の指示で四方から火炎が放たれる。
彼女の纏うスーツや皮膚は高い耐熱性を持ち、この程度で死ぬことは無いが熱を感じないことは無い。
炎に包まれるノーヴェ。彼女の脳裏に火災現場の記憶がフラッシュバックしパニックに陥ってしまう。
「うわああああああああ!た、助けて...」
バランスを崩した彼女はそのまま崖から海に転落した。
第4部 みんなの力
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