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「志高く」バックナンバー㉖~見えるものと見えないもの~

こんにちは、志高塾です。
ようやく春の訪れを感じられるようになってきましたね。

志高塾も春休み中につき、「志高く」と「志同く」が今週は休載となっております。

そのため本日は久しぶりに、「志高く」のバックナンバーをお届けいたします!14年前、内部向けに発行された文章です。


Vol.37「見えるものと見えないもの」(2010年5月/内部向け発行)

今回は珍しく本に関する話を書いてみたいと思います。

『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』。これは、スタンフォード大学の先生が、学生たちの取り組んだ課題などについて書かれたものです。その中の1つに「5ドルを2時間以内にできる限り増やしなさい」というものがありました。一体、どのようなものを考えつくでしょうか?

アイデアを考えていただいている間に、それとは別の話を少々。ここで紹介するぐらいなので、本の内容はもちろん面白かったのですが、タイトルについても考えさせられました。読んでみると、確かに「(学生たちと同じように)20歳のときに知っておきたかった」と思う一方で、「そのときに知っていても、20歳のときに知っておいて良かったな」とはならないだろうとも思いました。それは、30歳を超え、ほんの少し経験を積んだからこそ、その大切さが分かると思えるから。だから、少し遅いけれど「今知ることができて良かったな」と。しかし、この本を読んで、「20歳のときにこういうことを知らなかったから、今の自分は駄目なんだ」で終わってしまう人もいるのではないかなと思いました。

未来を切り拓くために過去を見つめるのであって、どんよりとした未来の言い訳を探すために過去を分析してはいけない。この歳になると「あの時もっとこうしておけば良かった。今うまくいかないのは昔こうだったからなのかな」という類の考えが頭に去来します。でも、本来、そのようなことを考えている暇があったら、「今、何をするべきか」を考えるべきなのです。むしろ、それを考えていないから、つまらないことが頭の中に浮かんでは消えることを繰り返します。子どもたちも、テストなどの結果が良くなかったから落ち込み、「あの時、手を抜いたからだ」で終わらせずに「じゃあ、今、何をする」ということをほんの少しでも考え、ちょこっとでも行動を変えられれば、ちょっぴり未来は明るくなるはずです。

さて、上の課題ですが、成否の分かれ目は「5ドルに縛られるか否か」です。5ドルを元手に何かを買って、それをもう少し高い値段で売って、それで次のものを買ってと考えると、2時間で大してお金を増やすことはできません。しかし、サービスを売れば、結果はまったく変わります。たとえば、マッサージをしていることを伝えるために、5ドルで厚紙とマジックを買って宣伝し、お客さんを集める、ということなどが考えられます。少し前に読んだので、詳しい話は忘れてしまいましたが、物を売るよりサービスを売る方が儲かる、ということではなく、目の前のものに縛られ過ぎると発想が広がらない、ということです。

人は誰しも目に見えるものを信じます。でも、それを重視しすぎると、思考はどんどん委縮します。親御様から薦めていただいたピーター・フランクルの本の中に、「人の財産は頭と心だけだ」という言葉があります。過去の結果である姿、形のあるものは、跡形もなく消え去ることがある。でも、価値ある形のないものは、目に見えるものをどんどん生み出すもとになる。

見えるもの、見えないもの、子どもたちがどちらも得ることができる場で、志高塾はありたい。ちょっと、かっこ良すぎますかね?

 松蔭俊輔


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