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須崎 明・著『そうだったのか! CR修復』より―見て見ぬふりしたいマージンの褐線②

2017年に発刊しご好評いただいた須崎 明先生・著『そうだったのか! CR修復』を3月に増補改訂版として発刊します!
そこで特別に! 本書Ⅰ章「CR修復のトラブルシューティング」から「見て見ぬふりしたいマージンの褐線」をウェブ版として公開します.
前回はこちらから

Ⅲ 褐線の原因と対策

1.接着への配慮
マージンラインに褐線が生じる最も大きな問題として,エナメル質に対する接着がある.1970年代初めにエナメルボンディングの技術は確立された.に示すようにリン酸によるエッチング後,水洗し乾燥するとエナメル質表面に微細な凹凸ができる.

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この凹凸内にボンディング材を送り込み,光重合させると投錨効果によりエナメル質と接着する.このエナメル質の凹凸に送り込み,光硬化させた層をレジンタグという.
レジンタグは耐酸性が高い非切削のエナメル質より,切削されたエナメル質に有意に深く形成される.すなわち非切削のエナメル質被着面より切削エナメル質被着面のほうが接着に有利となる.また,この傾向はセルフエッチングタイプでより顕著に現れる*110).

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これらの結果からセルフエッチングタイプを用いる場合,エナメル質への接着力を高めるには,非切削面の場合はリン酸エッチングを用いるか,歯質を一層切削することが必要となる.したがって窩洞の外形線上にはべベル(エッチング斜面)を付与し,接着力を高めることが,褐線の予防につながる(11).

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2.CRの重合収縮への配慮

CRは重合収縮を伴う.これらを上手くコントロールすることで,マイクロリーケージやホワイトマージンを防止でき,褐線の予防につながる.詳細は「Ⅰ-3 なぜ? CR修復してから痛くなった!」で解説する.

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3.形態修正・研磨への配慮

13に示すように最近のCRは,筆でも充塡しやすいように圧接すると薄く伸びるものが多い.これにより充塡操作が容易となり歯質と移行的に充塡しやすくなった.

しかしながら,逆に窩洞に対してオーバーフィリングする可能性も高まる.すなわちオーバーフィリングした部位は非切削エナメル質面であるため接着力は低いということになる.

したがってカーバイドバーによりCRが窩洞内に充塡されるように形態修正し,シリコーンポイント(ダイヤモンド粒子入り)で確実に研磨することが褐線の予防につながる.

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4.咬合力への配慮

14にCR充塡5年後の24歳女性の口腔内を示す.上顎左右中切歯マージン部に褐線が認められる.

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に再研磨後の同部位を示す.上顎左右中切歯ともに再研磨により褐線は消失したものの,同じ術者が同じタイミングでCR充塡したのにもかかわらず,なぜの褐線のほうが顕著に現れたのであろうか?

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咬合診査の結果,上顎右側中切歯にはフレミタス(動揺までは至らないが,わずかな振動があり早期接触または咬合干渉がみられるもの)が認められた.

このように持続的に歯にかかる力のストレスが接着面の引張応力となり,褐線の発生につながったのではないかと考えられる.そこで今回は上顎右側中切歯に対して再研磨と同時に咬合調整を行った.

Ⅳ Let's try!―褐線の予防に配慮したCR修復の実際

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復習:マージンの褐線はこのように対処しよう!
1:咬合関係に配慮しながら外形線を設定する.
2:感染歯質除去後,外形線上にべベルを付与する.
3:確実に接着処理をする.
4:CR充塡時には重合収縮に配慮する.
5:オーバーフィリングのないように形態修正,研磨する.

参考文献
*1
 Kanemura N,Sano H,Tagami J:Tensile bond strength to and SEM evaluation of ground and intact enamel surfaces.J Dent,27:523―530,1999.

関連リンク
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