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妄想と不可思議の境界

  • 河童的な何かとの遭遇1

小学生くらいの話です。
都市部近郊の一級河川の近くに住んでいた私は、
近所の公園より河川敷が近かった。

毎日の遊びは、
河川敷にいって川釣り、
BB弾の元祖「銀玉てっぽう」での打ち合い、
パスを投げ合うローカルルールだらけのミニドッチボールの通称「天下」、
爆竹や打ち上げロケット花火を使った遊び、
昆虫やトカゲやヘビなど生き物を捕まえて競うハンターゲーム、
ラジコンカーの競争(上級子供M君専用)、
デパート内を練り歩くウインドーショッピングもどき 
などなど。

まあ、昭和の田舎の都市部に住んでた少年あるあるでしょうか。

一番多かったのは河川敷の遊び、川釣り。
コイの投げ込み釣りで、当時流行っていた吸い込み仕掛けを使う投釣り。
エサはマルキュー社の蚕のサナギを粉末状にした「大鯉」か
父に余って廃棄する予定のへら釣り用をもらった練り餌。
ドバミミズなどの生餌は基本つかわない。

釣り方はカンタンで、
釣竿のばして、リールセットして、糸通して、真ん中に糸を通すように穴のあいた中通し錘に糸を通して、
より戻し金具の下に、らせん状金具の周りに、
ぐるりと釣り針8本が覆うようになってる専用仕掛けをセットして、
仕掛けを真ん中にくるむ様にエサで団子を作って15mくらい先に投げて
ひたすら待つだけ。

文字にするとややこしいが、
現場ついて投げ込むまで20分もかからない。

夏休みなんかはやることないから時間があると大抵これ。

毎日あちこちのポイントを少しづつ試して、
絶対釣れる定番ポイントをみつけてそこを陣取る。

エサが水中で溶けてなくなったころ回収してまた団子エサをつけて投げる。
これを繰り返して大体30分くらいであたりがある。
刺すまた状のポールに竿を斜めにたてているので、竿先が
チョン、チョン、ぐいーーーーんん、と
しなるのが魚がエサにくらいついた反応だ、これを「アタリ」という。

私はすぐに集中力がなくなってしまうので、
他のことをしていてもボーと空を眺めていてもわかるように
穂先に鈴をつけてアタリを音で待つ。

ちりんちりん、りんりりりりん
アタリのパターンで食いついたサカナの種類は予想できる。
小刻みに揺れるのは、またニゴイ。

ニゴイはコイ科・カマツカ亜科に分類されるサカナで、
急流でない川や湖沼や生息する淡水魚。
コイの顔をウマズラに前に伸ばしたような流線形の顔付きで、
コイに比べると引きは弱いが1日に2~5匹くらいランダムに釣れる。

コイは魚道に沿って周回しているのでめったに来ない。
だってコイは魚道コース知ってたらそこに投げたら必ず釣れるのだから面白くない。だからコイは狙わなかった。
コイ科のサカナは唇が肉厚だし針が食い込んだ部位から赤い血がしたたる。
子供心にも針にくるしんで血を流すサカナはちょっとかわいそうだったし。

いくらエネルギーが無駄に余っていて、
しつこい性格だった私でも4時間もいたら飽きてくる。
夏休みはほぼ毎日いたから。
大抵、一緒にいく友達(TK君、TT君)から飽きて違う遊びを始める。

河川敷なので、段ボールをさがして芝滑りをしたり、
ツクシや四葉のクローバーを探したり、たんぽぽの綿毛をひたすら飛ばしたり、もぐらの穴を掘ったりする。

その日も暑かった。
以前はヘドロ問題があって汚かった川がきれいになりはじめたころで
それでもまあ汚かったのだが、ヘドロ特有臭いはなくなっていたころだった。

その日はいつものメンバーと違う4人グループと遊んだ。
いまよりずっとコミュニケーション能力あったのか、同年代で自分らのテリトリーに入ってきた子供で害がなさそうなら遊ぶようにしていた。ヒマをもてあましていたから情報交換も兼ねて。

新参チャレンジ勧誘で定番の芝滑り競争などを繰り返して
斜面の上り下りにあきたころ
近くの駄菓子屋でアイスを買ってみんなで食べながら川面をみてた。
誰かがふと川に入って遊ぼうといいだした。
今日あった新参グループ内のちょっとヤンチャなタイプの子だった。
暑いのに斜面を上り下りして熱くなったから足だけでも冷やして涼もうという作戦らしい。

台風で増水して反乱する濁流の恐ろしさや、
打ち上げられているサカナの死体や、
上流から流れてくる動物の死体、
川岸にそろえてある入水自殺のくつ、
数年前に泥酔して溺死した死体騒ぎなど、河川敷に近いところに住んでいる河川敷組には共通の常識だったので、
そういったもろもろの恐怖がなんとなく頭をよぎり
釣りの餌をまぜるときやサカナを掬い上げるとき以外には
めったに川に入ることはなかった。

そンな空気の中、いつもの河川敷メンバーが躊躇している間に
新参グループの一番ヤンチャが川にザブザブ入ってしまった。
しかもいきなり、腰あたりの深さまで。

地元組はびっくりして、それは流れに足をとられて危ないからそれ以上いくなと皆で注意した。
皆がいうのでヤンチャも岸に戻る。

「やっぱり涼しいな」
「夏に川に入るのはふつうだよな」

とはいいつつ、
足の裏は汗でべっとりだし川の水はキラキラして涼しそうだった。
しつこく誘うも誰も応じないブー顔のヤンチャの顔もたてて、みんなで岸に腰かけて足首までつかることにする。
芝滑りの疲れがでてきた。

さいしょはマッタリしていたのだが気づいたらもう夕方になっていた。
一番家が近かったTK君はそろそろ門限だから帰るといいだして、
背の低かったTT君も川に入ろうとしつこいヤンチャを嫌がって帰るといいだした。

残った私と新参の2人で計3人。あとの人はいつのまにか居なかった。
わたしもヤンチャなやつが面倒だと思い始め帰るつもりだったが、
体が一番大きい私が残りTK君とTT君が帰ったあとにしようと思っていた。

「もう一回川に入ろう、
邪魔なやつは居なくなったし、
さっきより深いところに行ってみようぜ」

こいつはどうしても一回行かないと気がすまないらしい。
いつも見てる夕暮れの川面が重く濁ってみえて嫌な予感がした。・・・

【河童的な何かとの遭遇2に続く(有料)】



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