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ミッシェルはもう聴けない(下)

禁断の実。それは岡村ちゃんだ。以前、フォロワーさんに何人か元ベイベが居たことにびっくりしたが、刺さる人にはたまらないと思う。

出会いは意外なほど爽やか。
入口は「愛はおしゃれじゃない」と言うbaseball bearの小出くんとの曲だ。
メロディも爽やかで、歌詞はくすぐったく恋心を歌っているのにちょっとキモい。
「唇」を「くでぃびう」と歌っていて、笑ってしまいながらもなぜか何度も聴いてしまった。

爽やかです。爽やかですけど。

もともととことん掘り下げる性格のわたしは、興味を惹かれて他の曲も聴きにいった。
あれ?なんだっけこれ?
聴き進めるうちに、岡村ちゃんとは昔に出会っていたことを思い出した。
中学の時、塾の先生がユニコーンとともに貸してくれたのが岡村ちゃんだったのだ。そういえばその先生と友達がややこしくなり、わたしは結構悩んだのだった。
今思えば「よーこんなもん中学生に貸したなあ。」と言うのが感想である。
わたしだったら子どもに聴かせたくはない。

おぼろげな記憶だったが、借りたCDは「禁じられた生きがい」と言うタイトル。
彼の人生を考えるとなんという伏線だろうか。
そういえばわたしは「青年14歳」という曲が好きだった。
「野蛮でノーパンで冗談に暮れる青年14歳」言葉の語呂優先で書いてる感じなのに、こんなに気持ち悪い(褒めてる)。

何度か表から消えてその度に返り咲いて、今また出会ったことに不思議な縁を感じてハマった。

ヤバい。
聖書と書いてバイブルと読む。
その厨二な感じにゾクゾクしたが、歌詞はそれ以上であった。
「なんで35の中年と恋してる」
35を中年って言うな。
「同級生だしぃバスケット部ぅだぁしぃ実際青春してるし背が179っ!」
身長を叫ぶな。
「crazy×12-3=me」
もうどうやってもわからない。

時代を感じる(断じてリアタイしてない)

ん?家庭教師?どんな曲だ?
「多分23さぁいなのにこーんなひるーまー」
うわあ、すごい歌い出し!
「靖幸ちゃんが寂しがっているよ。ベッドで勉強させて」
のちにKPOPにおいて、ジョングクやチャンビンが自分の名前を歌っててもかっこいいと思ったが、なんだこの違和感は…。てか靖幸ちゃんて靖幸の靖幸かて。
聴くことで疲労した。
なのにもっと聴きたくなる。

ファンクな感じと気味悪さはスガシカオと少し似ているが、抒情的な歌詞ではない代わりに、とてつもなく変態みが滲み出ている。
いや。ベイベの人が読んでたら怒らないで欲しい。すごく褒めている。こんな人は他にはいない。だから魅力を感じてしまったら終わりなのだ。

岡村ちゃんはかつてのPrinceを意識していたと思うが、彼と同じくたいそう性的魅力があり、それにも後押しされ、わたしはまんまとベイベ(岡村靖幸のファンのこと)なった。

デンス(岡村靖幸の踊るダンスのこと)が見たくてデイト(岡村靖幸のライブのこと)にいった。
奇しくもあの日CHARAを見たZepp Nambaで。
好き!とすごく思ったが、一つもグッズは買わなかった。なんかお尻っぽいフォルムだったから。

推していることを言うと高確率でひかれるので、わたしは結構長く隠していた。
でも前出の塾の友達はデイトに誘った。すごく久しぶりに会って楽しくて、わだかまりもやや解けた。

危なっかしさも彼の魅力であり、健康状態、精神状態を気にしながら応援するという状態に陥った。
「次のライブはつつがなく行われるだろうか。」などと思いながら行くため、吊り橋効果のようなもので、会えば感激は倍増した。

Daoko「ステップアップLOVE」やkick the can crew「住所」、RHYMESTER「マクガフィン」と、どんどんコラボしていく中で、追い風に乗り周りに徐々に打ち明けたが、夫に言うのが一番難しかった。結果戸惑いながら告げたのが本気をにじませた感じになり、めちゃくちゃ嫌がられた。
嫌がられたものの、ほんとに好きでいて、生活を侵食しない愛し方なら大丈夫なようだった。
まあ、しめしめである。

こうしてわたしが岡村ちゃんを熱量高めに追っている頃、ちょうど長子の周りでは、KPOPが流行っていた。
ダンスをしていたこともあり、TWICEやBLACKPINKなどのヨジャドルだ。しかし、布面積少なく踊りまくる姿を見ていられず、ある程度距離を置いていた。

そしてもともとASAYANなどが大好きだったわたしは、「虹プロジェクト」でついにKPOP(と餅ゴリ)に出会う。

デビューをかけて努力する少女たちの姿は、女児の親としてかなり来るものがあった。
そして課題曲で冒頭で「JYP」と囁く今までのJYPEの曲をやるため、オリジナルを聴きに行ってしまうのだ。
やり方がうますぎる。

そしてKPOPの作り込まれたような、時々トンチキでびっくりする曲展開や仰天歌詞のJapanese versionなどに触れて、面白みを知ってしまったのである。

虹プロを見ていて大好きになった曲がある。
TWICEの「Feel special」だ。
MVで、休養していたミナがチェヨンと交わす視線、微笑み合う表情。歌詞、餅ゴリによるセルフカバー。
その年ははじめて不眠で医療のお世話になっだ年で、精神状態と相まってわたしは泣いた。
そこから定期的に聴きに行く大切な曲だ。
わたしはヨジャドルを中心にKPOPを聴くようになった。

TWICEはどんどん素敵になっていく

この頃には娘の友達が既に、キムテヒョンとしか結婚したくない、と言っていたが、誰のことだかわからなかった。娘は笑っていたが、その後すぐキムソクジンに転がり落ちていた。

わたしはそんな娘を微笑ましく見守っていた。我が子がアイドルを好きになるなんて健全で、嬉しかった。

それほどに他人事だったのに。
2020年の秋、恐ろしい沼落ちを経験する。
コロナ禍の真っ最中で、業務上濃厚接触者になり、急遽帰宅させられて自宅からオンラインで仕事をするなど疲弊していた。
そのため体調を崩して数日の休みをもらった時のことだ。

長子が出かけるので、歌番組録画を頼まれた。デッキの調子が悪いうえに空き容量も微妙で、ジャックを抜き差ししながらBTSとやらの出番を待っていた。
確か、司会は櫻井翔さんだった。
曲はもちろんあの曲である。

曲が始まってすぐ目が離せなくなった。
な、なんだこれ。と情けない感想が口をつく。

みんな上手い。が。
めちゃくちゃ歌上手いやつがいる。もしかしてほぼ生歌じゃないのか。それに死ぬほど顔が良い。(ジョングクです)
めちゃくちゃ脚の長いやつがいる。そしてなんかすごくダンディー。(ナムジュンです)
めちゃくちゃ踊れてなんか楽しそうなやつがいる。そして歌が上手い。(ホソクです)
なに次は!めちゃくちゃ声の高いやつがいる。しゃくりが特徴的だな。え。星の可愛いお洋服がお似合いだし妖精なの?(ジミンおちの瞬間)
めちゃくちゃ表情や仕草がかっこいいやつがいる。見たことないタイプのものすごい美形だ。(テヒョンです)
え?誰も歌ってないところあるけど大丈夫そ?(そのパートの主こそが後の最愛の推しです)
そして、満を持して登場。これはわかるぞ、娘の推しのジンくんだ!え。ゲッツしてるけど。懐かしい!ゲッツ!(うるさいです)
やつ呼び失礼。

ベスアー2020がわたしの生活を変えた

とにかく食い入るように見た。
これがここまでの人生で一番はまりこんだバンタンとの出会いだ。
忘れない。ベストアーティスト2020。
何が「大人らしい程良い距離感での音楽との付き合い方」だよ。
それとは真逆だった。
靖幸あたりから怪しかったが。

BTSには、公式のコンテンツの他にもファンメイドのたくさんの手作りの動画があり、楽曲の訳やパート割、メンバー各々やペアの魅力を伝えるものなど見ても見ても尽きることがなかった。
わたしはそれまで、時間を溶かすメディアだと思って無限オススメをしてくるYouTubeを見ないようにしていたが、こんな最高だとは思わなかった。見漁ってやっぱりアホみたいに時間を溶かした。

曲も聴きまくった。というか、バンタンしか聴かなくなり、なんとそれが2年以上も続いた。あんなに好きだった靖幸のことすら忘れてしまった。極端な性格はなんとかしたい。

「IDOL」「MicDrop」では自信に満ちたヒップホップらしい歌詞に、JPOP育ちのわたしにはびっくりするような展開(そもそもラップに慣れていない)で、アクが強いのに何回聴いても新しい発見があり、飽きない。
かと思うと、「Answer〜Love myself」や「Epiphany」では大切なメッセージを、強く発信してくる。
そして筋の通ったコンセプトがあって、メッセージが一貫している。
多分、Love yourselfがその時の自分に一番必要だったのだろう。救われた気持ちになった。丸ごと自分を引き受けてもらったかのような。出会えて良かったと本当に思った。

「Lights」が当時も今も大好きだが、ナムジュンの歌う「幸せの価値なんて自分で決めてしまえばいいんじゃない」を初めて聴いた時、涙が流れたのを覚えている。
こんな素晴らしい曲の制作に、深くメンバーが関わっていることも感嘆した。
そんなん、もうアイドルちゃうやん!
アイドルという言葉に勝手な定義をしていたわたしは、食わず嫌いを心から悔いた。
アイドル万歳だし、そもそもどう呼んでくれてもいいって言ってるじゃないか。
彼らは、彼らだ。

ベスアーからひと月半くらいで、ジミン→ジョングク→ホビと推しが目まぐるしく変わったが、今いないその人のこともたくさん知り、興味が湧いた。
ファンから結婚してと言われたら即座に甘く返して、でもメンバーに抱きしめられたらすごい顔をしている。ツンと見えるけどほんとは優しくて、静かみたいだけど時々ぶっ壊れたみたいに騒いでるし。
ラップを聴いているとなんだか声が何種類もあるみたいだ。低くてかたくてあまり聴いたことない感じの声。なのに歌うとなんだか優しくて柔らかな感じになる。
コロナ禍で義実家への帰省を遠慮するように言われ、悲しい年越しで、せめて楽しみをと思って見たNew years eve liveでついにリアルタイムのSUGAと出会った。
やっと会えて嬉しかった。もう色々と調べていた段階で好きだった。
わたしにとっては、彼が辛い過去を乗り越えているのをオープンにしていることが大きい。
AgustDの曲で、インタビューで。教えてもらったこと一つ一つに勇気づけられた。
プロデュースの仕事、バンタンのメンバー、AgustDと使い分けしながら重なる三つの顔のどれも素敵で、知るほど目が離せなかった。

一番好きなビジュはWSJ


I'm speechless.

そこからもうずっと二年が過ぎたけど、ずっと追いかけている。
その間色々なことがあった。
いいことも嫌なこともたくさんあったし、たくさん勉強した。

それはもう最高潮に気持ちが高まっている時にあの防弾会食があったが、泣きじゃくったあと、また静かに愛していく気持ちを立て直せるほどには真剣に好きで。
でも、兵役前、7人での最後の釜山のステージにはわたしは行けなかった。
いや。本当はなんとかしたら行けたかもしれない。ただ、行かないと決めた。諸々自分は行ける状況ではなかった。でもこんなに好きなんだからまた会う時がくると思った。そしてオンラインで娘と泣いた。

好きで泣く。というのはオタク界隈ではよく言うことだが、わたしはそんなに泣かない。泣けないほうだ。
音楽を聴いて泣くことは多々あるが、それ以外で咽び泣いたのは防弾会食と釜山コンだけで、こればかりは止められなかった。

これほどまでに深く思ったことは初めてだし、これからもずっと防弾少年団とSUGAは推すし、ミンユンギさんのことが大好きだ。

斜に構えたサブカル女子は、サブカルおばはんになると思いきや、メインカルチャー大好きおばはんになった。ただ、愛し方がサブカルのそれなだけで。

でも、「みんなが好きなものなんて興味ない」だった昔の自分より、「みんなが好きな◯◯、わたしも好き!」と言える今の自分のほうが好きだ。
彼らが変わらせてくれたんだなあと思う。
防弾少年団に出会う前、わたしは色んなことで参っていた。コロナ禍の閉塞感の中で、続けるべきか悩みながらする仕事とか諸々。
でもやるしかないのだ。ひたむきに愛する対象ができて、自分を元気づける方法を得たわたしは、少し頑丈になった気がする。だから出会うべくして出会ったと思っておくことにする。

そうして重く深い愛は続いているが、今はもう少し心が自由になった。
MAMAに行ったのをキッカケに、ステージが良かったTreasureのコンサートに、友達がチケットを取ってくれて行くことができた。
とてもとても楽しかった。
あまりオリジナルの曲の数がないから、バージョン違いの同じ曲もあったが、一生懸命わたしたちを楽しませようとしてくれたTreasureの一人一人の気持ちを感じるような時間だった。
だから、とてもとても嬉しかった。
現場はいいなあ。と、バンタンではまだ現場に行けていないわたしは感嘆した。
ありがとう。可愛すぎた、眩しすぎたTreasure。また会いに行きたい。

可愛くて面白くてサービス精神旺盛で
めちゃくちゃ歌が上手かった

ヨジャではやっぱりMAMAで会えたアイドゥルにやられている。
やっぱり作る人たちが好き。
「Nxde」の歌詞や、敢えてのタイトルにもってきた背景を聞いて、ソヨンに痺れた。
かっこよすぎる。これから深く知りたい。

レコーディングディレクションも自分でしてるなんて

そして現在防弾少年団にハマったのと匹敵する速度で転がり落ちていっているなのが、Straykidsだ。
もともと「あなたスキズの曲きっと好きだよ。聴いたらハマるよ。」と言われていたので避けて避けて、見えそうになったら顔を背ける勢いで聴かずに暮らしていた。もうこれ以上抱えきれないので。
多分好きになってしまうと思っていた。自分でも。


MAMAは日が違ったけど、3RACHAが出ていた

でも2022年の後半くらいから、キャッチーなタイトル曲が立て続けに出て、どうしても色んなところで聴いてしまう。

3RACHAがセルフプロデュースでコッテリ作り込む曲が好きだ。
メインダンサーのリノのどっしりと重いダンスが好きだ。あと顔が好きすぎる(もう顔入りすら隠さない)。ヒョンジンとフィリックスの華のあるダンスも好きだ。
メボの脱退のあと、ボーカルが弱いと言われても折れずに、どんどん上手く力強くなるVocal RACHAの個性的な歌声が好きだ。

現場に行く幸運に恵まれたので、しっかり楽しんでこようと思う。

そして先日、SUGA/AgustDの日本を含むツアーが発表された。…絶対に会いたい。なんだか会えるというか、会うと思っている。静かにその時を待とう。

会います!!!(大声)

そんなワクワクで忙しい毎日だ。気がつけばあまり考える暇がなくなっていた。人間生活やることやったら、あとは推し事で忙しいのだ。余計な考えが挟まる間もなく、また、推しのために働くというモチベーションができた。これは強い。

もちろん未だにJ-POPも邦ロックも好きだし、ここまでの何もかもがわたしの血肉。
嫌々してきた仕事、幸せが大きいけれど時々絶望的にしんどい子育て、めんどくさいしがらみ諸々、音楽に助けられて生きてきた。助けられて、モロに食らわず気を紛らして上手く交わしたり、昇華したり、パワーにしたりした。

この間久しぶりに、怒髪天35周年スペシャルのオトナノススメの動画で、ミッシェルのフロントマンのチバユウスケと再会した。ジジイになっていたが声も健在で、はちゃめちゃにかっこよかった。わたしも、大人は最高!と叫びたい。

年を重ねてもこんなにかっこいいのはずるい


スガシカオや岡村靖幸はわたしの書く文章に息づいているし、女性としての年齢の重ね方はCHARAやYUKIをいつまでも思うだろう。

どんどん貪欲に、でもこれでないといけないというものはどんどん脱いでいっている感じがする。人間関係も然りで、練られるほど結果シンプルになっていく。
「らしさ」を探して、どんどん尖って狭くなってきたけど、今となっては何しても嫌になるくらい自分「らしさ」全開なんだから、これからはもっと丸く拡がっていきたい。
このまま段々と年齢を重ねるごとに赤ちゃんのように単純な方向へ回帰していき、雑食系音楽オタクおばあちゃんとして笑ってあの世に行くことができそうだ。

振り返ったら、自分の後ろに、もがきながら続けたことでできた長い道があった。
どうしてもやっぱりまだ仕事は辛いことのほうが多い。でもどのみちしないといけないならこの道で良かった、と思いはじめたりしている。
30からの人生は、毎日が頑張りどきの連続のように感じて時々潰れそうになってきた。
でも楽しみな予定をたくさん詰め込んで過ごしたら、知らぬ間に乗り越えていそうな気もするから、簡単なものなのかもしれない。

誰が何言おうがわたしの人生なんだから、責任持ちつつ出来るだけ楽しくやっていくだけである。
おとんの車の中のビートルズから、青春を捧げたミッシェル、深い深い沼へダイブした防弾少年団。そしてこれから出会うものもあるかもしれない。なにせ音楽が側にあれば毎日がもっと味が濃くなるように思う。

家族、お友達各位、わたしに関わってくれる人たちには「またあんなことやってらー。」と生ぬるく見守って頂けるとありがたいのである。

ここまで読んでくれた人の中には、過ぎた自分語りに胸やけしている人もいることと思う。
ここらで一度、自分の音楽履歴を振り返っておきたかったという自己満足です。
毎日が、音楽とあったから。
聴かない日、奏でない日、歌わない日はなかったから。

さて、欲が満たされたので、今度はまた、本来書いている方の文章に戻ろうと思う。
今は、音楽とともに、文を書くことが趣味に加わった。
それも推しきっかけとは、あまり大きな声では言えないけれど。

ミッシェルが解散したあの日、わたしは青春が終わったような気になって絶望していた。
でも、いい時間は形を変えて続いていたり、何かのきっかけでまた取り戻せるんだって今はわかる。

人生の一番いいときはまだこれから。
大切な存在になった彼らもそう歌っていたことだし。

end

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