アナコンダ・ハリファイバーが背負っていたもの

※この文章の一部はフュージョン・デステニーが禁止になった2021年1月に書きかけていたものに
 加筆修正したものです。
※このnoteはただの妄想です。

■アナコンダ・ハリファイバーが背負っていたもの


アナコンダではなく、フュージョン・デステニーに規制をかけたメーカーの意図を考えたとき、遊戯王が持つ他TCGにない魅力に思いを馳せる。遊戯王の良い点は主に以下だと感じている。

・レギュレーションが1つしかないこと(スタン落ちが無く、エターナル環境しかないこと)
・受け入れられる世界観の幅が広いこと
・アーキタイプ(テーマ)が無数に存在すること
・テンポが速いこと

そもそもの思考の出発点は、なぜアナコンダをデザインするときに召喚条件を緩くしたか?である。
こうした汎用性のある効果モンスターは定期的に登場していて、ハリファイバーやエレクトラムがそれにあたるだろう。
彼らはテーマ内カードではあるものの、召喚条件が極めて緩く他テーマへの出張が容易いにも関わらず、発揮される効果も極めて汎用性が高い。

TCGのルーリングとゲームの楽しみ方に起因する原則として、汎用性は諸刃の剣となる。
ここではデメリットだけ挙げるが、主に以下だと考えている。
 ・対戦相手の採用率が上昇することで何度も見るため飽きがくる。
 ・多様性が失われることで、ゲームがプレイヤーに提供する選択肢を減らす可能性がある。
 ・テクニカルな効果でない場合、先手有利もしくは引いたもの勝ちになりやすい可能性がある。

なぜ汎用性をあげたのか(あげざるを得なかったのか)について考える。
数年前に遡るが、かつてリンクショックと呼ばれる騒動に発展する大規模なルール変更があったそうだ。詳細な数字は分からないが、プレイ人口や売上は落ちたのではないかと思われる。

新マスタールールの公開とその後の新カード登場、禁止に時期ついて、
wikiなどを参考に調べてみると、概ね流れとしては以下だったようである。

 2017年02月17日:インターネットに「新マスタールール」に関するルール変更の情報が流出する。
 2017年02月21日:Vジャンプ誌面で「新マスタールール」について一般公表。
 2017年03月25日:「新マスタールール」に移行。
 2017年11月25日:「LINK VRAINS PACK」発売。
          主な収録内容:ハリファイバー、エレクトラム、イゾルデ、天球の聖刻印、アロマセラフィージャスミンなど
 2018年11月23日:「LINK VRAINS PACK2」発売。
          主な収録内容:ハーピィコンダクター、セラの蠱惑魔、ラスティバルディッシュ、GOMガン、ラムダなど
 2019年11月23日:「LINK VRAINS PACK」発売。
          主な収録内容:アナコンダ、セレーネ、アハシマ、ダグザなど
 2020年04月01日:マスタールール(11期)に移行。(P召喚、L召喚以外はこれまで通りのルールに戻る)
 2021年10月01日:ドラグーン・オブ・レッドアイズが禁止
 2022年01月01日:フュージョン・デステニーが禁止
 2022年04月01日:フュージョン・デステニーが制限に緩和。アナコンダが禁止。(LINK VRAINS PACK初出としては初禁止)
 2022年07月01日:ハリファイバーが禁止。

2017年2月当時、自分は遊戯王からすでに離れていたが、なんか大変なことになっているらしい、くらいのことが耳に入っているきたことを覚えている。

最初に挙げた遊戯王の良い点の1つとして、「レギュレーションが1つしかないこと」を挙げた。スタン落ちが無くエターナル環境しかないため、どのデッキもどのデッキを相手に一応平等に戦うことになる。
別にレギュレーションが分かれていたとしても、公式大会ではないなら気にしなくてもよいのだけど、試合する前から、勝って当然負けて当然、といった感覚は拭えない(カードプールに縛りを入れているため)。
レギュレーションを細かく分けるとそのレギュレーションに住む人口が減ってしまう。
ゲーム全体の人口が多かったとしても、対戦相手が減ればゲームとしては盛り上がらなくなる。

カードプールの変遷にしたがって、
 ①メタを回すためにインフレしていくテーマ
 ②それに拮抗するために引きずられてインフレするテーマと
 ③環境から次第においていかれるテーマ
に分かれていき、そのセクション間を各テーマが流動していくことになる。

デュエルそのものはTierという緩やかながらも絶対の概念に従うことになる。
環境上位勢と下位勢のパワーが乖離しすぎてしまうと、
せっかくレギュレーションが1つに統合されているのに、環境全体のデッキパワーのグラデーションに
濃淡が付きすぎてしまって事実上のレギュレーション分裂が発生し、マッチアップによっては楽しく遊べなくなってしまう。

ゲーム全体の格差を完璧になくすことはできないまでも、軽減させようとするなら方法は2つ。
 ①環境上位勢を弱体化させて上から圧縮する。
 ②環境下位勢を強化して下から底上げする。
  ※あるいは上記2つの併用

①のメリットは、これまで可能だったシステムを不可能に戻すのでゲーム開発可能領域が増えてゲーム自体の寿命が伸びること。
②を選ぶ場合のデメリットとしては、インフレにつながるリスクがあることと、あまり売上につながらない可能性があることだ。
メーカーは結局①を選んだつもりだったのだと思う。ただそのやり方はあまり上手いものではなかった。
というより、ユーザが納得してくれなかった。
これまでの展開ルートが再考を余儀なくされ、そして何より強みであったテンポ(プレイ感)が損なわれた。
メーカーは離れていくユーザを引き止めるため、新しいカードを買ってもらうために主要各テーマにリンクをばらまいて行くことになる。
これは推測だが、ハリやエレクトラムはもともと汎用性の低いテキストだったんじゃないかと思う。
そして「LINK VRAINS PACK」で出すような各テーマのリンクはもっと小出しにするつもりだったのではないかと思っている。

そもそもなぜリスクを承知で「新マスタールール」なんて作ったかを考えれば遊戯王自体が長く続いてほしいという思いがあったはずだ。
スタン落ちがない遊戯王では基本的にインフレはすれど、デフレはしない。
次第に開発可能な領域が枯渇してゲーム自体が破綻する。
そうなってほしくないからこその「新マスタールール」だったはずだ。
(結果はユーザ離れ、ショップ離れの方に大きく繋がってしまったが)

売上を戻したいという商業的な理由もあったとは思う。しかしアナコンダやハリファイバーたちはメーカーの「一度離れていったプレイヤーたちに帰ってきてほしい」という思い、「これで今まで通りとまでいかなくとも
それに近いテンポ・プレイ感を作ってほしい」という思い、そして、純粋に「プレイヤーたちにデュエルを楽しんでほしい」という思い。
そんな思いを託されて彼らはデザインされ、リリースされたように(少なくとも私には)感じる。

■ミッション完遂後・・・


ともあれ、遊戯王はたちまちの危機を脱した。
ハリファイバーたちは役目を果たしたわけだが、その後の扱いは知っての通りだ。

マスタールール(11期)の導入後に開発上の障害になっていることが原因かもれない。

マスタールール(11期)になって、これまで通りメインモンスターゾーンに展開できるようになってからもアナコンダやハリファイバーは残っていた。
その結果、一部の激やば融合フィニッシャーやラドンとの組み合わせで
ヘイトを買うことが出てくる。
また、多くの場合でデッキ構築の最適解として採用が見込まれるせいで、開発する側としてもつねに意識しなければならない。
彼らを禁止にすることで、これまで彼らが可能としてきたギミックは再び開発可能な領域に返上される。
今後それらギミックを個別のテーマに分けるのか、機能を分解して複数のカードに分けるのか、
色々やり方はあると思うが、いずれにしても下方修正した形でリリースされるのだろう。

最近は春化精など個別テーマ強化と汎用的強化の中間のような領域で強化する傾向にあると思う。
ゆるいグルーピングで浅く広いデッキにアップデートをかけることで、より多くのプレイヤーをゲームに保留させようとしているのかもしれない。

■TCGで絶対にやってはいけないこと


虚無空間、勅命の禁止が概ね喜んで受け入れられているのに比べて、ハリファイバーは結構惜しまれている反応が多い。
往年の名選手が引退するような気持ちでハリファイバーの禁止を受け止めているプレイヤーが少なくない。

それだけ色んなデッキで活躍してきたし、ハリファイバー自身はそこまでヘイトを買ってなかったということだろう。
彼自身はただの展開札であり、その後プレイヤーを苦しめ続けるカードはハリファイバーではない。
また、絶好のうららの打ちどころとして分かりやすさがあったというのも対峙する側からすると相手しやすい印象だ。

TCGで絶対にやってはいけないことは強すぎるカードを作ることではない。
エキサイティングではないカードを強くしすぎることだ。

使っていて気持ちのいいカードは多少強くしてもいいのだ。
そのカードのプレイ感がゲームの1つの魅力であるとプレイヤーに思ってもらえるくらい良いテキストに仕上がっているならむしろ多少強いくらいがちょうどいいと思う。

逆に使っていてあまり気分のよくないカードもある。そういうカードが環境で顔を出してしまうと嫌悪感を覚える。
使用する側に回ることを検討せざるを得ないほどなら、さらに不快感を覚える。

これは個人的は感想だけども、ウーロを最初に見たときは嫌悪感が強かった。理由としては、ただ強いことしか書いておらずデメリットがない、自己完結していて場に出た時点でアドをとる上に放置するとそれ一枚でゲームを終わらせてしまうくらい強烈に強く見えていたからだ。(半分くらいは事実だと思う)
そんなだったから当初自分はウーロを対策する側にいた。しかし、とうとう観念して使う側になってみる。
すると意外なことにプレイ感は悪くない。むしろ楽しいカードだということに気付いた。(もちろん笑えるくらい強い)

たしかに当時の環境デッキはまず青緑ベースを揃えてウーロを積むことがベースになっていて、アリーナでは毎日見かけることになった。それでも不快感はそれほど強く感じなかった。
なぜならウーロのテキストは相手に干渉しないからだ。インスタントタイミングで妨害をするわけでもない。永続的にこちらの行動を制限するわけでもない。除去耐性もなければ、タッパーで封じ込めることも打ち消しも可能だった。(その分何度でも蘇るが)

その後ウーロが禁止になるまでの環境は青緑系のミッドレンジが同型対決でメタを回すような様相で、バラエティがあったとは言えなかったかもしれない。それでもあの環境はそこそこ楽しくプレイできていた。(もちろんそうでない人もいる)

ハリファイバーは確かに数多くの選択肢を潰してきたかもしれない(「〇〇でいいじゃん」シリーズ)。
その一方で、自前テーマでは環境デッキと渡り合えないような展開力の乏しい多くのデッキに対して、より多くのデッキと遊べるくらいのプランを彼は用意してくれた。

効果自体も完璧に単調ではなかった。
チューナーをリクルートする効果だけでなく、相手ターンのS召喚効果もあったので用途が広かった。
TCGにおいて、用途が広いこと、効果がシンプルであること、インスタントタイミングであること、
などの要件はそのカードの柔軟性を高め、プレイヤーにプレイングスキルを問うてくれる。
TCGプレイヤーは基本的にそういったカードを好む傾向にある。(デュアスパ、ヴェンディリオンなど)

■未来送りになったカードたち


アナコンダについては、もたらす結果がエグすぎたこと、融合魔法が入っていないデッキに対しては採用されないこと、用途が1つしかなかったこともあって、ハリファイバーに比べると少し憎まれながら禁止に行った感があるが、それでも一部の融合デッキを(環境を破壊しない範囲で)支えてくれていただろう。

長年お世話になったカードが禁止になるのは、一人の友人をなくすような辛さがある。。。
というのは言い過ぎかもれないが、寂しさはやはりある。
それでもゲームが少なからずインフレを続けていくなら、いつかゲームがハリファイバーに追いつく。
それが5年後になるか10年後になるか20年後になるのかは分からないが。

今は感謝の思いをこめてドレミコードからハリファイバーを外したいと思う。

エレクトラムも遅かれ早かれかなぁ・・・
調整版っぽいの出ちゃったし(ビヨンド)

以上!

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