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「志高く」バックナンバー⑱~密着取材~

こんにちは、志高塾です。

2日前、志高塾で初めてのオンラインイベント「beforeとafterの間」が満を持して開催されました。
スピーカーを引き受けてくれたのは、元生徒の川本君です。

当日は、彼の非常に濃密な話と誠実な人柄に、ただただ脱帽するばかりでした。イベントに参加したすべての人にとって、刺激と学びに満ちた、得難い時間となったのではないかと思います。

今回は、そんな彼に関するバックナンバーを再録します。

ちなみに、文章の最後には「東京在住の中学受験を控えた新小6の女の子を持つ幼馴染に、彼(川本君)を家庭教師として紹介した」というエピソードが出てきます。この幼馴染のかたは、今週の「志高く」でも話題にあがっています。
 
人は、つながるべくしてつながっていくのですね。


Vol.293「東大医学部現役合格!」(2017年3月14日/HP掲載)

たまには、こんな馬鹿げたタイトルもいい。

小4の5月から高3の11月まで約9年間、正確には8年と7ヶ月の間通ってくれた生徒が現役で東京大学と慶応大学の医学部にW合格した。大きな顔して志高塾の実績と言いたいところだが残念ながらそうではない。中高の6年間、1回も読解問題を教えたことなどないのだから。それゆえ私の立場を例えるなら、一流のスポーツ選手を育てたコーチというのではなく、もちろんいろいろな面でサポートをした家族でもない。では、一観客かというとそれもまた違う。きっと、小さい頃にプレイしているのを偶然見かけて「この子はきっといい選手になる」と思い、長年密着取材をし続けてきたインタビュアーというのが一番近い。途中で取材拒否を言い渡されなかったので、それほどおかしなことは聞かなかったのであろう。

実際、私はああした方がいいこうした方がいいということを具体的に伝えてこなかった。そうすることを意図的に避けてきた。相手の口から「結婚しよう」という言葉を聞いたことはないが、「きっとこの人と結婚するのだろうな」という予感と同じように、きっと彼は医者になるのだろう、と思っていた。よく小学生や中学生などが「将来は医者になって困っている人を助けたいです」と言っているのを聞いて、「ちゃんと夢を持っているんだね」などという大人がいるが、実に馬鹿げている。そんな教科書通りの目標はない。上で述べたように彼がそれを口にしていたわけではないのだが、彼には「分子の1は何でもいいんだけど、とにかく分母を増やすべきだ」ということを話してきた。分母は選択肢であり、分子は選択するものを指す。つまり、医者しか考えずに医者になるな、といことである。医者という分かりやすい仕事だからこそそうあってはならないのだ。

実際、理系、文系のどちらに進むかを決めるときも、理系の中でどの学部に進むかを決めるときも、作文をしたり会話をしたりとやり取りをした。東大農学部を卒業したアナウンサーの桝太一の本を紹介したり、最近では、灘から東大の医学部に進み、その後弁護士を経て新潟県知事になった米山隆一のネット記事を印刷して渡したり、灘から東大に進み、一流企業で働いた後、登山関連の株式会社フィールド&マウンテンの山田淳という人もいるといったような話をしたり。これらはあくまでも一例に過ぎず、面白そうな人、本があれば「いいの見つけたで」と紹介してきた。それらは、分子の1を他のものに置き換えるためではなく、分子の1、医者が彼にとって最適のものであることを確かめるためのとても重要なプロセスであったと私は考えている。

彼自身がそう考えているはずなのだが、東大理Ⅲという最難関ではあるが、たかが受験である。それに対して「天才」という言葉を使うのは適切ではないことは百も承知の上で、世間で好まれる「天才型」か「努力型(もしくは秀才型)」という二択を持ち込んでみる。「天才型」ではないし、「努力型」というのとも違う。そこで、強引に三字熟語に当てはめるのであれば「人間型」となる。「人間力」という言葉などで使われる、あの「人間」である。先の段落で私はいろいろなものを紹介してきたと述べたが、それをしようと私が思い続けたのは、彼が素直で「それは面白そうですね」といったように興味を持ったからにほかならない。素直というのは、人の話をただふんふんと聞くのではなく、自分の考えを持った上で、そこに自らに必要な情報とそうでないものを取捨選択しながら付け加えていくといった感じである。

きっと、あれは6年生の頃、彼が勉強をしている横で体験授業に来た子供のお母様がしきりに塾の公開テストの点数の話を私に向かってしているのを聞いて、授業後にぼそっと「あのお母さんは志高塾の価値がわかっていませんね」というようなことを私につぶやいた。中学受験を終えての実感であれば分かるが、まだ灘に受かる前の出来事である。ちなみに、9年間の付き合いで人の悪口を言っていることや偉そうに上から話しているのを私は聞いたことがない。大学受験の前も、自分の意見がうまくまとまらずに「答えがあるものだけができてもアカンねん。こういうことがもっとできるようにならな」ということを漏らしていた。私と二人で、「知識も豊富で発想も自由やのになんでやろなぁ」と笑ったものである。

長い付き合いゆえ、書けばきりがないのでそろそろ終わろうと思う。彼にはこのブログに掲載する文章を書いてとお願いしているので、それを期待してお待ちください。再来週ぐらいには披露できるはずである。

最後にもう1つホットなエピソードを。大学生の頃、私はコンパ(今では、飲み会というらしいが)の幹事をするのが嫌だった。それは男友達と、女友達を含めた女性陣の双方に納得してもらうのはかなり難しいからだ。その私が、数日前に東京在住の中学受験を控えた新小6の女の子を持つ幼馴染に、彼を家庭教師として紹介した。そのやりとりの中で「彼、天才型ではないから教え方も抜群だよ。100人試しても彼レベルはいないはず」というメッセージを送っておいた。そこまでバーを上げても大丈夫だという自信が私にはある。最後に付け加えておくと、私は彼が人に教えているのは見たことがない。でも、私には分かる。ずっと密着取材してきたから。

これまでのように頻繁にというわけにはいかないが、時々インタビューをしながら、彼の成長を見守っていきたい。

                              松蔭俊輔

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