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「志高く」バックナンバー⑮~1か9か~

こんにちは、志高塾です。
 
今回掲載するのは、内部向けに発行した「志高く」からの再録です。
 
志高塾で働き始めたばかりの頃、怒られているのに嬉しそうな顔をしている生徒がいて、驚いたことがあります。

このバックナンバーを読み、改めて「ああ、そういうことなんだよな」と腑に落ちました。

Vol.38「1か9か」(2010年6月/内部向け)

思いつくままに表現したら「いちかばちか」みたいなタイトルになってしまいました。

我々の教室へ採用面接に来られ、授業見学後に、辞退された方が何名かいました。その理由は、「子どもたちにあんな風に厳しくできる自信がない」というものでした。子どもたちと接する上で「厳しくする」というのが大前提にあるので、言われていることの意味は何となく分かったのですが、しっくりとはきていませんでした。

最近、「なぜ叱っているのかが、彼らには分からなかったのだろう」という思いに至りました。「ふざけることもなく、黙って題材と向き合っている子どもになぜ注意するのだろう」というのが彼らの考えたことだと思います。
我々に見えて、彼らに見えなかったのは「本気で目の前の壁を乗り越えようとしているかどうか」ということ。真面目に取り組んでいるように見えても、きっと分からないだろうなと諦めているのは見ていて分かります。そのような時、私の場合は「諦めんなよ」と言い放ち、それでも収まらなければ「諦めるんだったらやるな!」と突き放します。

私が人から言われたり、思われたりして最も嫌なのは「君、どうせこれぐらいしかできへんやろ」ということです。だから、子どもたちもきっとそうだ、と決め付けています。もちろん、世の中にはできないことがたくさんあります。ただ、子どもたちが教室で格闘する課題は、その範疇ではありません。これまで乗り越えてきたことと同次元の問題で、ほんの少しレベルが高いだけの話です。そこから子どもたちが逃げようとすることを放っておくことはできません。それは、「君には、それ無理だよ」、表現を変えれば「君、能力がないから頑張っても無駄だよ」と言っているのと同じなのです。そのようなことを私が、もしくは私の子どもが誰かから言われたら烈火のごとく怒ります。

心の中は見えないので、実は本人は一生懸命に取り組んでいるのに、間違えて叱ってしまうことがあるかもしれません。しかし、9割方当たっているはずです。要は、1割を取るか9割を取るか、という話です。

間違いを恐れれば9割を見過ごさなければなりません。しかし、これは「子どもを成長させない」ということとワンセットなのです。一方で、9割を重視したら、間違いが起こる可能性もあります。もし、子どもが家に帰って来て、「真剣に考えていたのに先生に怒られて、腹が立つ!」と訴えてきたときには、「先生たちは、あなたに期待しすぎて、冷静な判断力を一時的に失ってしまったんだよ」となだめてあげてください。
 
                              松蔭俊輔


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