【10分でわかる】健康保険証の廃止、マイナ保険証への移行
令和6年12月2日に健康保険証が廃止されます。
廃止後はマイナンバーカードと健康保険証が一体となった「マイナ保険証」を基本とする仕組みに移行されます。
厚生労働省の発表によると、令和6年3月のマイナ保険証の利用率は約5.5%でした。約95%の国民は利用していないという状況です。
このような不人気の状況を受けて
・「利用率に関係なく、12月に現行の健康保険証を廃止、マイナ保険証に一本化」(厚生労働大臣)
・「マイナ保険証を使えない医療機関を通報せよ」(デジタル担当大臣)
などと、政府は強めのメッセージを発信しはじめています。
ここでは、マイナンバーカードを持っていない方、
あるいは、持っているけれども保険証利用の登録をしていない方が、
今後の保険証利用をどのようにしていくべきか考えてみます。
1.マイナ保険証利用の背景
マイナ保険証は、マイナンバーカードに健康保険証の機能を付加したものです。
当初、マイナンバーカードの発行も低迷していました。
そこで、政府はマイナポイント付与(最大2万円)の施策を実施し、令和5年12月にはマイナンバーカードを持つ人が70%まで伸びました。
ただ、健康保険証として利用する人は、5.5%にとどまっています。
70%の人が利用できる状態なのに、ほとんどの人が利用していません。
ポイント目当てでカードは作ったものの、健康保険証として使うメリットは感じていないということです。
政府はマイナンバーカードの使用を通じて、国民の行動を把握したいと考えています。
作っただけでなく、使ってほしいということです。
2.マイナ保険証のメリット
厚生労働省は、メリットを次のように述べています。
理解はできますが、利用者としては実感できません。
また、健康保険組合や自治体のホームページなどでは、次のようなメリットが挙げられています。
(1) 医療費を節約できる
(2) 限度額適用認定証(高額療養費)の手続きが不要になる
(3) 就職・転職による健康保険証の発行が不要となる
(4) 確定申告の医療費控除が簡単・便利になる
(2)(3)(4)は、限られた局面で感じるメリットとなります。
(2)は入院などで月の医療費が高額になるとき、(3)は就職や転職をしたとき、(4)は確定申告で医療費控除を使う(1年間の医療費が10万円を超える)とき、です。
(1)は、個人負担ベースで、初診で6円、調剤(薬)で3円、安くなるだけです(令和6年4月現在)。インパクトはありません。
以上のことから、実感できるメリットはごくわずかだといえます。
3.健康保険証の廃止
健康保険証の廃止とは、新規の健康保険証を発行しない、ということです。
12月2日で新規の発行が終わりますので、それ以降はマイナ保険証の利用率が少しずつ上がっていくと思われます。
ただし、廃止後も現行の健康保険証が1年間は使用できるという経過措置が設けられています。
また、マイナ保険証を持っていないすべての人に、新たに「資格確認書」が発行されることになりました。手続きは不要です。
資格確認書は、健康保険証とまったく同じ機能を持ち、形状やサイズも同じものになる予定です。
したがって、マイナンバーカードを持ちたくない人や
持っているけど保険証利用の登録をしたくない人は、引き続き、マイナ保険証を使わないということもできます。
4.まとめ
令和6年5月から7月をマイナ保険証利用の「集中取組月間」とし、医療機関に対して支援金が導入されることが発表されました。
患者に利用を呼びかけることを条件に、利用人数の増加に応じて、診療所と薬局に最大10万円、病院には最大20万円を支給するというものです。
医療機関の窓口で「マイナ保険証をご利用ください」などの声かけが展開されます。
一方で、運用面では「他人の情報が誤って登録される」、「(システム不具合などで)資格情報の確認ができない」などのトラブルが発生し、いまだ不安定な状態が続いています。
また、現時点で利用者側が感じるメリットはさほどありません。
こうしたことから、現行の健康保険証が廃止される今年の12月までは、焦ってマイナ保険証へ切り替える必要はないと考えます。
ただ、来年になると利用率は上がり、どこかのタイミングで利用する人・しない人の比率が逆転するかもしれません。
利用しない人が少数派になったとき、運用面での安定が図れている状況であれば、その時点でどうするかを考えればよいと思います。
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