見出し画像

ペットにお金を残す方法

飼い主亡き後ペット問題で触れましたが、
現在は多くの高齢者、高齢者夫婦など高齢者のみで構成される世帯でペットが飼われて、飼い主の亡き後ペットだけが残されてしまうという問題があります。

適切な対策をしていないと、、、

彼らは一人では生きていけませんよね。
ペットより長生きする自信がない人は、
(人はいつどのような形で死ぬか分からないので、現実的には全ての人は)

自分がいなくなった後のペットの生涯についても担保してあげるべきなのです。

それが本当の愛の一つでしょう。

ここでは、従来採用されていたペットに遺産を残す方法を2つ紹介します。
(ただし、後述のデメリットがあり、確実性に欠けるため、現在では信託法規定の信託契約を使うという方法が注目され始めています。)

①負担付遺贈
❶内容
遺贈とは、サスペンスドラマなどでよく遺言で相続人とは別の人に財産を譲ると書いたりして、いざこざになったり、というのがありますよね。相続人は何もしなくても法定割合に沿って財産をもらえるのですが、相続人でない人(隠し子とか、お世話になった人とか)に財産を譲る場合は、遺言に書くなどして遺贈する必要があります。
そして、遺贈する場合に、財産を受け取る条件をつけることも認められています。これが負担付の意味です。
ペットにおける負担付遺贈とは、飼い主(亡くなって相続される人)が残されるペットの世話をしてくれると思われる人に、ペットの世話をしてくれることを条件(負担付)にして、そのために必要な財産を譲ることです。

❷負担付遺贈の問題点
相続は放棄することができます。そして、遺贈についても放棄することができます。遺贈とは、遺言に書いたりして、被相続人の死後に発表される内容ですから、遺贈を受ける人は場合によっては寝耳に水、ということもあり得ます。ペットの世話をすることは簡単なことではありません。いきなり、ペットの面倒を見ることを条件にお金を受け取ってくれ、と言われたら、誰もが快諾するわけではないでしょう。よって、負担付遺贈は放棄されてしまう可能性があります。放棄された場合、ペットちゃんの面倒は結局誰もみてくれないのです。😿😿😿😿

②負担付死因贈与
❶内容
遺贈の問題点は、遺贈が一方的に「お金あげるよ」という行為だということです。遺言書の内容って、普通生前に人に話しませんよね。だから、遺贈を受ける人は突然その内容を突きつけられるわけです。では、突然ではなくて、事前にペットの面倒みてね、お金あげるからね、って断りを入れたり、打ち合わせしたらいいですよね。ペットの面倒を見るのは重要な仕事です。確かにいきなり突きつけるものではありません。そこで有効なのが、死因贈与です。遺贈との違いは、死因贈与は「契約」だという点です。一方契約者の死を原因として契約が発効するという形式になります。死人に口なしと言えど、契約である以上守る必要があります。そして、遺贈と同様、条件(負担付)をつけることもできます。これならば、放棄されてしまう可能性があるという負担付遺贈のデメリットは解消できますね。
❷負担付死因贈与の問題点
しかしながら、死因贈与にも問題があるのです。結局、遺贈でも、死因贈与でも、これらの贈与は相続手続きの一部として相続過程に巻き込まれます。相続って揉めるイメージ、、、なんとなくありますよね。
すんなりいけば問題はないでしょうが、もしその相続が揉めてしまった場合、贈与を受けていたとしても、財産の分配は確定しないのです。
さらに言うと、ペットも財産(※考えられないことですが、日本の民事法では、人以外の生命は全てモノという位置付けをしており、よって犬や猫も民事法ではモノです)ですので、相続が確定しないと言うことは、究極的にはペットを保護して世話をする権限も、相続が確定して、贈与が認められてペットの世話の負担を受任した正当なペットの保護者としての地位が確認されるまでは認められないと言うことなのです。これは負担付遺贈でも同じことが言えます。

簡単にまとめると、贈与(負担付遺贈、負担付死因贈与)では、飼い主が亡くなってから実際に①ペットを保護して世話を始める②そのための資金としての贈与財産を受け取るの行為が為されるまでにタイムラグが発生する蓋然性があると言うことです。それも、相続は数日で終わるものではありません。その間、法律上はペットは適切な保護を受けられないと言うことになります。これが問題すぎるため、皆がペットの処遇について納得していて、ペットのことは最優先でやってしまいましょうという気概がある相続でもない限り、ペットに遺産を残す方法として贈与は好ましくないと言えます。

※補論
③負担付生前贈与
ペットに財産を残す方法として、生前贈与も考えられます。今までの贈与は死後の贈与でしたが、飼い主が死ぬ前にペットと財産とを飼い主の死後にペットの世話をしてくれる人に贈与してしまおうと言うものです。上記遺贈、死因贈与には相続手続きに巻き込まれてしまうという最大のデメリットがあったのですが、生前贈与には相続に巻き込まれる可能性が低いです。(生前贈与された額によっては可能性はありますが)
それに、飼い主の目の黒いうちに、飼い主の死後のペットの処遇について形にして見ることができるができます。

しかし、デメリットとしては、相続に巻き込ませないことを目的とするならば、ペット自体についても生前贈与する必要があります。飼い主が形式的には変わってしまいます。感情的には複雑ですね。ただ、それ以外は良さそうです。

ただ、遺贈、死因贈与、生前贈与全体の問題として、負担付にしたとしても、受任者がその負担を適切且つ誠実に実行するかどうかの確認をする人がいませんので、もしかしたら負担受任者がそのうちサボったり、適当にやったりする蓋然性が高いと言うことです。(あとは贈与税適用になるので、税金がかなり取られてしまいます)

では、ペットの世話をしっかりやっているかチェックをして、なおかつペットの世話をしてくれる人にお金を渡す方法があるのか、ということで注目されているのが信託法による信託契約です。

次回から、ペット信託について考えたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?