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2024年4月の記事一覧

詩「リーラの詩」

詩「リーラの詩」

甘美な風に誘われて
わたしいま藤棚の下
生キャラメルに凝固した
香りを一身に受けています
最後に見たあなたは
絶望のスポットライト浴びて
力なく笑っていました
脳みそのしわに吸われたその相はリフレイン
花序のゆらぎは振り子のよう

記憶のしっぽが遺影になって
この藤の花をレイにして
石のようなあなたにかけましょう
たぶん涙もこぼさないと思います
はたまたすべては石であり花であるため
わたしは呼吸も

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詩「いのる」

詩「いのる」

言葉よ
詩(うた)よ
わたしは口ずさむ
わたしの白くすべやかな命が
やがて花弁の結晶となって
あなたの心に芳香を満しますように
あなたから頂戴した水菓子が
わたしの喉をたしかに潤したとき
わたしは無始無終の祈りに至りました

気流よ
風よ
わたしは沈黙する
わたしの永遠を約束された命が
やがてテトラポッドに寄せる波となって
あなたの心にワルツを宿しますように
あなたから頂戴した綿菓子が
わたしの心

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詩「外道ら」

詩「外道ら」

横浜線の三人掛けシートの隅っこで
花見名残の缶酎ハイ飲むおじさんと
春月下風邪を拗らせて咳き込む私は
忌むべき存在として生きる仲間なり
なんてったっておじさんも私も臭い
誰も座らぬ隣の席に透明のたれぎぬ
花も散り月も隠れたのにこの二人は
いつ迄も肩身を狭くして揺れている
言葉も視線も交わさぬまことの同盟
世界よこの外道らを見放し給え頼む