マガジンのカバー画像

64
詩も書きはじめました。
運営しているクリエイター

2024年4月の記事一覧

詩「リーラの詩」

詩「リーラの詩」

甘美な風に誘われて
わたしいま藤棚の下
生キャラメルに凝固した
香りを一身に受けています
最後に見たあなたは
絶望のスポットライト浴びて
力なく笑っていました
脳みそのしわに吸われたその相はリフレイン
花序のゆらぎは振り子のよう

記憶のしっぽが遺影になって
この藤の花をレイにして
石のようなあなたにかけましょう
たぶん涙もこぼさないと思います
はたまたすべては石であり花であるため
わたしは呼吸も

もっとみる
詩「いのる」

詩「いのる」

言葉よ
詩(うた)よ
わたしは口ずさむ
わたしの白くすべやかな命が
やがて花弁の結晶となって
あなたの心に芳香を満しますように
あなたから頂戴した水菓子が
わたしの喉をたしかに潤したとき
わたしは無始無終の祈りに至りました

気流よ
風よ
わたしは沈黙する
わたしの永遠を約束された命が
やがてテトラポッドに寄せる波となって
あなたの心にワルツを宿しますように
あなたから頂戴した綿菓子が
わたしの心

もっとみる
詩「外道ら」

詩「外道ら」

横浜線の三人掛けシートの隅っこで
花見名残の缶酎ハイ飲むおじさんと
春月下風邪を拗らせて咳き込む私は
忌むべき存在として生きる仲間なり
なんてったっておじさんも私も臭い
誰も座らぬ隣の席に透明のたれぎぬ
花も散り月も隠れたのにこの二人は
いつ迄も肩身を狭くして揺れている
言葉も視線も交わさぬまことの同盟
世界よこの外道らを見放し給え頼む